野菜の効用、アンチエイジングやがんのリスク低下〜野菜を食べようメタボ撲滅シンポ

2010年8月31日(火)、東京都ヤクルトホールで、社団法人日本栄養士会主催の「野菜を食べよう―メタボ撲滅―シンポジウム2010」が開催された。国民の健康づくり運動である「健康日本21」では野菜の摂取量の目標を一日350gとしているが、2007年の中間報告では267gと達成できていないのが実状。野菜の摂取量を増やすことは、国民の健康的な生活に必要不可欠である。8月31日は「ヤサイの日」であることから、「野菜たっぷり350(サンゴーマル)運動」の宣言も行われた。

野菜による生活習慣病予防とアンチエイジング
京都府立医科大学消化器内科学教授 吉川敏一

カロリス、アンチエイジングや長寿に貢献

見た目の年齢が実年齢よりも若い人が増加傾向にある。多くの人々が健康であることだけでなく、美しく、若々しくあることにも興味を持ち始めていて、そのための努力をしているからであろう。

しかし、いま鏡に映る自分が、実年齢よりも若いと感じていたとしても、実際はもっと若々しい姿が本来の自分の姿ではないのかと、一度考えてみてほしいと吉川氏はいう。アンチエイジング研究でよく知られていることであるが、私たちは摂取カロリーを通常の食事の30%抑えるだけでもアンチエイジング効果を得ることができるという。

人間と同じ霊長類であるサルに、通常の食事(満腹と感じる食事)から30%ほど減らし、いつもの70%程度の食事(カロリス)を摂取させる実験を20年行ったところ、カロリスをしなかったサルは38頭中14頭が20年後に死去したのに対し、カロリスを行ったサルは38頭中5頭しか死ななかったという。

またガンや糖尿病といった疾病にかかるサルもカロリスを実施したサルには極端に少なく、顔の表情、背筋、毛艶、などの見た目にも大きな違いが発現した。つまり食事制限をしていたサルは、しなかったサルにくらべ若々しいままでいられたという。

人間での実験は難しいためなされていないが、同じことがいえるだろうと吉川氏。いま実年齢よりも若いと感じる自分であっても、カロリスをしていないのであればもっと若々しい姿が本来の自分の姿ではないのかと吉川氏はいう。

見た目の若々しさ、元気を図る尺度

見た目の若々しさは、単に美しいとか、得である、といった問題だけでなく、健康状態を現している、健康状態に直結しているという考えが広まりつつあることを指摘した。つまり、見た目に若い人がやっぱり元気な人であるという事実がある。

肥満状態になり始めた人、あるいは肥満になってしまったので減量を試みているのに痩せない人は、病気のリスクが大幅に上がってしまっていると認識したほうがよいと吉川氏は指摘する。その段階で検診や検査を受け、病気の芽を摘めば、大事に至らなくて済む可能性が高くなるという。

肥満状態を日常生活で支障がないからと放っておいて、次第に体調が悪くなり、結果、体重が落ち始めたらもう手遅れといっても過言ではないと吉川氏。この段階で見た目は相当老け込み、病気もかなり進行していると考えられるという。

野菜の摂食、低カロリーで満腹感が得られる

最近の研究結果では、消化器系のガン(胃ガン、大腸ガン、食道ガン、肝臓ガン、すい臓ガンなど)になるリスクは肥満状態の人のほうが、平均的な体重の人よりも2倍のリスクがあることが報告されている。

つまりアンチエイジングで重要なことは、一言でいえば見た目だけでなく、内臓までもが肥満にならないことだといえる。ガンや動脈硬化、糖尿病といった加齢に伴いリスクが増える疾病(年齢関連疾患)は、共通の基盤病態に脂質異常と肥満があるからである。そして肥満にならない食事というのが野菜を多く摂取する食事ということになる。

食事の量を70%に抑えようといっても、なかなかそれは実行できない。しかしそこで野菜は重要な役割を果たす。

野菜を大量に摂取しなければいけない理由には2つあるが、まずそのひとつは野菜そのもののカロリーが低く、食事のかさが増えて満腹感が得やすいという点である。そして食物繊維、ビタミン、カリウム、カルシウムなどのファイトケミカル(抗酸化物質)や次々と発見される機能成分が豊富に含まれているという点も重要である。

アメリカでは、「一日に5皿以上の野菜(350g)と200gの果物を食べよう」運動

アンチエイジング医学の観点からしても野菜を大量に摂取することで、食事の摂取制限が自然にでき、ファイトケミカルがしっかり摂取でき、年齢的に年を重ねても生物学的には若さと健康を保つことができる「アンチエイジング」が実践できるということは明白であり、この考えをもっと普及させていきたいと吉川氏は述べる。

アメリカでもすでに「5a day」運動が広まっている。これは「一日に5皿以上の野菜(350g)と200gの果物を食べよう」をスローガンとする運動である。また2003年にWHOが発表した「生活習慣とガンの関連」でも、ガンのリスクを下げる要因として可能性が高いものに「野菜・果物」を入れている。

中でも、「おそらく確実に低下される」と評価された食品が、「食物繊維(大腸)」「非でんぷん質野菜(口腔、咽頭、胃)」「ネギ類(胃)」「にんにく(大腸)」「果物(口腔、咽頭、胃、大腸、肺)」「牛乳(大腸)」「カロテノイド(口腔、咽頭、肺)」「ビタミンC(大腸)」「運動(乳房、子宮内膜)」であり、野菜に含まれる抗酸化物質や食品機能がガンに効果的であることがほぼ確実に証明されてきている。

適度な運動と「腹八分」程度の食事で肥満を予防

しかし野菜を食べるだけでは十分とはいえない。世界ガン研究基金が2007年に発表した「ガンを確実に低下させる」と評価されたのが運動である。 運動により、大腸ガンのリスクを低下も報告されているが、適度な運動と「腹八分」程度の食事で肥満を予防することは、生活習慣病やガン、糖尿病の予防になるだけでなく、見た目にも若返り効果があり寿命が延長するという事実を多くの人に理解してもらいたいとまとめた。



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