玄米のγオリザノール、脳機能や糖尿病改善で期待〜内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 公開シンポジウム

2017年11月30日(木)、有楽町朝日ホールにて「内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 公開シンポジウム」が開催された。この中から、益崎 裕章氏(琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病・内科学講座)の講演「玄米機能成分による脳機能改善と糖尿病予防〜エピゲノム・コントローラーとしてのγオリザノールの可能性」を取り上げる。


玄米は天然の完全食

天然の完全食と呼ばれている玄米。外皮の米ぬかには、ビタミンやミネラル、食物繊維などの機能性成分が豊富に含まれ、食後の血糖を抑制する低GI食品としても注目を集めている。

また、近年は米ぬかに腸内フローラのバランスを整えるプレバイオティクスとしての働きがあることも明らかにされている。

玄米由来の代表的な機能性成分の一つにγオリザノールがあるが、この成分にも「腸内フローラや脂質異常症の改善」や「糖尿病の予防改善」といった作用が報告されている。

健康寿命を維持するには日々の食事が大事だが、人は動物性脂肪への依存が生じやすい。

特に肥満者は動物性脂肪食の弊害が分かっていても、摂食を止める(あるいは適量にする)のが難しい。

動物性脂肪、麻薬以上の中毒性

こうした動物性脂肪への依存は、肥満だけでなく糖尿病など生活習慣病の最大の原因となる。

ここ数年の研究から、動物性脂肪食への依存は「麻薬以上に麻薬的なアディクション(中毒)を起こす」ことが報告されている。

しかし、2012年に益崎氏らの研究により、動物性脂肪食に対する中毒状態に陥っている人(主に肥満者)でも、主食を玄米に代えるだけで、ジャンクフードや高脂肪食への依存をリセットができることがヒト臨床試験で報告されている。

マウスの実験で、動物性脂肪は脳内において部位特異性を持ち炎症・小胞体ストレス・ゲノム修飾を引き起こすことが明らかになっている。

また、視床下部においては炎症や小胞体ストレスを、報酬系ではエピゲノム変化を起こし、この両面から動物性脂肪に対する依存を形成していることが分かっている。

γオリザノール、脳機能や糖尿病改善で期待

動物性脂肪食で肥満にしたモデルマウスを用いた実験では、γオリザノールが、脳内報酬系に直接働き、DNAメチル基転移酵素活性を抑制するエピゲノム・コントローラーとして機能することで、「満足できない依存脳」を「満足できる脳」に変えることも明らかになっている。

また、マウス実験で、経口摂取されたγオリザノールが脳の視床下部において炎症や小胞体ストレスを緩和し、報酬系ではエピゲノム変化を正常化させるというメカニズムが解明されている。

これにより、γオリザノールを機能性成分として活用する脳機能改善や糖尿病改善食品の開発に加速がかかり、これが世界に誇れる日本の食文化や農水産業の海外展開の起爆剤になることが期待されると益崎氏。

アルコール依存のリセットも

これまでは「動物性脂肪食(高脂肪食)」への依存のリセットにばかりに注目が集まっていた。

依存症の中でもアルコール依存やタバコ依存などについて、脳内で起こっている動態は動物性脂肪食の依存のメカニズムとほぼ同じで、現在、マウス試験で、アルコール依存についてγオリザノールがどのように働くか試験が行われているという。

この試験によれば、アルコール依存症モデルのマウスにγオリザノール入りの飼料を与えることで、アルコール依存がリセットされるという。

さらに、アルコールとγオリザノールを同時に与えると、アルコール依存が起こらないことも明らかになり、今後、ヒトにおいても同様の結果が得られるか注目が集まっているという。

γオリザノール、生活習慣病改善で期待

認知機能については、認知症モデルマウスに4ヶ月γオリザノール入りの飼料を与え、認知機能の改善が見られたことから、ヒト試験についても検討されている。

現在、γオリザノール入りの甘酒の商品化が完了しており、常温保存タイプなどのバリエーション展開が行われているが、今後はこうした商品を使用した大規模な介入臨床試験が行われる予定があるという。

γオリザノールによるさまざまな依存症へのアプローチ、認知症へのアプローチ、生活習慣病全般への有効性など、今後も研究と商品開発に注目が集まるとした。


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