「食生活改善とがん予防」
〜第10回「21世紀の食と健康フォーラム」


2010年4月21日(水)東京国際フォーラムにて第10回となる「21世紀の食と健康フォーラム」が開催された。「がんの現状と予防」(国立がんセンター名誉総長 垣添忠生)の他、がん罹患の現状や予防法などの最新情報が報告され、会場の来場者が熱心に耳を傾けた。


「ガンになるための10ケ条」とは

日本では、男性2人に1人、女性3人に1人がガンを発症。年間で30万人以上がガンで死亡する。世界では、年間に1100万人がガンに罹患し、790万人がガン死する。ガンは遺伝子異常が関連し、たばこや食事、感染症がその主要原因と垣添氏。

ガンは生活習慣と密接に関わり、高齢者ほど罹患率も高くなる。日本は急速に高齢化が進んでいるため、ガン罹患やガン死が増えていると考えられる。

ガンにならない方法よりも、ガンになるための10か条というものがあると垣添氏はいう。 発案は東北大学名誉教授の久道茂氏。以下のことを挙げた。

@毎日好きなものを食べる(バランスは考えない)
A毎日同じものを食べる
Bおいしいものは好きなだけ食べ、脂肪も控えめにしない
Cお酒は飲めるならどこまでも
Dたばこは毎日20本以上キチンと深く吸う
E緑黄色野菜は少なめに
F塩辛いものは多めにし、熱いものは熱いうちに食べる
Gできるだけ焦げた部分を食べる
H運動はすくなめに、体は不潔にしておく
Iガン検診は一切受けないで、症状がひどくなってから医者へ行く

上記のような生活習慣がガンを招くという。
そのため、「たばこを吸わない」「アルコールを控えめに」「運動して肥満を防ぐ」「塩分を控えて野菜と果物を多く食べる」など日々心がけることが大切という。

またガン検診が重要で、初期ガンの場合、とくに乳がん、子宮頸癌、大腸がんなどは、完治する可能性が高いと垣添氏。

とはいえ、子宮頸癌の検診受診率は、アメリカでは82%を超えるが、日本では23%と低く、国家レベルでの検診サポートが必要という。

また、近年増えている大腸ガンや肺ガンは年に1回のペースで検診を、子宮頸癌や乳がんも最低でも2年に一回は受診すべきだとした。子宮頸癌はワクチン接種でも予防できるという。

大橋靖雄氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻生物統計学教授)は、TV、マスコミで氾濫する健康情報の信憑性について講演。

何かを食べ、あるいは飲んで「痩せた」「効いた」という情報の多くは、個人の体験などに基づくもので、根拠が極めて曖昧と大橋氏。

思い込み、その食品以外の影響、たまたま良くなった、などの要因も加味する必要がある。とくにガンについては、進行過程や個人差で、信憑性の高いデータをとることが困難という。

例えば「脂肪摂取が多いと心筋梗塞になりやすい」といわれる。しかし、フランスではチーズを大量摂取しているにもかかわらず、心筋梗塞の患者が少ない。

これをフレンチパラドックスと呼ぶが、これが「一緒に摂取している赤ワインに含まれるポリフェノールやフラボノイドという抗酸化物質が効果的なのではないか」という話につながり、日本でも赤ワインブームが起こった。

しかしながら、フラボノイドは日本酒などにも多く含まれ、フラボノイドやポリフェノールだけが心筋梗塞を抑制しているとは言えない。 近年の研究では、赤ワインというより、バランスのとれたフランス料理が心筋梗塞の発症率を下げているのではないか、という見方が一般的になってきているという。

また、「アルコールを摂取している女性はガンになりやすい」という情報にしても、アルコール以外に、タバコや塩辛いものの摂取など他の要因も加味する必要があり、アルコールのみが原因とは断定できないという。

生活習慣とガン予防に関する現時点でのコンセンサスは、身体活動と野菜・果物の摂取にしかすぎない、欧米のデータが中心で、アジア人や日本人でのエビデンスは不十分と大橋氏は指摘する。 現時点でエビデンスに裏付けられたガン予防方法として以下を挙げる。

@禁煙。他人のタバコの煙も避ける
A節度のある飲酒
B偏りのない食事。塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にし、野菜か果物は不足しないように。そして加工肉、赤肉などはとり過ぎずない
C身体活動を行なう
D太りすぎず痩せすぎず、正常な体重を維持する
E肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合はその治療をする


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