「食」によるアンチエイジング、カロリー制限に抗酸化物質 〜生命科学シンポジウム「食と医科学、そして健康長寿」

2009年12月8日(火)、慶応義塾大学三田キャンパスで、慶応義塾・生命科学シンポジウム「食と医科学、そして健康長寿」が開催された。高齢化社会に向かい健康長寿への要望が高まるなか、健康増進や疾病予防を目的に「食」分野の研究が進展、医科学による最新の研究成果を報告した。


食事の摂取カロリー制限、アンチエイジングに

眼科が専門の坪田一男教授(慶応義塾大学医学部眼科学教室)は、「レーシック」手術で視力回復した患者が、若返りの傾向にあったことからアンチエイジングに興味を持つようになったという。

現在、エイジングのメカニズムは解明されつつあるが、最も効果的な科学的アプローチは、「カロリーリストリクション」と「酸化ストレス」の二つで、仮説の検証が進められている。どちらも「食」からのアプローチが鍵となるという。

「カロリーリストリクション」(別称、「カロリス」)とは、食事の摂取カロリーを制限すること。マウスやサルの動物実験で、タンパク質、脂質、炭水化物に加えて必須ビタミン、微量ミネラルなどの栄養分を確保しながら総摂取カロリーを通常の65%〜70%に押さえると、寿命が長く全体の印象も若々しいことが報告されているという。いわゆる「腹八分目」が、アンチエイジングにも良いということだ。

なぜ、「カロリス」がアンチエイジングにつながるのか。メカニズムとして、カロリーを十分に摂取している状態よりも、摂取制限状態のほうが遺伝子を守り細胞の寿命を伸ばそうとする作用=サーチュインと呼ばれる酵素が活性化することが考えられるという。

野菜・果物の抗酸化物質、アンチエイジングに関与

また、「酸化ストレス」もエイジングに関与している。野菜・果物にはビタミンA,C,Eに加え、ルテイン、ゼアキサンチン、アントシアニン、アスタキサンチンなどの抗酸化物質が含まれている。これらの積極的な摂取は、アンチエイジングにつながると考えられている。

赤ワインやぶどう、ピーナッツの皮に含まれる抗酸化物質、レスベラトールもアンチエイジングで最近注目が集まっている。カビを抑制する作用があることから、酸化抑制で老化防止にも役立つと考えられている。

水銀などの有害重金属、脳だけでなく水晶体にもかなり溜まる

これらの抗酸化物質に加え、オメガ3などの飽和脂肪酸や活性酸素を除去する水素水などの働きについても坪田氏は解説。また、水銀などの有害重金属は脳だけでなく水晶体にもかなり溜まることが分かったとし、抗酸化成分や飽和脂肪酸がそれらの排出に関与することを報告した。

坪田氏によると、アンチエイジングは「食、運動、ごきげん戦略(常に機嫌良く保つこと)」の3つのアプローチから成り立つという。これを日常生活に取り入れることで、自身も体脂肪やヘモグロビン値が良好になったという。

腸の健康維持、アンチエイジングに

また、日比紀文教授(慶応義塾大学医学部内科学教室)は、食と腸内細菌の関わりについて報告。人の腸には100兆匹以上の腸内細菌(常在菌)が生息するが、腸内フローラ(生態系)の乱れると全身の健康に大きく影響、腸内細菌のバランスを維持する為には「食」の質を改善することが重要とした。

腸内細菌は腸管の免疫組織とも密接に関わり、恒常性を保つ役割をする。腸内細菌と腸管の免疫組織のバランスが崩れると、腸に炎症をもたらすなど様々な腸疾患が起こることが報告されている。

腸には血管系や末梢神経系の50%以上が集中し、ホルモンの量も脳よりも多く、第二の脳とも呼ばれている。「食」の質を改善し、腸の健康を維持することが、全身のアンチエイジングにつながるという。


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