機能性表示など、健康食品の今後の課題
〜「第30回健康食品フォーラム」

2013年10月23日(水)、東京都・瀬尾ホールで、財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会主催の「第30回健康食品フォーラム」が開催された。300人の参加者で会場は満席、当日は10年間の総括と今後の健康食品の展望について4つの講演が行われた。この中から、消費者庁長官の阿南久氏の「健康食品に関する動きと課題」と、厚生労働省医薬食品局の西村佳也氏の「健康食品の安全性確保について」を取り上げる。


今年6月、規制改革実施計画で健康食品の機能性制度検討

健康食品の市場規模は拡大を続け、中でもトクホ商品は平成3年に制度化し、今年8月には1,077件の商品が誕生している。しかし、登録申請手続きの煩雑さ、更新性でないことなど、当初より多くの問題が指摘されている。

今年6月、閣議決定された規制改革実施計画に基づき、トクホ表示の新たなあり方や一般の健康食品の機能性表示制度についての検討がされている、と阿南氏は解説。

健康食品の新たな表示制度とは、トクホ商品のように国の個別審査を必要とせず、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考に、企業の責任と科学的根拠のもと、機能性表示ができるような流れで動いているという。

新表示制度、あらためて取り締まりを強化

消費者庁はこれまでトクホ商品の表示許可の作業を行ってきた。また、並行して健康食品の「表示の取り締まり」を重要な業務としてきた。新たな表示制度が施行されれば、これまで以上に取り締まりを強化していく可能性もあると阿南氏。

同庁では、特にインターネットでの健康食品等の虚偽・誇大表示の監視を重点的に行い、法令違反が見つかった場合は、事業者に適正な表示の変更を求めるだけでなく、商品を取り扱うショッピングモールの運営者にも注意喚起や協力要請を行っているという。

健康食品に関する相談、「送りつけ商法」で急増

また、近年では「送りつけ商法」など悪質な事業者の行政処分も後が断たない。健康食品の健康被害については減少傾向にあるが、完全にはなくならず、摂取した健康食品と健康被害の因果関係が否定できない場合は、厚労省や食品安全委員会と連携し、問題があれば販売禁止等の措置も行っているという。

消費者のトラブル相談の受け皿としてPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)がある。相談件数は全体的には減少傾向にあるが、それでも年間80万件を超え、決して低いわけではないと阿南氏。

健康食品の相談件数は平成20年度の15,868件(全相談の1.7%)以降減少傾向にあったが、平成24年度に一気に27,606件(全体の3.2%)に増えている。これは「送りつけ商法」の急増によるものという。

近年、「送りつけ商法」もより巧妙になっている。以前は着払いが多かったが、最近では通常の小包に振込伝票を入れ、支払が行われないと執拗に請求してくるというものが増えているという。

「送りつけ商法」の被害者は60〜70歳代が圧倒的に多い。 

この世代は「健康維持や医療介護のための支出」を最も優先的に行うため、他の世代に比べ「簡単に支払う」、「セールストークを聞く」といったことが多く、悪質な事業者もそうした弱みにつけ込んでいるという。

日本独自の新表示制度をつくりあげる

現在、新表示制度が検討されているが、米国の良い部分は見習うものの、消費者庁のこれまでの取り組みや現状の問題点をしっかり把握したうえで、日本独自のものを創ることが大事と阿南氏。

表示制度の改正は、全ての国民が「本当に健康な食生活とは何か?」を今一度考える良いきっかけにもなる。「食育」を推進し、日本独自の、本当に国民や事業者の役に立つ表示制度を確立させていきたいとした。

健康食品の機能性表示の緩和が優先項目に

また、西村 佳也氏(厚生労働省医薬食品局食品安全部 基準審査課新開発食品保健対策室)は「健康食品の安全性確保について」と題して講演。

今年1月、内閣府消費者委員会により「健康食品の表示等のあり方」に関する建議が提出された。規制改革会議では「一般健康食品の機能性表示の緩和」が健康・医療の優先事項に位置付けられ、健康食品とそれを取り巻く環境はいま非常に注目されているとした。

高齢化社会を迎え、国民の健康への関心は高まる一方で、健康食品市場は約2兆円となり、多くの国民がなんらかの形で健康食品を利用している。しかし健康的な生活は、バランスの良い適量の食事、適度な運動と休養が絶対的な基盤となると西村氏。

企業の責任において機能性を表示

現在、好調な経済の追い風を受け、規制改革会議が活発に行われている。特定保健用食品や栄養機能食品以外の健康食品など保健機能を有する成分を含む加工食品及び農林水産物の機能性表示容認の検討が進められているという。

具体的には、国ではなく民間企業が自らその科学的根拠を評価し、企業の責任において機能性を表示できるものとし、一定のルールのもと、安全性の確保を考えた運用を念頭に検討がなされているという。

ただ、どんなに優れた健康食品であれ、利用目的、方法、摂取量、医薬品との組み合わせを十分に配慮しなければ、その効果を期待することは難しいと西村氏。新たな制度の構築にあたっても、消費者の安全性の確保を第一に関係官庁と協力し、安全対策の強化に努めたいとした。


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