今見直されるべき「日本の伝統食材」
〜食品機能と注目すべき「強壮食品素材」


2010年5月19日(水)、東京ビックサイトで、第15回国際食品素材/添加物展・会議、第8フードエキスポが開催された。その一環で開催されたセッションプログラムで、玉川大学准教授/法政大学大学院特任研究員 水産学博士 八並一寿氏が「今見直されるべき「日本の伝統食材」の食品機能と注目すべき「強壮食品素材」」と題してトークセッションを行なった。


異常気象、食の需要と供給が不均衡に

食の問題は山積しているが、食の問題を軽減するためにも、私たちは歴史から学び、リスクマネジメントをする必要があると八並氏は提言する。例えば、昨年爆発的に流行した新型インフルエンザは記憶に新しいが、歴史をひもとくと新型のインフルエンザそのものが10?30年周期で爆発的な災害を引き起こしていることがわかっている。

今年は30年に一度の異常気象と報道されているが、このレベルの異常気象は過去にももちろんあり、その年は食の需要と供給の不均衡を含めた多くの食の問題が発生していることがわかっている。

最近ではアイスランドの火山噴火がヨーロッパだけでなく世界中に様々な弊害を与えているが、火山噴火と食の問題にも深い関係があり、フランス革命のそもそものきっかけも火山噴火だったと言われている。国内の例を取り上げると、1954年ビキニ湾での水爆実験で日本国内が大飢饉に陥ったことが挙げられるだろう。

それ以外にも1976年の夏は異常な冷夏で、この年も食料確保の問題が国家の大きな課題となった。1980年にも冷夏による食品メーカー、関連企業の倒産が相次いだことが報道されている。

このように気候変動や自然災害に食環境は影響されやすく、過去を検証しても同様な問題はなんども経験していることからも、我々はそろそろ気候や自然災害に影響されにくい食のリスクマネジメントをするべきなのではないかと、八並氏は提唱する。

食の安全や栄養面で、注目される伝統食材

そのような状況で、食の安全という観点からどのような食材に注目すべきかを考察すると、伝統食材に行きつくのではないかと八並氏はいう。伝統食品とは、その食品を食材として我々人間が使用している期間の長さが長ければ長いほど良く、何より原料に安心感がある。

加工食品と比べても、伝統食品にはまがい物、異物混入、腐敗、薬物の故意の添加などが考えられにくい。具体的な食材例を挙げると、大葉、双葉、生姜、抹茶、ごぼう、ほうれん草、黒米などであり、これらの食材を我々人間は長い期間食してきている。そのため、これらの食材に対する信頼と安心感は元来高い。

さらにこれらの伝統食品は栄養価の面でも再び注目を集めている。例えば、双葉の有効成分DNJには糖尿病予防、肥満予防、抗ウイルス活性が期待され、同じく双葉のQ3MGには抗動脈硬化活性作用が、同じく双葉に多く含まれるムルペロシドFにはメラニン合成阻害、肌美白作用効果が期待されている。

このところ青汁産業は堅調に売り上げを伸ばしているが、これには青汁そのものの栄養価の高さ、使用されている食材の機能性の高さ、そして安定して供給ができる環境があることなどが背景にあるのではないかと八並氏は分析する。

抗疲労や滋養食品、女性や若年層向け商品も

抗疲労、滋養強壮食品も人気がある。これは現代社会において働き過ぎ、ストレス過多といった諸問題が消費者の購買意欲を刺激し、売り上げを伸ばしている。かつては中年男性向けの商品が多く出回っていたが、近年は女性や若年層向けの商品も多く出回り、メーカー側も新たな需要の開拓に力を注いでいる。

しかし強壮食品には問題点があり、近年多く出回っている商品には合成された薬品類時成分も多く、摘発されるような商品や、副作用を引き起こすなどのトラブルもたびたび報道されている。

よくニュースになるのが、一般的な強壮食品にバイアグラ類似成分が含まれていることで、このような問題がなかなか淘汰されないとなると消費者は強壮食品にネガティブなイメージを植え付けかねないだろう、と八並氏は分析する。しかしながら、疲労感やストレス、エネルギー不足を強壮効果の高い食品で効果的に解消させることは可能ではないかという。

滋養強壮の伝統食材、長い食経験から安全性確認

滋養強壮効果の高い伝統食材の共通項には、安全性が確認されていること、類似品の誤食が少ないこと、研究期間が長いこと、世界中で使用されていることなどが共通項として挙げられる。

強壮素材の歴史をみてみると、有名な食材であるマカは2000年前から栽培されている、冬虫夏草、オタネニンジンなども1000年前くらいから栽培されていることがわかっている。

古くから使用されているという点以外に、高地で生産されている食材かどうかという点にも注目すべきだと八並氏は付け加える。アンデスのボンボン高原は標高4200mという高地であるが、ここでは良質なマカが大量に採取され、またそれ以外の植物が生息しにくいため誤植や加工場でのミスが起こりにくく、安全・安心につながる。

また高地はそもそも紫外線が強いため、そこで育成する植物は抗酸化性がとても強い。ケニア中央部の標高1000?3000mの高原でも抗酸化性の強い紅茶が生産され日本にも輸入されている。

滋養強壮効果のある食材として、COQ10、L-カルニチン、アセリン、プロテインなどが新しい食材として注目をあびているが、伝統食材としては安心、安全、体感性の良さからもオタネニンジン、マカ、冬虫夏草、スッポン、ニンニクなどが再注目を集める食材ではないかと八並氏はまとめた。

野菜高騰で、青汁など伝統食材の見直しも

また今年の異常気象から2010年の後半の食の動向を八並氏は予測した。まず、今年は特に東日本を中心に冷夏になり、それにともない野菜の価格はさらに高騰するのではないかという。

そんな中でも、伝統食材から作られる青汁素材の育成は順調で、野菜不足を青汁素材で補おうとする傾向は増加するのではないかという。そして伝統食材が消費者思考で消費を増やすのではないかと分析した。

強壮素材のニーズも引き続き高まるが、原料流通ルートが明らか素材であることが消費者から求められるようになっているため、やはりここでも伝統食材が見直されるだろうとしめくくった。


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