機能性表示食品制度の現状と課題
〜第5回日本黒酢研究会


2018年6月22日(金)、早稲田大学日本橋キャンパス大ホールにて「第5回日本黒酢研究会」が開催された。この中から、柿野 賢一氏(有限会社 健康栄養評価センター)の「機能性表示食品制度における中傷企業者から見たビジネス展開〜機能性表示食品制度の現状と課題」を取り上げる。


届出受理、1300品目超え

機能性表示食品制度が施行されてから約3年が経過しようとしている。

届出受理の品目はすでに1300品目を超えており、1991年からスタートの特定保健用食品(以下トクホ)商品が1081品目(2018年4月現在)であることと比較しても、新制度の評価や周知の高さがうかがえる。

トクホに関してはさまざまな問題の報道の影響もあり、どちらかというと減少傾向にある。とはいえ、機能性表示食品制度にもまだまだ課題があると柿野氏。

そもそも機能性表示食品制度がスタートしたのは、平成25年6月に安倍総理が「経済成長戦略」として打ち出したことが発端で、トクホとは違い、中小事企業にチャンスを与えることが最大の目的であった。

しかしながら現状、特に制度スタートから1〜2年は著名な大手企業ばかりが競って届出を行い、中小企業や農産物(生鮮食品)の海外展開を視野に入れた届出などは想像以上に増えなかった。

昨年頃から中小企業の届出受理が増えてはいるが、生鮮食品は増えていない。この背景には企業や地方自治体の制度に対する認知や情報格差がありそうだ。

外注まかせにしないことが大事

機能性表示食品制度は、トクホ制度で受理された実績やノウハウを持つ企業でも、最初は易しいものではなく、届出書類は複数回差し戻しされ、受理までに時間がかかる。

中小企業だと、その回数が増えるかというとそうでもなく、大企業でも中小企業でも等しく複雑で易しくはない制度である。
むしろ初期に受理された大企業のものであっても、後になって「根拠不十分」と撤回されるケースも見受けられる。

つまり、この制度を活用して届出を成功させるには、企業規模は関係なく、制度を熟知して制度にマッチした商品であるかどうかにかかっている。そのため、届出受理に必要なのは「企業の心構えと体制作り」である、と柿野氏。

そもそも届出が受理されて機能性表示が受理された場合、どのようなメリットがあるのか。

もちろん売り上げに反映される可能性は大きいが、それだけではない。最も大きな収穫は商品と社員、そして企業全体のレベルアップである、と柿野氏。

人が少ない企業ほど、届出に関する作業を外注する傾向にあるが、この場合、届出が受理されても、制度そのものの理解が足りないため、のちにパッケージや広告PRなどさまざまな場面でトラブルが起こりやすい。

企業のレベルアップにつながる

一方、届出に「不慣れ」というのは誰もが同じで、まずは「会社として一丸となって届出受理を目指そう」とまとまって動くことで、勉強会や表示制度、法律関連などあらゆることについて学ぶ機会ができる。

その上で商品が受理されると、その後商品も企業も社員もさらに成長することにつながる、と柿野氏。

すでに受理された企業の届出を参考に提出して差し戻されることもよくある。これは制度そのものが完成系のものではなく、消費者庁も常に制度そのもののレベルアップを図っているため、過去にOKしたから、という理由では通さないという背景もあるという。

また、原料メーカーからの資料をそのまま流用する、原料メーカーに作業を丸投げした場合も失敗しやすい。

時間がかかっても組織と社員、商品のレベルアップのために、一丸となって取り組むことに意味があり、それが遠回りなようで近道で、その結果としても得られるものが大きく、制度を真の意味で活用できることになる、と柿野氏。

地方自治体でバックアップ

ちなみに、届出責任者が一人になりその人ばかりに負荷がかかることで、体調を崩したり精神的に追い込まれた事例も報告されているので、やはり届出に向けた体制作りが非常に大切だ、と柿野氏。

中小企業にとっては容易ではない届出制度ではあるが、地方自治体によっては支援制度のバックアップを行っているケースもあるという。
例えば福岡県、静岡県、三重県、長野県、神奈川県などはバックアップ体制が充実している。

福岡県では、専門家による相談窓口や九州大学との成分調査などを用意しており、福岡県内企業による機能性表示食品の商品化を県としても目指している。

当然、支援が手厚い自治体からは複数の機能性表示食品が登場しているため、今後は自治体も制度を理解し、中小企業をバックアップすることで、現状伸び悩んでいる生鮮食品での受理が増え、産官学の連携品などの登場や、海外展開できる商品が増えることなどが期待できる、とした。


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