古くて新しい伝統健康素材「そば」「マスティック」 〜「健康博覧会2012」セミナー
2012年3月16日(金)、東京ビッグサイトで「健康博覧会2012」セミナーが行われた。この中から、三生医薬株式会社が新たな機能性原料として提供する「発芽そば醗酵エキス」と「マスティック」に関する講演を取り上げる。「発芽そば醗酵エキス」は生活習慣病予防に、「マスティック」は胃や口腔ケアに効果的といわれるが、それぞれのメカニズムについて解説が行われた。


発芽そば醗酵エキス、そばの芽に高い栄養価

セミナーでは同社の担当者が発芽そば醗酵エキスの有用性について以下のように解説した。
発芽したばかりのそばの新芽が健康食品として注目を集めている。そばよりもそばの芽のほうがはるかに栄養価が高く、よく知られるルチンはそばの約5倍も多く含まれている。

このそばの芽をさらに醗酵させより高純度のエキスを抽出したものが「発芽そば醗酵エキス」で、このエキスが花粉症・気管支ぜんそく・冷え性・下肢静脈流・不整脈・心筋梗塞・高血圧・肩こりなどさまざまな症状に効果を発揮していることが報告されている。

血管の弾力性を保ち、血液をサラサラに

スプラウト食品が豊富な機能性を有することはよく知られているが、その一環としてそばの芽を研究したところ、そばの芽にはそば以上に血管の弾力性を保ち、血液をサラサラにして血流を促進する働きがあることが発見され、さらにそれに醗酵技術を加えることで機能性が高まることが確認された。 これは信州大学大学院農学研究科教授の茅原紘氏と別府にある医療法人敬愛会中村病院の副院長である酒本貞昭氏による共同研究によって進められた。

発芽直後のそばの芽には、最も含有が多く有名なルチンのほかに、オリエンチン、イソオリエンチン、ビテキシンなどのフラボノイド化合物が多く含まれており、これらには血流を改善する効果があることが基礎実験で確認されている。

アレルギーの原因となるタンパク質を除去

これらの機能性に注目し臨床実験に着手するために醗酵させそのエキスを抽出することで機能成分が更に高まるだけでなく、そばアレルギーの原因となるタンパク質を除去することが可能となり、またエキスを粉末化することで摂取しやすいように開発。これを共同研究チームで現在も臨床実験に使っている。

その結果、発芽そば醗酵エキスには、末梢血管の血流を増加させる作用や、血管の硬化を和らげる作用などがあることが明らかとなり、がんや動脈硬化、脳卒中、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)などの循環器系疾患をはじめ、血流障害や血管障害が原因となる多くの病気へ効果を発揮している可能性がある。

腸内環境の整備や美白効果で期待

花粉症患者にも連続投与をしたところ、症状が緩和するケースが多く見られたことから、これもアレルギーという免疫系疾患が血流を促進することで改善することと関係しているのではないかという見方がされている。

発芽そば醗酵エキスの作用のメカニズムは完全に解明されていないが、秘められた大きな可能性がある。昔からそばは腸を良くする食品といわれているため、腸内環境と大きく関わる免疫疾患にも効果が期待できる。

最新の研究ではそばの芽には美白効果があることも明らかとなっている。そばの芽に含まれるシスーウンベル酸という成分には、メラニンの生成に関与するチロシナーゼという酵素の活性を抑制する働きがあることが認められ、メラニンの生成が抑制されればシミやそばかすも抑えられ、皮膚がん発症の低下も期待できる。

信州の長寿村ではそばを常食

そばの芽には抗酸化物質のルチンやビタミンEが豊富だが、これに末梢血管の血流を促進する効果が加わることで皮膚に酸素と栄養が行き渡り、美肌効果が期待できる。ほかにもアルツハイマー型認知症への効果が研究されている。

そばは昔から高血圧の妙薬として知られている。信州のある地方では長寿で有名な村があるが、そこではつなぎの小麦粉を使わない黒いそばを毎日のように食べていたという。日本食に注目が集まる今、そばやそばの芽、そして「発芽そば醗酵エキス」の機能性研究を続け、その成分で現代人の健康に寄与したい。

マスティック、ピロリ菌への作用で注目

マスティックとはギリシャ原産のハーブで、5000年も前から人々の胃の痛みを取る天然素材として親しまれてきた歴史のある植物である。これが現代になって胃潰瘍の原因とされるピロリ菌への効果があることが立証され、世界中から注目されている。

マスティックはギリシャでもヒオス島にのみ自生する灌木で、この樹木に傷をつけると、透明の樹液がしたたり、時間が経過するにつれて凝固し、やがて黄金色に変わる。この神秘的な作用と黄金色の小さな固まりの形から「マリアの涙」とも呼ばれ、ガムとして噛んだり、不調を感じる時に食べたりと、現在までその伝統が残っている。

マスティック樹液を使用したサプリメントや化粧品が製品化

かの有名なコロンブスもマスティックに魅了され、ヒオス島にも実際に訪れてマスティックを買い付けたりアフリカでの植樹を試みたりしたという文献が残っているが、不思議なことにヒオス島以外では木は育っても樹液が取れず、そのことからもマスティックの知名度は低く、神秘的なハーブとして扱われるようになっている。

1998年12月にイギリスの研究グループが、マスティックの樹脂には胃潰瘍の原因とされるヘリコバクター・ピロリを抑制する効果があると、世界的に有名な医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に発表したことで、ここ数年世界各国で注目され、マスティック樹液を使用した抗菌カプセル、サプリメント、化粧品、歯磨きなどさまざまな製品が商品化されはじめている。

樹脂状のマスティックを油状にすることに成功

マスティックは水に溶けにくい樹液であるため、味付けをしたガムに加工したり、顆粒に粉砕しカプセルに詰めたりする程度の加工しかできなかったが、これではマスティックが個体以外の方法で使用されることがなく、その機能性が十分に浸透するとはいえない点が課題であった。

そこで三生医薬ではマスティックの効果を十分に発揮させるために研究を重ね、樹脂状のマスティックを油状にすることに成功、ソフトカプセルで加工することを可能とし特許も取得した。これにより体内での吸収性は格段に上がり、マスティックを気軽に摂取することが可能になったという。この形状になったことで国内でのマスティックの普及につながることが期待される。



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