健康食品のプロモーションに使えるエビデンス構築のあり方〜UMBメディアセミナー

2017年6月27日(火)、アーバンネット神田カンファレンスで、「健康食品のプロモーションに使えるエビデンス構築のあり方〜各社青汁商品のメタボローム解析を例に」(主催:UBMメディア)が開催された。この中から、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ鰍フレクチャーを取り上げる。


薬効評価などの最先端の解析手法

メタボロームとは動物や植物、食品などに含まれる分子化合物の総体のこと。

例えばアミノ酸、リン酸化合物、核酸、ペプチドなどもメタボロームの一つで、これら代謝物質の種類や濃度などを網羅的に分析・解析する手法がメタボロミクスである。

これまでは主に医薬品の品質管理、ガンなどの疾病の診断マーカー、薬効評価などの分野で用いられてきた、最先端の解析手法であった。

そのため大手企業のみが利用でき、手が届かないものというイメージがあった。

しかし近年は中小企業にも注目、実際に手が届く技術になっている。

機能性表示食品の商品開発でも活躍

ヒューマンメタボロームテクノロジーズ社はメタボローム解析では13年の実績がある。

当初は医薬品メーカーや大学、大手食品メーカーからの解析依頼がほとんどだったが、近年、中小企業の食品メーカーからの依頼が増えているという。

メタボロミクスは、実際にどんなところで役立っているのか。

医薬品の開発はもちろんだが、健康食品や機能性表示食品においても作用機序の解析や解明は必須で、そのためにメタボロミクスが使われている。

医薬品と違い、食品で健康を実現・証明するには「健康な人」にどのような変化が起こるかを確認する必要がある。

病人や医薬品と違いドラスティックな変化が見込めない、わずかな食品による作用や動態変化はメタボローム解析が最も得意とする。

メタボローム解析で食品による予防が可能に

メタボローム解析では試験管やマウス、また便による解析も可能である。

「腸内細菌」「腸内フローラ」「デブ菌」「痩せ菌」といったキーワードもメタボロミクス解析により、本当に有効かどうかが確認できる。

また、「何が起こっているのか」「どこにどのような変化が生じているのか」ということも具体的に数値化できる。

腸内細菌などをターゲットにした商品開発に、メタボロミクス解析は必須といっても過言ではない。

近年、うつ病やアルツハイマー型認知症などの精神疾患のメカニズムやそれに対する早期発見予防のニーズも高まっているが、メタボロミクス解析を行うことで食品による予防が不可能ではないことへの期待が寄せられている。

食品の解析、昨対比30〜40%増

こうした背景から、食品関連企業からの解析依頼が、昨対比で30〜40%増えている。

トクホや機能性表示食品だけでなく、健康食品業界全体で、独自素材を訴求することや確かなエビデンスを構築することが求められている。

メタボローム解析の活用例として、山形県のブランド米「つや姫」がある。

日本の美味しい米の代表は「コシヒカリ」だが、比較して「つや姫」の成分構成はどうなのか、メタボローム解析を行った。

その結果、「旨味」である「グルタミン酸」がコシヒカリよりも多く含まれていることが分かり、その解析結果がパッケージに表示され、差別化に役立っているという。

また、山形のブランド豚である「金華豚」についても、スーパーで販売すると輸入豚よりやや高い。

しかし、「アンセリン」や「カルノシン」という疲労回復に役立つ物質が一般的な豚肉より多く含まれることが分かり、値段に納得して購入するファンが増えているという。

このようにメタボローム解析を行い、その結果を公表することは企業PRにもなる。

16製品の青汁をメタボローム解析

メタボローム解析市場は日本だけでなく国外でも成長しており、2021年までに現状より14.6%の市場の拡大が予測されている。

ちなみに、この解析技術を用い、国内で販売されている青汁16製品の解析を行った。

青汁市場は堅調で、すでに1,000億円市場に到達している。また、食品メーカー以外にも青汁に参画する企業が増えている。

16製品を検証した結果、「ケール群」と「大麦若葉」「その他」と大きく3つのカテゴリーに分類できた。

現状では青汁そのものが機能性関与成分として認められているわけではないが、青汁の摂取でクエン酸回路が活性することがわかった。

また、原料はシンプルだが成分としてはポリフェノール類などおよそ202成分が検出された。

競合製品との差別化に

こうした解析で、青汁の原材料の選定基準を定めやすくなった。原料となるケールや大麦若葉の産地、採取する時期などをより適切なものに確定できた。

また、他の原料との効果的な組み合わせ、構成成分の数値評価、加工プロセスの最適化、商品一つ一つの機能性評価などが可能となった。

こうしたことで商品開発を行えば、競合製品との差別化になり、美味しさと機能性を追求したオリジナルの製品を作ることができる。

青汁に限らず、あらゆる食品の原料や素材をメタボローム解析で多角的に評価することで、商品や原料・素材の強みと特徴がより明確になる。また、数値化もできる。

腸内細菌を標的とした研究開発のアプローチや時間栄養学を取り入れた商品設計、エビデンス補強といったことの対応も可能となる。

青汁の解析は約1ヶ月でコストは150万円ほど。大手だけではなく中小企業こそメタボローム解析を取り入れ、より効果的な商品開発やプロモーションを行って欲しいとまとめた。


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