腸内フローラと難病・自己免疫疾患
〜第23回腸内フローラシンポジウム

2014年10月31日(金)、ヤクルトホールで、「第23回腸内フローラシンポジウム」が開催。腸内フローラに関する最新の調査研究成果が世界各国の研究者によって発表された。この中から、大阪大学大学院医学系研究科免疫制御学の竹田潔教授による研究発表「腸内フローラと炎症性腸疾患」を取り上げる。


炎症性の腸疾患が急増

クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性の腸疾患の患者が急激に増えている。これは日本だけでなく、中国や韓国などアジア諸国に共通して見られる現象の1つであるという。一方、欧米では罹患率に大きな変化は見られないという。

なぜ、炎症性腸疾患が引き起こされるのか。
これまでは、その病態解析においてリンパ球を中心とした獲得免疫系が中心に行われてきた。しかし、20世紀末になり獲得免疫系とともに免疫を担う自然免疫系の活性に注目が集まり、自然免疫系の異常でも炎症性腸疾患が発症することが明らかになってきた。

病態の解明は極めて困難

炎症性腸疾患の発症原理は非常に複雑である。腸内環境を大きく左右する自然免疫や獲得免疫だけでなく、私たちの遺伝的な免疫系の異常とも関連している。腸内環境や腸内の微生物の変化が複雑に絡み合い、病態の解明が極めて困難とされている。

ここ数年、腸内フローラ(=腸内細菌叢)の解析が盛んになり、腸内細菌が腸管免疫系の発達に深く関与していること、炎症性腸疾患者は腸内フローラに特殊な変化が起こっていることなどが明らかになってきているという。

Th1/Th17と呼ばれる反応が亢進状態に

腸内フローラの中でも自然免疫系の活性制御機構が破綻している場合、炎症性腸疾患が起こりやすいかどうかなどの解析をおこなってきた。

マウスの研究によると、自然免疫系の負の活性制御機構が破綻し、恒常的に活性した状態であると、腸管に局在する自然免疫担当の細胞がTLCと呼ばれるレセプターを介し、腸内細菌を認識、過剰なTh1/Th17と呼ばれる反応を誘導し、腸管の慢性炎症が発生することが確認されたという。

つまりクローン病や潰瘍性大腸炎のマウスにおいては、Th1/Th17と呼ばれる反応が亢進状態にあるということである。

またヒトの場合を確認するため、大阪大学免疫学フロンティア研究センターや大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学などと共同研究をしたところ、ヒトの腸内でもマウスと同じようなメカニズムの存在が確認されたという。

腸管粘膜、自然免疫細胞が存在

さらに、常に食事の栄養成分やさまざまな腸内細菌にさらされている腸管の粘膜には、他のリンパ組織には存在しない特有の自然免疫細胞が存在することも明らかになってきた。

例えば、大腸の上皮は胃や小腸の上皮に比べて組織層が分厚くなっている。この層はさらにアウターミューカスレイヤーとインナーミューカスレイヤーと呼ばれる層に分類される。

胃や小腸では酸などの分泌物により内容物が分化され、組織層にまで細菌が侵入することはほとんどないが、大腸ではこの分化のメカニズムが解明されていない部分が多くあるという。

lypd8の減少で炎症性腸疾患が亢進

中でも、lypd8(抗体)の減少で炎症性腸疾患が亢進することが分かっている。lypd8は大腸上皮への腸内細菌を抑制し、腸管の恒常性を維持する役割があるのではないか、ということが考えられるという。

炎症性腸疾患の病態の解明において、今後は獲得免疫系、自然免疫系に加え大腸上皮の解析が必要ではないかとした。


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