黒米、糖尿病や認知症などの予防で期待〜内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 公開シンポジウム

2017年11月30日(木)、有楽町朝日ホールにて「内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 公開シンポジウム」が開催された。この中から、大坪 研一氏(新潟薬科大学応用生命科学科)の講演「糖尿病及び認知症の複合予防効果が期待される米飯および米加工食品開発の試み」を取り上げる。


糖尿病、認知症のリスク高める

日本の医療費はすでに年間40兆円を超えている。超高齢化社会にあたり、食による予防など健康への取り組みの重要性が叫ばれている。

特に糖尿病と認知症対策は重要な課題となっている。糖尿病患者は世界で4億人を超え、日本でも317万人以上と報告されている。

また認知症は世界で4680万人、日本でも462万人を超えるとされ、今後ますます増加することが予測されている。

近年の研究では、糖尿病が認知症のリスクを高めることや、高インスリン状態は糖尿病の原因だけでなく、アミロイドβの産生を促進することも明らかになっている。

つまり認知症の原因になることも分かってきており、糖尿病と認知症を複合で予防する必要性についての研究が盛んに行われている、と大坪氏。

黒米、ポリフェノール豊富で抗酸化作用が高い

大坪氏らの研究グループは農林水産物の中から、抗酸化の高い食品を抽出し、今回は黒米に注目し研究を行った。

抗酸化力の高い食品としては、鮭、アボカド、ホーリーバジル、パプリカ、バジル、生姜などに話題が集まっているが、日本人の主食である米の中でも抗酸化力の高い「黒米」を取り上げたという。

ちなみに、米ぬかの抽出物による研究では、すでにアミロイドβの抑制が報告されている。

黒米はポリフェノールが豊富で、抗酸化作用が非常に高いことがわかっている。またアミロペクチン長鎖型という特殊な形態を持つ超硬質米にも注目したという。

超硬質米は、通常食に用いられることはなく、主に米粉などに利用されるが、栄養価は高い。

しかもそのように硬質な米でも高圧処理すると組織に変化が起こり、食べやすくなると大坪氏。

そこで越後製菓株式会社との共同研究で、1000〜4000気圧の高圧処理機を開発し、黒米や超硬質米をこの機械で高圧処理することを試みた。

その結果、いずれの米も抗酸化力とギャバの数値が高まり、米の粘りや硬さも適度なものに自由に調節できることに成功したという。

食後血糖値の上昇抑制やインスリンの分泌抑制

実際、高圧処理した2つの米を混ぜて高齢マウスの飼料にし、12週間飼育した試験を行った。

その結果、プラセボの飼料を食べていた高齢マウスと比較して、高圧処理加工米を食べた高齢マウスは食後血糖値が低くなったり、血中のアミロイドβが優位に低いことが明らかになった。

この加工米には食物繊維であるレジスタントーチも豊富に含まれていることから、抗酸化、ギャバ、レジスタントーチのいずれもが複合的にマウスの血糖値上昇抑制や、アミロイドβの抑制に働きかけたのではないか、と大坪氏。

また、ヒト試験も行い、高圧処理した黒米を配合した玄米ご飯のパック(レンジで加熱するだけで食べられるようにしたもの)を14日間食べてもらった。

その結果、コシヒカリ白米と比較して、食後血糖値の上昇抑制やインスリンの分泌抑制が見られたという。来年の1月からは12週間のヒト長期試験も計画しているという。


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