福島原発事故による放射能性物質飛散
食品・人体への影響〜メディアと情報交換

2011年3月22日(火)、芝パークホテルで、メディアとの情報交換会「東北地方太平洋沖地震と風評被害の防止に向けて」が開催された。福島原発事故による放射能性物質飛散で 原発エリア付近の農産物の出荷が制限され、風評被害が懸念される中、急遽開催となった。

放射能性物質と食品の安全について
秋田大学名誉教授 滝沢行雄

放射線降下物の影響、30キロ圏が目安

広島・長崎への原爆投下、ビキニ環礁の核実験、大気圏での核実験、原子力発電所の事故、これらによる放射性物質落下物は人類に恐怖を与えるものだが、実体はいまだ明らかにされていないと滝沢はいう。

例えば、英国西南部カンバーラン州ウインズケール(現セラフィールド)原子力開発工場周辺では白血病・リンパ浮腫発生率が非常に高いことが指摘されているが、放射能性物質との因果関係は否定されている。

世界を震撼させた史上最悪のチェルノブイリ原発事故の際、周辺住民1000人の被ばく量を分析したところ、発電所周辺3〜7キロ圏内の住民の被ばく線量は54レム、25〜30キロ圏内だと4,5レム、平均線量(被ばく量)3,5であった。
今回の福島原発事故では、20〜30キロ圏内の住民に非難勧告を出したが、放射線降下物の影響は30キロ圏が一つの目安となっていると滝沢氏。

日本の食品中の放射能制限、ヨーロッパの規制値より厳しく設定

チェルノブイリ事故で関係者が学んだ教訓は、30キロを目安とする避難は有効であること、降雨・降雪による放射能沈着は最も長期的に影響を与える、放射能は半減期があり、一般的に3年後には無視できる程度の量に減少していく、など。

チェルノブイリの場合、汚染の主役は半減期が8日と短い放射性ヨウ素131であった。長期で問題視されたのが、半減期が30年の放射性セシウム137だが、これがなければ事故による影響は1年を待たずに終息しただろう、と滝沢氏はいう。

現在の日本における食品中の放射能制限の基準は、1986年に当時の厚生省がEC(現EU)の基準を参考に暫定として定めたもの。

ヨーロッパでは、ミルクや肉等乳製品や精肉を中心に基準値を設定しているが、日本では野菜までも明確に設定している。EC(EU)でも国ごとで規制値にバラつきがあり、例えばフィンランドではミルクのヨウ素131の規制値は2000Bq/kgだが、EC全体(ヨーロッパ共同体)では500Bq/Kgとなっている。

日本の場合、野菜類の暫定規制値は放射性ヨウ素は2000Bq/Kg、放射性セシウムは500Bq/Kgで、欧米諸国と比較しても非常に厳しい数値となっていると滝沢氏。

50mSv/年以下であれば問題ナシ

ふだん、人や食品は大地や宇宙からの放射線で少なからず被ばくしている。被ばくした食品を摂った場合、300Bq/kg(国内の飲料水、牛乳等の暫定規制値)の放射性ヨウ素131が検出された飲食物を1キロ摂取した場合の放射線量は0,007ミリシーベルト、500Bq/Kg(国内の野菜、穀類等の暫定規制値)の放射性セシウムが検出された飲食物を100g摂取した場合の放射線量は0,0007ミリシーベルトとなる。

人の場合、東京からニューヨークへ旅行した場合、片道で0,1ミリシーベルト放射線被ばくする。胃のX線集団検診を一回受けると0,6ミリシーベルトの放射線量を被ばくする。CTスキャンでは1回で6,9ミリシーベルトだが、いずれも安心レベルといえる。注意レベルが100〜1,000ミリシーベルト/年であり、50ミリシーベルト/年以下であれば浴びても問題ない、と滝沢氏はまとめた。


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