プラズマ乳酸菌に、ウイルス感染防御やアンチエイジング機能〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017

2017年4月19〜21日、東京ビッグサイトにて国際医薬品開発展〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017が開催された。この中から、キリン鰍フ講演「ウイルス感染防御機能を高めるプラズマ乳酸菌」を取り上げる。


40歳頃から免疫力が低下

日本でウイルス感染のリスクが高まっている。

ウイルス感染といえば、冬から春の季節性のものばかりが注意喚起される。しかし、実は新型インフルエンザやプール熱、デング熱など夏や秋に流行するものも増えている。

アジア全体では鳥インフルエンザやその他新型の感染症が次々に発生し、日本人もリスクにさらされている。

常に免疫を高い状態で保てるのが理想的だが、とくに高齢者は年間を通して免疫の管理が必要となる。

人は40歳頃から免疫力が低下する。70歳になると免疫力は乳児と同じレベルにまで低下することがわかっている。

風邪をひきやすくなり、それが元で肺炎や気管支炎など重篤な症状に陥る場合もある。あらゆる世代で免疫を高めるニーズが求められている。

乳酸菌の多彩な機能

免疫を高める食材といえば、多くの人が乳酸菌を思い浮かべる。乳酸菌は世界でもっとも研究されている健康素材で、腸内環境を改善し、便秘や腸炎、アレルギーといった炎症系疾患に強いことが知られている。

また近年では、コレステロールや中性脂肪のコントロールや脳機能の改善など、さまざまな機能性が報告されている。

乳酸菌は菌であり、細菌と同種であるため、細菌の感染による免疫活性があることが解明されている。

私たちの体が細菌に感染するとマクロファージが活性し、細菌の増殖を防ぐシステム(=免疫)がある。

しかしウイルスに感染した場合、人の防御機能は細菌に感染した時とは違うシステムで働くことがわかってきた。

乳酸菌、ウイルス感染を防御

ウイルスに感染した場合、pDC(プラズマサイド樹状細胞)という細胞がウイルスを認識し、NK細胞やキラー細胞に指令を送り、それによりウイルス感染を防御する。

これまでの乳酸菌はナチュラルキラー細胞など一部の免疫細胞しか活性させることができず、細菌に対する免疫強化のエビデンスは豊富だが、ウイルスについては実はわかっていなかった。

むしろ乳酸菌ではpDCを活性できないという論文さえあった。

そこで研究チームはpDCを活性する乳酸菌がないか探し続けた。そして、ようやくJCM5805という理化学研究所に保管されている乳酸菌にたどり着いたという。

プラズマ乳酸菌、感染症の発症率を低下

この乳酸菌は「pDCを活性させる乳酸菌」ということで「プラズマ乳酸菌」と命名。他の乳酸菌はpDCにふりかけてもpDCの周辺を取り囲むようにひっついてしまうだけであった。

しかし、プラズマ乳酸菌をpDCに振りかけると、pDCの細胞内に侵食し、さらにpDCが活性し樹状細胞(ギザギザの細胞)となり、他の免疫細胞にも指令を与え、速やかにウイルスを攻撃する体制に入るメカニズムを持つことがわかった。

これはpDCの中にTLR9というレセプターがあり、プラズマ乳酸菌がこのレセプターによってpDCの中で溶け、活性させるというメカニズムがあるからだ。

実際、これらのメカニズムや動物試験での有効性が確認され、幾つかのヒト試験も行われている。

プラズマ乳酸菌を摂取しているグループとそうでないプラセボ群とに分け、ロタウイルスとインフルエンザの罹患率を観察した。

その結果、プラズマ乳酸菌摂取群のほうが明らかにこれらの感染症に罹る率が低下し、また罹ったとしても重篤化せずに治癒したことが分かった。

プラズマ乳酸菌、アンチエイジング機能も

さらに驚くべきは、アンチエイジング効果である。マウス試験で、プラズマ乳酸菌摂取マウス群とプラセボ群に分け、生後5週から82週まで飼育した(人間の平均寿命に相当する)。

その結果、82週を越えると生存率が60%程度になったプラセボ群に対し、プラズマ乳酸菌投与群は生存率が93%と高く、寿命延長効果がみられた。

また、運動量や見た目においても老化抑制が見られ、とくに見た目については顕著に違うことが確認された。

最終的に両方のマウスを解剖し、体内でどのような違いが見られるかを調べたところ、プラズマ乳酸菌摂取群のマウスは真皮が厚く保たれ(肌のアンチエイジング作用)、ほとんどの筋肉に著しい減少が見られず維持されていたことが明らかとなった。

これらによりプラズマ乳酸菌にはウイルス感染の予防効果だけでなく、アンチエイジングという新たな機能性も期待されることが分かった。

100度の加熱処理でも9ヶ月間機能性を維持

ちなみに上記の全ての動物試験、ヒト試験はプラズマ乳酸菌の「死菌」で行われている。つまり死菌と生菌でプラズマ乳酸菌の効果や機能に差はなく、100度の加熱処理でもpH3.9の酸性状態でも9ヶ月間機能性を維持することがわかっているという。

しかも無味無臭で添加量が少なくて良いため、あらゆる商品に添加しやすいというメリットがある。もちろん安全性も十分に確認されている。

現在、キリングループである小岩井乳業から生菌のプラズマ乳酸菌の飲料やヨーグルトが発売されている。

また、キリンからは飲料水が、協和発酵バイオからサプリメントが販売されているが、今後、さらに商品ラインナップを増やしたいと話した。



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