消費者庁における食品表示の取り組み
〜中央省庁を監視、消費者委員会も同時発足


2009年11月13日(金)、中央区立日本橋社会教育会館で、(財)東京顕微鏡院主催のセミナー「消費者庁における食品表示の取り組み」が開催された。講師には内閣府消費者庁 食品表示課 品質表示班担当の中村祥典氏が招かれた。


JAS法、食品衛生法、健康増進法の表示規制に関わる事務を一元化

消費者庁は2008年福田内閣時に、消費者行政を統一的・一元的に推進することを目的に計画立案、2009年9月1日に発足した。
これまで、食品衛生法、JAS法に基づく表示基準等は、厚労省・農水省が連携し、「食品の表示に関する共同会議」で審議していたが、同庁の設立で、JAS法、食品衛生法、健康増進法の表示規制に関わる事務が一元化された。

また、消費者委員会も同時に発足。消費者行政に係わる中央省庁を監視、問題点を厳しくチェックする第三者機関として、表示基準の策定に当たり意見の具申や特定保健用食品の安全性・効果の審査など行う。

食品表示、コーデックス国際規格で統一

食品表示の国際ルールについては、1962年に設立されたコーデックス(消費者の健康保護と公正な食品貿易の確保を目的に設立。2009年2月現在、181カ国とECが参加)規格が国際規格とされ、各国の表示制度はこれに準拠している。

日本の表示制度もコーデックスに基いており、不適正な食品表示に対する情報や告発があれば、地方の食品表示監視協議会が必要な措置を講じる。今後は消費者庁も、警察庁や農水省の業務が円滑に進むようサポートする。

「育った場所の期間」で表示内容が決まる

近年、食品の産地あるいは賞味期限の偽装問題などが多発しており、食品表示の方法については課題が多い。例えば生鮮食品の原産地の表示について、中国産「にんにく」を日本に輸入し日本で育てて販売した場合、原則として「育った場所の期間」で国産か外国産(輸入品)か表示が決まる。

これは社会的、科学的な見地からの判断ということだが、基準があいまい。
とくに水産物は移動するために問題が多い。漁獲した水域、養殖した地域などの記載では、場所の特定が困難な場合は水揚げ港名やそれが属する都道府県名を記載することになっているが、輸入品については漁獲を行なった船舶が属する国が原産国となる。

こうした不備を改善するため、2006年より、例えば「あじの開き」は日本で製造加工されていても、魚自体がロシアで水揚げされたものであれば、原材料名:まあじ(ロシア)と原料原産地を表示することが義務付けられるようになった。「沼津産 あじの開き」という表示は今や禁止事項だ。「あじの開き」(加工地:沼津、原料原産地:ロシア)と表示しなければいけない。

これまで、加工食品の原料原産地表示については20品目が義務付けられていたが、今年10月から、緑茶飲料やあげ落花生も追加となった。ただ、これら加工食品の原料原産地表示についても、レストランや直売など対象外になっているものも多い。

表示は「信頼」で成立、事業者や行政に問われる
責任

期限表示については、食品の情報を把握している製造業者等の表示義務者が科学的、合理的な根拠に基づいて期限を設定する、というガイドラインがあるが、近年の偽装問題を考えるとこれだけでは不十分といえそうだ。

製造年月日が期限表示に変更され、賞味期限か消費期限に、また保存方法とのセット表記の義務付けなど、表示水準は高くなっているが、表示についてはあくまで「信頼」で成り立つ。事業者には十分な責任が伴う、行政も監督責任が問われる。

セミナー後の質疑応答では、参加者に製造業者が多かったせいか、立入検査は地方の保健所と消費者庁が行なうのか、新しい商品スペックになった場合どこに問い合わせれば良いのか、など行政を気にする質問が目立った。また、消費者から寄せられる細かな質問に、どのように対応すれば良いかなどの質問もあった。

いずれにせよ発足したばかりの消費者庁、メディアを通してさらなる業務内容の発信が求められる。また、消費者も、「食」における自己責任を再認識するとともに、事業者や行政との三位一体で食文化や食のレベルを高めるための努力をする必要があろう。


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