腸内細菌による体内発酵を意識した食品開発を〜健康博覧会2022セミナー

2022年2月8日〜10日、東京ビックサイトにて「第40回健康博覧会」が開催された。同展示会セミナーより、潟<^ジェンの講演「腸内細菌による体内発酵を意識したエビデンスベースの食品開発」を取り上げる。


「体内発酵」に着目すべき

腸内環境に関する研究データや知見、エビデンス、一般の人たちへの認知はここ数年広がり、市場も確立されている。

腸内環境改善をテーマに次世代の食品を開発するのであれば「体内発酵」にまで着目すべきであろう。

発酵食品、野菜、果物、プロバイオティクスやプレバイオティクスなど、腸に良いとされる食品はほぼ出揃っているが、その効果には「個人差」があることも知られている。腸内に存在する腸内細菌叢に個人差があるためだ。

口から入って小腸を通り大腸に送られた食品成分は、大腸内に多く存在する腸内細菌と結合する。この結合によって発酵が起こる。

さらに発酵によってさまざまな物質が作られる。この体内発酵によってどのような物質が作られるかはまさに腸内細菌の個人差により異なる。

しかし、体内発酵によって作られる代謝物質が体に大きな影響を与えることに間違いない。例えば、食物繊維や植物性ポリフェノールが体内代謝されると、短鎖脂肪酸やトリチメルアミンなどに代謝される。

大腸は「発酵タンク」

人間の大腸はまさに「発酵タンク」と呼べるもので、腸にはさまざまな菌が棲んでいる。

どのような物質が体内発酵によって作られているのかを知ることが、腸の研究の最先端となっている。

ちなみに微生物が人間にとって有益な有機物を生成すると発酵となるが、害を及ぼす有機物を生成する場合は腐敗となる。

体に健康効果をもたらす有益な代謝物質の一例として短鎖脂肪酸・SCFA・酢酸・プロピオン酸・酪酸などがある。

これらの代謝物質は血液に乗って全身に運ばれ、全身に良い効果を及ぼす。

短鎖脂肪酸はオリゴ糖を食べるとビフィズス菌などにより体内発酵して作られる。



短鎖脂肪酸が多いほど免疫力が高い

この短鎖脂肪酸は感染予防、腸管バリア機能向上、肥満抑制、持久力向上、アレルギー抑制、炎症抑制、などさまざまな有益な作用をもたらす。

コロナ禍で免疫力アップが多くの人々の関心となっているが、体内で短鎖脂肪酸が作られる量が多ければ多いほど免疫が高いと言い換えることができる。

体内でどれくらい発酵が起こっているかは「腸内細菌×食品=短鎖脂肪酸発現量」で検討することができる。

短鎖脂肪酸の量が多い人は、大腸内にビフィズス菌が多いことや発酵を起こす有用菌の餌となる水溶性食物繊維(根菜や海藻)の摂取が多い。

エビデンスに基づいた腸内環境改善食品

また、同じ水溶性食物繊維食品でも体内での発酵力(短鎖脂肪酸生産量)には当然ながら大きな違いがある。

短鎖脂肪酸に限らず、有益な代謝物質の生成量は個人差だけでなく、食品素材によっても異なる。この辺りの「差」をなるべくなくす食品を開発することが鍵になる。

特に、短鎖脂肪酸が多く作れる人、つまりレスポンダーの腸内環境を含む特徴を最先端の分析技術を使って分析・評価することが、効果の個人差をなくす食品開発の鍵になるのではないか。

メタジェンでは、「どのような細菌がどのくらいいるのか」をメタゲノム解析する手法と「どのような体内発酵代謝物質があり、それぞれがどれくらいの量あるのか」を知るメタボロール解析を構築。

さらにこれらから得られた情報を統合し解析する「バイオインフォマティクス」の3つで総合的に腸内環境を評価する「メタボロゲノミクス」という最先端技術を構築している。

こうした解析技術を使いエビデンスに基づいた腸内環境改善食品を作ることが可能な時代になっていることに注目してほしいとまとめた。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.