食品表示および食の安全・安心に関する政策のとりすすめ 〜消費者庁食品表示課
4月4日(水)、一般財団法人バイオインダストリー協会で、「食品表示および食の安全・安心に関する政策のとりすすめと課題について」と題するセミナーが開催された。昨年9月より消費者庁は「食品表示一元化委員会」を開催し、事業者だけでなく消費者や一般消費者団体の意見をヒアリングしながら、食品表示の一元化に向けて検討を重ねてきている。本セミナーでは「中間論点整理」として消費者庁から進捗状況が報告された。


昨年7月、消費者基本計画を改訂

食品表示の一元化に向けての検討について消費者庁担当者は次のように報告した。
現在、食品表示についてはJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)、食品衛生法(飲食に起因する衛生上の危害発生を防止すること)、健康増進法(栄養の改善その他の国民の健康の増進を図ること)等により、表示すべき事項が定められている。

しかし、表示が複雑であることや誤表示によるトラブル、悪質な表示の偽造問題が後を絶たないことから、昨年7月の消費者基本計画の改訂により、現行の食品表示制度の改善を行いながら、食品表示に関する一元的な法律については24年度中に法案を提出することが決定している。

食品表示をわかりにくくしている要因

このため、一元化に向けてまずは検討すべき課題を整理し、新しい表示制度の制定に向けた検討を行うため食品表示一元化検討会が昨年設置された。昨年の9月に第一回検討会が開催され、今年2月までの間、計6回の検討会が開催されている。検討会のメンバーは学識経験者、消費者関連団体、事業者団体で構成されている。

中間論点整理で明らかとなった「食品表示をわかりにくくしている要因」として大きく2つの問題が指摘されている。1つ目は「説明に用いる言葉が統一されていないことと、わかりやすく整理されていないこと」、2つ目は「文字が小さいこと」である。

表示に用いる用語が統一されていないことで混乱

1つ目は、例えば乾燥果実について、食品衛生法では生鮮食品と表示することになるが、JAS法では加工食品と表示することになっている。製造者と輸入者の定義も曖昧で、中国から輸入したうなぎの蒲焼きをB社が国内で小分け包装した場合、B社は食品衛生法では「製造者」になるが、JAS法では「輸入者」になる。

このように、表示に用いる用語が統一されていないことによる混乱、誤表記がとても多いことが明らかになった。また、用いられる言葉も消費者に馴染みのない中間食品や添加物までが記載されることで、実際に役立つ情報とはいえない、というのが現状である。

情報が多すぎ、必要な情報を見つけにくい

2つ目は、情報が多すぎて消費者が商品選択をするために必要な情報が見つけにくいということである。これについては、できるだけ多くの情報を記載して欲しいという消費者側の意見を反映した表示になっている。しかしその結果、文字が小さくなりすぎて、結果意味のない表示になってしまっているということであろう。

用語の難しさも、文字の小ささや情報量の多さも、消費者のニーズに応えるためであることには間違いないが、それが逆に混乱や複雑化を招いているというのが現状の食品表示ということで問題点は整理されている。

6回の食品表示一元化検討会では、新たな食品表示制度の目的をどのようなものにすべきか、ということが重点的に話し合われてきた。現段階でのとりまとめとしては以下の6点である。

1、消費者の権利である合理的な食品選択の確保のために「表示を適性にすることで、消費者の安全を確保し、消費者の自主的で合理的な商品選択が確保されるようにする。そのため事業者は、消費者が食品選択に必要な情報を開示し、誤認することがないよう適正に表示し、消費者の権利を確保すること」を目的とする。

2、食品の表示は食品の情報提供である。消費者が情報に基づく選択を行い、消費者が食品を安全に利用するための基礎を提供することで、高いレベルで消費者の健康と利害の保護を追求することを目的とする。

3、消費者が食品の品質、特性、リスクを十分に知った上で食品を選択することができるようにするため、事業者による食品の品質表示は、消費者にわかりやすく、不足がないようにし、消費者が豊かな消費生活を営むことができることを目的とする。

4、消費者が安全で安心できる消費生活を送れるよう、「食品の安全情報」「食品の選択」「健康増進に必要な食品情報の提供」について、消費者にわかりやすい食品表示を規定する新制度の実現を目的とする。

5、JAS法、食品衛生法、健康増進法の3法の趣旨を踏まえたうえで、最終的な目標としては「公衆衛生の向上を図る」ことにも重点を置く。

6、景品表示法も含め、現行の食品表示に関わる法制度を一本化し、目的もそれに見合ったものに改善する。これら6点が現状とりまとめられた一元化に向けた目的の整理であるという。

消費者に表示を読み解く力がなければ状況は改善されない

しかし、この内容については会場から異議を唱える声も上がった。一元化の目的について、消費者の権利を守ることにばかり重点が置かれているが、そもそも消費者に表示を読み解く力がなければ一元化したところで状況は改善されないのではないか、ということである。

これについて消費者庁としてもアドバイザーを育成することや、表示に用いる用語を統一することで消費者教育も同時に行いたいと応えたが、消費者教育という課題は一元化よりも難しい問題ではないかと会場からは指摘の声が後を絶たなかった。

消費者庁で意見を募集

また他に重要な論点として挙っていることは、「アレルギー表示の問題」であるという。対面販売や通販、外食では現在アレルギー表示が制度的に義務づけられていないが、これらにも表示をするべきであるという意見があった。またアルコール飲料は制度の対象となる「食品」に含まれていないが、新制度では含めるべきだという意見。

直接販売される弁当や総菜については、栄養成分のバラつきが多いため、一元化は難しいにしても、自主的なガイドラインなどで表示を推奨するべきだという意見。栄養表示やエネルギー表示についても、表示していく必要があるのではないかという意見があった。さまざまな意見や一般の消費者からの声を集めるため、消費者庁では24年3月5日から4月4日(水)までe-mail、FAX、封書にて意見を募集している。

消費者庁の今後の予定としては、意見募集と6回までの検討会のとりまとめを今月行い、近日中に7回〜9回の検討会を開催し、24年6月には10回目の報告会と最終のとりまとめを行うという流れである。



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