大豆イソフラボン、骨量減少を抑制(ラット実験)〜「第85回日本栄養・食糧学会関東支部会シンポジウム」

2010年3月14日(日)、社団法人日本栄養・食糧学会関東支部で、シンポジウム「生活習慣の改善〜栄養と運動の併用効果と指導」が開催された。正しい食生活や栄養摂取が健康に寄与することは十分知られているが、日常的な運動との併用で効果はさらに高まるのか、最新の研究報告が行なわれた。


運動とイソフラボン併用マウス、高い骨密度維持

(独)国立健康・栄養研究所の石見佳子氏は大豆イソフラボンと運動の併用効果について報告した。
運動や栄養は、骨の代謝に影響を及ぼす。運動は骨粗鬆症の予防に有効といえるが、加齢や性ホルモンの欠乏に伴い、反応性が低下することも近年明らかになっている。

実際、閉経後の女性の骨密度を調べると、適度な運動で骨密度強化につながる反応は見られず、強度な運動でようやく微量の変化が認められる程度という。

石見氏ら研究チームは、運動に大豆イソフラボンの摂取を加えると、中高年の男女や閉経後の女性の骨の健康維持に効果的ではないかという仮説を立て実験を行なった。ちなみに、中高年の骨粗鬆症患者の20%は男性といわれる。

実験では骨粗鬆症のモデルマウスを用い、中程度の運動のみ行なうマウス群と、大豆イソフラボンの摂取と中程度の走運動の併用マウス群を比較した。
結果、週6回1日30分の運動のみ6週間続けたマウス群は、大腿骨の骨面積が増大するとともに、海綿骨の減少が抑制され、運動のみでも骨の健康にプラスの効果があることが判明した。

一方、イソフラボン併用群マウスは、大腿骨骨端部の海綿骨の減少が著しく抑制、高い骨密度を維持していることが判った。

さらに併用群のマウスはエストロゲン欠乏による体脂肪の蓄積に対しても抑制効果を示すことが判ったという。

閉経の女性、食生活と週3回程度の中強度の運動で骨量減少と体脂肪の蓄積を抑制

さらに閉経後5年以内の女性136名を対象に、イソフラボン摂取群、運動群(週3回1日45分)、併用群、とくに何もしない対象群の4群に無作為に分けて1年間の試験を実施した。

結果、対照群は大腿骨付近の骨密度の減少が認められた。また、大豆イソフラボン摂取群は僅かながら大腿骨の海綿骨の一部に骨量減少の抑制を示した。
さらに運動との併用群ではかなりの抑制がみられ、体脂肪の蓄積についてもマウス同様抑制効果を示したという。

これらの実験から、閉経の女性においては、食生活と週3回程度の中強度の運動の組み合わせにより、効率よく骨量減少と体脂肪の蓄積を抑えることができる可能性が示されたと石見氏は報告。
またこの併用効果はおなじく中高年男性においても認められたという。


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