機能性食材の研究はここまで進んだ
〜AMI研究会シンポジウム

2012年11月29 日(木)、慶応大学三田キャンパスで、「AMI研究会シンポジウム〜機能性食材の研究はここまで進んだ」が開催された。シンポジウムでは、「ルテイン」「ケルセチン」「イソフラボン」のヒト試験の成果、衣食農で利用できる分析方法、農産物として安定供給する必要性などの発表が行われた。

ルテインの網膜、ドライアイへの効果及び野菜果物中のルテイン測定結果について
慶応大学医学部眼科学教室 坪田 一男

抗酸化作用の強い野菜やフルーツで活性酸素対策

老化や疾病の大きな要因の一つが活性酸素であることが明らかとなっている。この活性酸素の弊害に対抗するために抗酸化成分を積極的に摂ることが、アンチエイジングや疾病予防に重要な鍵であることが広く知られるようになっている。

活性酸素をコントロールするためには、極度のストレスを避ける、タバコなどの毒性の強いものを摂取しない、強い紫外線を浴びない、規則正しい生活をすることなどが重要である。とはいえ、活性酸素は呼吸をするだけでも発生する。そのため、抗酸化作用の強い野菜やフルーツを積極的に摂ることが最も効果的な活性酸素対策とされている。

加齢とともに起こりやすい加齢黄斑変性

抗酸化成分とは、野菜やフルーツの色素成分(カロチノイド)で、紫外線の弊害から守る役割をする。この抗酸化成分の中でも、坪田氏がとくに注目しているのがルテイン。ルテインはほとんどの植物に含まれているが、とくにほうれん草に多い。

ヒトの眼球(網膜の中心)にある黄斑部分(「見えるもの」を判断する役割)には多量のルテインが含まれている。しかし、ルテインは体内合成できないため、食物から経口摂取したルテインが私たちの黄斑部分を形成していると考えられている。坪田氏は眼科医でもあるため、このルテインを着目している。

加齢とともに起こりやすい眼病のひとつが加齢黄斑変性。これは眼球の色素の薄い欧米人の間でとくに問題とされてきた眼病で、アメリカでは65歳以上の4人に1人が罹患し、失明率が高いと恐れられている。近年、日本でもこの眼病患者が増加傾向にある。目のトラブルはQOL(生活の質)を著しく低下させるため、坪田氏らのチームも対処法を研究している。

野菜を多く摂ると加齢黄斑変性になりにくい

疫学的には野菜を多く摂っている人のほうが、加齢黄斑変性になりにくいというデータが存在するが、そのメカニズムは明らかになっていない。坪田氏らは、黄斑の成分であるルテインの量が加齢とともに減少することが、加齢性黄斑変性や他の加齢性眼病の要因になっているのではないかと推測している。

これまでは黄斑部分のルテインの量を測定することが困難であった。体内の成分を測定する主な方法は血液採取だが、ルテインは血中にも含まれている。黄斑部分のルテインの量を測定する方法はなかなか開発されなかったという。

血中のルテイン濃度は加齢でも減少しない

しかし、ルテインにブルーライトをブロックする作用があることが近年発見され、ブロック量からルテインの量が測定する方法が開発された。その結果、加齢とともに黄斑部分のルテインの含有量は減少していくというデータが得られた。また、血中のルテイン濃度が上昇すると黄斑部分のルテイン量も増加するが、血中のルテイン濃度が加齢で減少するということはなかったという。

従って、ルテインを黄斑部分に運ぶ役割のタンパク質やホルモンなどの媒体があり、この媒体が加齢とともに変化しているのではないかと坪田氏らは推測している。 いずれにせよ、年齢に関わらず血中のルテイン濃度が上昇すれば、黄斑部のルテイン量も増加することが明らかという裏付けが取れたという。

LEDライトから大量のブルーライトが放出

日本人の間でも増加している加齢性黄斑変性だが、とくに若年層の増加が問題になっている。加齢性黄斑変性の主な原因は活性酸素による攻撃、摂取したルテインを黄斑部へ運ぶ媒体の不活性などが予測されるが、若年性の黄斑変性の原因としては「野菜や果物などの抗酸化成分の摂取不足」と「ブルーライトの影響」が考えられると坪田氏。

最近話題のブルーライトは世界的な問題になっている。いま世界中でLEDライトの普及が急速に進められている。これはエネルギー削減にも大きく関わるため推進していくべきであろうが、一方で、このLEDライトからは大量のブルーライトが放出されている。ブルーライトは可視光線のなかでも波長が短い。つまり高エネルギーであるため、網膜に対する負担も高い。紫外線もブルーライトである。

