がん治療の代替・補完療法 進歩とその可能性 〜JAFRA健康フォーラム座談会2011
2011年9月11日(日)、東京国際フォーラムで、NPO法人 日本食品機能研究会(JAFRA)主催の「健康フォーラム座談会」が開催された。「がん治療の代替・補完療法 進歩とその可能性」をテーマに、遠藤雄三氏(浜松医科大学第一病理)、帯津良一氏(帯津三敬病院名誉院長)、飯塚啓介氏(西新宿山手クリニック院長)、福田一典氏(銀座東京クリニック院長)の4名のパネリストが、統合医療における健康食品の役割など論じた。


患者中心の補完代替医療はがん治療に有効

冒頭、遠藤氏はがんについて次のように述べた。
がんは小指の先ほどの大きさの固形がんになるまでにおよそ20年近くかかる。 最近の研究で、がんに幹細胞があることが明らかになっている。自己複製能とがん形成能を有する細胞であるため、これががん再発の原因ではないか、と予測されている。

幹細胞周辺に円状、球状に広がる子供のがんは抗がん剤の効果が認められるものの、幹細胞そのものには効かない。がんが完治しないのにはこのやっかいな幹細胞の存在がある。

幹細胞は自己複製しながら生存し続ける。抗がん剤では感受性が高まり、抗がん剤への耐性がますます強くなることが考えられる。 幹細胞をインアクティブに保つためには免疫系の包囲と攻撃が重要。

抗がん剤を行わなくても、免疫療法でがんの発生から5年10年と生存する患者さんも多い。丸山ワクチンと類似した米ぬかアラビノキシランは非常に有効である。

10年前より統合医療が後退しているのではないか

また、帯津氏は統合医療について次のように述べた。
がん治療に関わって50年余りになるが、ホリスティック医学の概念を取り入れて30年になる。がん治療で大切なことは、患者さんを治療する「場」(=医療現場)の自然治癒力を高めることである。

戦略的に統合医療を行うことが重要で、がん治療に漢方やサプリメント、ホメオパシーを加えた方がいいが、近年、西洋医療サイドの医師が患者にそれらを併用しないよう指示するためか、10年前より統合医療が後退している感がある。西洋医学と東洋医学を同じ土俵に乗せること自体が間違い、東洋医学は一歩前進の医学であり、マイナスになることはない。

免疫を恒常的に賦活させることは、がん予防だけでなく治療にも大切。患者に抗がん剤が必要な場合は使うべきだが、がんを押さえ込みながら共存することで多くのメリットが得られる場合はそうした指導が必要であろう。

患者をサポートするのも医師の役目

福田氏は10年程前から、西洋医学に限界を感じ統合医療へ方向転換、栄養や副交感神経の活性化などを重視し、全身の免疫機能を高めるよう患者を指導しているという。統合医療の現況について次のように述べた。

日本は西洋医療と東洋医療を統合させ、戦略的にアプローチすることが世界的にもかなり遅れている。アメリカでは、患者が代替医療を治療に取り入れたいというと、基本的にサポートに回らなければ、裁判で訴えられることも少なくない。患者が必要とするものをサポートするのも医師の役目である。

ストレスの多い生活はがんリスクを高める

また、飯塚氏は、がんのリスクを遺伝子検査で解析しているが、ストレスの多い生活ではがんリスクが高まる。生活全般を改善すると遺伝子の状態が良くなり、がんリスクも軽減すると述べた。

固形がんになるまで10年〜20年かかるが、遺伝子レベルでは行きつ戻りつし、「動的平衡」状態にある。がんのステージ4でも、治療だけでなく予防を継続することが大切であるという。

ペットという最新の医療機器で、がん細胞がアクティブかインアクティブかを認識できるが、がん細胞と共存することは可能であると飯塚氏は考えているという。

動的平衡状態のがん細胞にはホリスティックなアプローチが重要

がん細胞を消失させようとすると、手術や抗がん剤が必要で、身体への負担も大きく、必ずしも良い影響ももたらすわけではない。幹細胞の知識も含めて、抗がん剤で治療できるがん細胞や症状は実際のところとても少ないという現実を、医師も患者も認識すべきだと4人がそれぞれ論じた。

また、米ぬかアラビノキシランにより免疫改善効果の症例は多く報告されているが、一番多いのは抗がん剤の副作用が軽減したこと、と4人の意見がそろった。
本来のがん治療とは、がんだけをターゲットにするのではなく、動的平衡の状態で変化しながら生き続ける細胞や遺伝子を、より良い状態で保ち続けるためのホリスティックなアプローチが重要であるとの見解が示された。


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