医療機関での健康食品など物販の注意点
〜ウェルネスフードジャパン


2018年7月25日〜27日、東京ビッグサイトにて「ウェルネスフードジャパン」が開催された。同展示会セミナーより、成 眞海氏(弁護士)の講演「医療機関が物販を行うときの注意点と健康食品に関する広告表現のコツ」を取り上げる。 


医業の範囲内であれば物販は可

「医療機関でサプリメントなどの物販ができるか」といった問い合わせが増えているという。

医療法において、医療機関(病院、診療所、助産院、歯科医院など)は規模に関わらず、原則的に「非営利性」が求められている。そのため、ルールを守った物販を行う必要がある、と成氏。

「非営利性」とは、具体的には「開設主体が法人でないこと」「剰余金を分配しないこと」「医療法人は収益事業を経営しない」ということである。

つまり、医療機関が物販を行うについては、営利性があるかどうか極めて微妙なラインとなる。

しかし規制緩和が進んだことから、「患者のため、療養の向上を目的としているものである限り可能」と明確化され、「医業の範囲内であれば物販は行える」というのが国のスタンスになっているという。

病院で、インターネット通販は不可

こうした流れを踏まえると、個人のクリニックや自由診療であっても、物販は「患者のためであり、療養の向上を目的としている」のであれば許可されるが「健康に良いから」という理由で「不特定多数の人」へ提供するのはNGということになる。

また20床以上の「病院」となると、販売は「敷地内で行う」「入院、もしくは通院する患者及びその家族を対象に」と、厳しく制約されている。

つまり病院の場合、インターネット等を使った通販は確実に不可ということになっている。

もし、ネット通販を行いたいのであれば別法人を設立し、医療とは関係なく行う必要がある。

こうしたことから、コンタクトレンズは医療器具であるが、不特定多数の人に販売するものなので医療機関での取り扱いはない。しかし、歯ブラシを歯科医院で販売するのは「患者の療養」が明確なため可能となる。

病院の売店でさまざまなものを売るのも「入院、通院患者及びその家族」を明らかに対象としているため可能となる。

病院、治療の場ではなく予防や健康維持の場に

平成26年度の規制改革会議「健康・医療ワーキング・グループ」によると、「予防=医療そのもの」という考えを浸透させていく必要があるとされ、今後は「可能となる物販範囲」が拡大される可能性が十分にある。

病院を治療の機関ではなく、予防や健康維持に活用できる場に変えようという流れがますます強くなるということだ。

こうした流れを踏まえ、医療機関である無しにかかわらず、健康食品に関する広告表現のコツを理解しておく必要がある。まずは、薬機法と景表法を押さえておくと、表示に関する指摘のリスクを回避することができる、と成氏。

打ち消し表示、消費者庁は認めない流れに

薬機法については「どう書けばOKか」という考えをする人が多いが、「予防も含め体の状態が良くなるのはすべてNG」と理解してほしい、と成氏。「健康維持、栄養補給」など体の状態が変わらないものだけがOKということ。体験談などもこれでほぼ使えなくなったといえる。

また景表法については優良誤認と有利誤認(二重価格表示、今なら5000円と打ち出しながら、いつもこの価格であるなど)について理解が必要となる。

先日、マクドナルドに指摘が入ったが、これらの指摘を受けると行政処分や課徴金、刑事罰などデメリットが多く、中小企業の場合は立ち直れないほどのダメージになることもある。

今、表示の問題で注目されているのが「打ち消し表示」について。※印の注釈をつけることで景表法指摘のリスクを避けようとしている企業も多いが、消費者庁はこれをNGとしており、原則※印の注釈は使わない流れになってきている。

医療機関のウエブサイトに規制

消費者庁がいいたいのは、「打ち消し表示は使わないように」「打ち消し表示で不当表示が免責されることはない」ということ。

これはスマホの広告においてもチェックが行われはじめている。今年の6月から医療機関のウエブサイトにも規制が入るようになり、特に自由診療については「治療内容」「治療費用」「治療リスク」「治療副作用」を書くことが必須となった。

これまでは比較的放置されてきた医療機関の広告だが、医療機関だからなんでもOKということはあり得ない。医療に近い場所にいる人たちにもルールはより厳しくなってきている、と成氏。

しかしこれが業界と消費者あるいは患者を守ることにつながるので、しっかり理解した上で販売などを行ってほしいとした。


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