機能性表示食品の役割と期待〜薬業健康食品研究会「平成30年度シンポジウム」

2018年6月25日(月)、主婦会館プラザエフにて「薬業健康食品研究会 平成30年度シンポジウム」が開催された。この中から、森下 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科 教授)の講演「機能性表示食品の役割と期待〜健康寿命延伸に役立つものにするために」を取り上げる。


1人の高齢者を1人が支える時代に

2060年の日本人の平均寿命予測は男性が81歳、女性が91歳とされ、総人口に占める65歳以上の割合は40%を超えることが予測されている。

1人の高齢者を1人が支える時代は目の前に迫っている、と森下氏。

高齢化社会は先進国において共通の課題だが、日本の場合、そのスピードが世界一で、他の国に習うことができない。

しかも少子化が解消される目処が立っておらず、一人ひとりが自分の健康寿命を延伸することが現状でできる唯一の対策となる。

政府も医療費削減と新産業の創出の鍵は「健康寿命延伸=セルフメディケーション」と考えており、3年前にスタートした機能性表示食品制度は、まさにこの中核を担う制度である、と森下氏。

経済効果を高めるために幾つもの規制緩和がおこなわれているが、政府が最も力を入れているのが「機能性表示食品制度」といえる。

3年が経過し、トクホの商品数を突破

制度がスタートして3年、すでにトクホの商品数を突破し、事業者・消費者ともに認知度・活用度が高まっている。

この制度は、非常に透明度が高く、世界からも注目されており、韓国でも類似の制度のスタートが検討されている。また、米国でも注目されており、政府に質問などが寄せられているという。

この制度が他の規制緩和関連法案と大きく違う点は「事業者の責任において」、そして「届出制」という緩やかさと柔軟性を持つ点で、これが成功すれば、他の分野でも同じように「事業者の責任」や「届出制」といった緩やかな制度が採用できるのではないか、と期待されている。

業界団体に届出制度を支援

とはいえまだまだ課題もあり、完成系とはいえない。政府も機能性表示食品制度を随時ブラッシュアップさせながら展開している状態が続いている。

例えば、最新のガイドラインでは、届出から不備指摘を行うまでの日数を従来の90日以上から50日前後にするようにしている。

また消費者庁だけではマンパワーが足りないため、業界団体に届出制度支援を行ってもらうことなども盛り込んでいる。

生鮮食品の届出受理も増加

不備指摘までの日数が短縮できれば、事業者側は受理された後の販売計画も立てやすくなる。現時点では「日本抗加齢協会」と「日本健康・栄養食品協会」の2団体が支援制度に乗り出している。

また、事前に届出書類の不備がないかのチェックやレビュー作成のサポートなども行っているという(料金は別途)。

消費者庁に届けられる最初の届出資料のほとんどがケアレスミスによる不備で、これを業界団体が事前に点検してくれれば、出し戻しの回数や期間を短縮することが可能となる。

また、すでに届出が好評価された食品で同一性を失わない程度の変更が行われた食品(フレーバ違いなど)の届出の申請も簡便化されることも認められている。

つい先日バージョンアップしたガイドラインでは、新たに糖質「キシリトール、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖」が対象成分として認められ、糖類も「L-アラビノース、パラチノース、ラクチュロース」が認められた。

またここに来て生鮮食品の届出受理も増えており、すでに、もやし、みかん、精米、カンパチが受理されているが、最近認められたりんごが秋には発売になる。

軽病者の取り扱いを検討

現在、事業者から寄せられている課題が「軽病者」、特にアレルギー、尿酸、認知機能については「軽病者」の取り扱い範囲を拡大したい、というものである。

これについては消費者庁が日本健康・栄養食品協会に委託し、平成31年3月末までに軽病者データの取り扱いの追加について検討するよう調査を行っているという。

他にも制度の改善などに関する要望事項については随時業界団体などから寄せられるものについて対応し、制度のブラッシュアップを図っている。

万博開催で経済効果が狙える

この制度がより良い形で活用され人々の健康維持増進に利用されれば、高齢化の問題を抱える他の国にとっても良い手本となる。また、日本の健康食品が輸出産業としてさらに拡大する可能性が十分にあることも期待できる、と森下氏。

2025年に開催予定の万博に大阪が名乗りを上げており、今年の11月に開催地が決定するが、そのプロモーションでも「多様で心身ともに健康な生き方」「持続可能な社会・経済システム」をスローガンに掲げている。

万博開催が決定すれば、オリンピックよりも経済効果が狙える。政府、事業者、消費者が一体となって機能性表示食品制度を育て、健康維持増進と新産業の創設に力を合わせて取り組むことが理想であり、この制度がその先駆けになり得る、とまとめた。


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