ブルーライトが大量の活性酸素を発生

これらブルーライトが網膜の組織に入ると、大量の活性酸素を発生させ、組織を酸化させる。黄斑部分はブルーライトの光を吸収し(黄色には青色を吸収する作用がある)、組織の酸化を防ごうとする。いわばサングラスの役割を果たす。

それにも関わらず、野菜不足(ルテイン不足)や大量のブルーライトを日々浴びることで、若い人の網膜にも問題が生じているのではないかと坪田氏はいう。

ブルーライトでメラトニンの生産時間が狂う

さらに、ブルーライトは網膜内で大量の活性酸素を発生し、網膜を傷つけ黄斑変性を引き起こすだけではない。もう一つの重要な問題がある。網膜はサーカディアンリズム(概日リズム)の調整の役割も果たすため、網膜が傷つくと体内リズムも狂うという。

日中に適度なブルーライトを浴びることで、私たちの体内では夜メラトニンが作られ、メラトニンが睡眠を誘発する。しかし、遅い時間になってもブルーライトを浴び続けると、メラトニンの生産時間が狂うだけでなく、メラトニンの生産量も減少していくと坪田氏。

睡眠障害やうつ病の発症も

つまり、遅い時間にブルーライトを浴びるとメラトニンの生産に異常が生じ、徐々に睡眠障害、うつ病、精神疾患などが発生するという。とくにパソコンやスマートフォン、タブレットなどの普及が明らかに眼病の増加の原因となっている。夜は電子機器の使用を控える、あるいはブルーライト対策用のアイウェアを着用するなどの対策が必要と坪田氏は指摘する。

いずれにせよ、ルテインを日々意識的に摂ると黄斑変性の予防や改善効果があることがわかっている。今後はルテインを豊富に含む植物の開発や黄斑部分や血中ルテイン濃度をより正確に測定することでさまざまな病気を予測できるようなバイオマーカーの開発などにも取り組みたいという。

ケルセチン、イソフラボンの生活習慣病予防機能の科学的エビデンス強化と高含有農作物の作出について
吉川 敏一 AMI理事長 京都府立医科大学学長

ケルセチンやイソフラボン、4種類の方法で機能性を確認

日本の食卓になじみの深いタマネギと大豆。これらに含まれるフラボノイドであるケルセチンとイソフラボンに注目が集まっている。吉川氏は「ケルセチン、イソフラボンの生活習慣病予防機能の科学的エビデンス強化と高含有農作物の作出プロジェクト」のリーダーでもある。これら食材の機能性は確かだが、そのエビデンスを確立し、高品質の作物を安定的に作ることが必要と吉川氏。

ケルセチンもイソフラボンも、「ヒト疫学調査」「ヒト介入試験」「動物実験」「細胞試験」の4種類の方法で機能性の確認を行っているという。

イソフラボン、骨粗鬆症や更年期障害に有用

タマネギに多く含まれるケルセチンにはアルツハイマー型認知症、眼疾患(ドライアイ、黄斑変性)、脂質代謝(メタボリックシンドローム)、心血管疾患などの効果があることがすでに細胞試験、動物実験で確認されている。ヒト介入試験とヒト疫学調査については検討中であると吉川氏。

大豆に多く含まれるイソフラボンには骨粗鬆症、口腔疾患(ドライマウス)、眼疾患(ドライアイ、黄斑変性)、更年期障害、脂質代謝(メタボリックシンドローム)などに効果があることが先の4種類すべての方法で確認されているという。

これらはいずれも生活習慣病や加齢に伴う疾患であり、こうした機能性の高い食材の摂取により疾患の軽減を目指している。先の4つのレベルでの機能性研究を行うことで、実用化に直結した効果を実証することが可能になるという。

平成25年度までに研究をすべて完了

これらの研究は平成25年度までに全て完了させることが計画されている。現在国内の医学・農学系の大学を中心に10機関で共同研究を行っている。また、高付加価値の農産物を安定的に供給できるように、品種や栽培条件を確立させる研究を農学系の4機関で行っている。

さらに、同じく医学・農学系の大学ではこれらの研究結果を信頼性の高い分析方法でデータベース化することにも力を入れており、衣食農で共同利用できる分析方法とデータベースの構築の実現を目指していると吉川氏。

こうした共同研究は23年からスタートしたばかりで、まだ発展途上だが、予定通り25年中には完了させ、機能性食品の有効活用による健康寿命の伸張、医療費の大幅削減に貢献したいと報告した。


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