マンゴー、抗アレルギー効果で花粉症緩和に期待〜第36回「健康博覧会」セミナー

2018年1月31日(水)〜2月2日(金)の3日間、東京ビッグサイトにて第36回「健康博覧会」が開催された。同展示会セミナーより、菅原卓也氏(愛媛大学大学院農学研究科)の講演「マンゴーの抗アレルギー効果」を取り上げる。


マンゴーにアレルギー抑制作用

菅原氏はオキナワ宮古市場と共同で「マンゴーの抗アレルギー効果」について研究を行っている。

培養細胞試験と動物(マウス)試験、そしてヒト介入試験についても現在研究中で結果は3月末から4月頃に報告できる予定という。

セミナーでは、宮古島で重要な産業となっているマンゴーのアレルギー抑制作用の可能性について最新の知見を報告した。

花粉症などのI型アレルギーで、主に粘膜のトラブルといった症状が出るメカニズムには2つの原因がある。

まずは花粉などの外的刺激が体内のB細胞を刺激することでIgE抗体が増えてしまう。

IgE抗体が顆粒球を刺激し「脱顆粒」を起こすことでヒスタミン等が放出され、これによって粘膜などに症状が生じる。

アレルギーを緩和する2つの方法

つまり、アレルギー症状を緩和させるには2つの方法がある。

1つ目が「脱顆粒を引き起こす原因となる血中のIgE抗体量を抑制させる」こと。2つ目が「脱顆粒そのものを抑制する」こと。

結論からいうと、マンゴーにはIgE産生抑制効果と脱顆粒抑制効果の2つが認められている。

さまざまな植物の抗アレルギー作用について研究を重ねているが、2つの方法で抗アレルギーにアプローチできる素材は珍しい、と菅原氏はいう。

では、マンゴーのIgE産生抑制作用とはどのようなものか。

通常、植物、特にフルーツの抗アレルギー作用を研究すると、果皮か果皮に近い部分にキーとなる物質が存在していることが多い。

そのためマンゴーにおいても、マンゴーの果肉だけでなく果皮の方も研究を行ったという。

IgE産生を抑制

マンゴーは大きく2種類あり、成熟しても果皮は緑がかったままのキーツマンゴーとオレンジ色に熟していくアップルマンゴー(アーウィンシュマンゴー)がある。

いずれも果皮の部分と果肉の部分をエタノールで抽出した「4種類のマンゴーエタノール抽出物」を作成し、それぞれ培養細胞(U266細胞=IgEを産生するヒト細胞)に24時間培養し、培養液中に分泌されたIgE量を測定した。

すると4種類の抽出物のいずれにもIgE産生抑制効果が優位に見られ、特にアップルマンゴー果皮>キーツ果皮>キーツマンゴー果肉>アップルマンゴー果肉の順で抑制作用が高いことが分かった。

また、この結果を踏まえ、接触性皮膚炎のモデルマウスに16週間の経口投与をしたところ、生体内でもIgEレベルを抑制する作用が見られた。

これはマンゴー抽出物により細胞内でNF-k経路とJAK/STAT3経路の抑制が起こり、IgE産生を抑制したことによるものと推測されると菅原氏。

複数の成分により効果を発揮

では、マンゴー抽出物に含まれるどの成分がIgE産生を抑制したのか。

マンゴーに含まれる特徴的な成分にマンギフェリンというポリフェノールがあり、これが候補物質の1つとなっている。

マンギフェリンはサラシアなど他の植物にも含まれており、マンギフェリンの機能性としては既に抗炎症効果、糖尿病の合併症抑制作用、抗肥満作用などが報告されている。

抗アレルギーに関する知見はなく、マンギフェリンだけを抽出して調査した結果、確かにIgE産生抑制効果を示したが、マンゴー抽出物に比べるとその作用は弱い。

マンゴー抽出物にはマンギフェリン以外の活性成分が存在している、あるいは複数の成分によって効果を発揮している可能性が高い、と菅原氏。

丸ごと食べることで、アレルギーが緩和

一方、マンゴーの脱顆粒抑制効果についてはどうか。

これも同様に「4種類のマンゴーエタノール抽出物」で調査したが、IgE産生抑制効果がある果肉には、脱顆粒抑制効果は見られなかった。

しかしながら、果肉水溶性抽出物(いわゆるマンゴージュース)には脱顆粒抑制効果が見られた。

つまり、果肉と果皮のエタノール抽出物にはIgE抑制作用があり、マンゴージュースの方に顆粒球抑制作用があるという、極めて珍しい結論が得られた。

マンゴーを皮も含め丸ごと食べることで、2つの経路からアレルギー緩和効果が得られる可能性がある、と菅原氏。

現在、ヒト介入試験をマンゴーのサプリメントで行っているが、花粉の季節での研究結果に注目したいとした。


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