「食」関連トピックス
日本人が育んできた和食〜朝日・和食フォーラム

2013年12月9日(月)、築地・浜離宮朝日ホールで、「朝日・和食フォーラム」が開催された。先日「世界無形文化遺産」として認められた「和食」。フォーラムでは日本の伝統的食文化である「和食」の魅力を取り上げた。ここでは基調講演:江原 絢子氏(東京家政大学名誉教授)の「日本人が育んできた和食」を紹介する。


 和食の根底、「出し汁」と「醗酵」
日本の食文化の成り立ちは、隣国である中国や朝鮮半島などの外の食文化を取り入れ、また近代になると西欧の食文化も受け入れながら変化と共に独自の発展を遂げてきた。その結果、世界に誇れるおいしさと健康を両立した「和食」が脈々と受け継がれていると江原氏。
和食の根底には「出し汁」と「醗酵」があるという。「出し汁」をとるという文化は日本が良質な水源に恵まれ、またこの水が軟水であるからこそ誕生したと江原氏はいう。

特に関西の水質は昆布出しを取るのに優れているが、関東の水では昆布だしを取るのは難しいと料理人は口を揃えるそうだ。良質な水は日本の豆腐を生み出すことにも貢献している。豆腐はそもそも中国から入ってきた食材だが、良質な水のある日本では、火を通さなくても食べられる『つるっ』とした喉ごしが良い独自の豆腐を生み出した。

中国から入ってきたものは食材だけでなく、お箸と匙といった食器類もある。しかしお椀を手に持って食事をいただくというのは日本独自の風土のなかで育った作法で、他の国にはない様式である。ご飯という主食、おかずの主菜、そして漬け物などの副菜という献立やお膳も日本独自の文化でこれらは平安期の終わり頃には始まっていたようだと江原氏。

食材を最後まで余すことなく使う

日本の食文化はさまざまな変化を遂げていて、和食といっても何か固定の形式があるわけではない。時代とともに変化を重ねながら受け継がれてきたもので、自然の恵から得られる食材は最後まで使い切りたい、という思いが一貫している。

例えば白米を食べるようになったのは江戸時代だが、玄米から白米に精製する過程で出てしまう糠を無駄にしたくないということで生まれた食品が糠漬けである。漬け物は以前からあったが、たくあんを中心とした糠漬けが誕生したのは江戸時代からである。また海水から塩を作る過程でできる「にがり」も同様で、にがりを無駄にしないようにと作られたのが豆腐である。

このように、食材を最後まで余すことなく使う、そして循環させるという和食の哲学は古くから受け継がれていた。といっても、人々の食生活がきりつめられた質素なものであったかというとそうではないこともわかっている。

江戸時代、料理のレシピ本が登場

例えば江戸時代の食文化に関する文献を調べると、当時の日本人には特別な日=ハレの日が年間80日以上もあったことがわかっている。単純に計算しても1週間に1回程度は食を十分に楽しむ日を設けていたことがわかる。ハレの日の食事はおせち料理を筆頭に今も全国各地で文化として残っているが、いろいろなバリエーションがあるものの共通していることは食事により健康長寿を願うという点であると江原氏。

江戸時代になるといわゆるレシピ本ともいえる料理書が登場した。当時はあえて『和食』と呼ぶことはなかったが、この時代の文献を調べると、その当時の人々が食をいかに大切にしていたかがよくわかる。

料理書に書かれていることを幾つか取り上げると、まずは食を舌や口で味わうだけでなく、目で味わうことを大切にすべきとされている。また器を大切にすることも記され、料理を引き立てる器選びや盛りつけを江戸時代の人たちが楽しんでいたこともわかる。他にも心で食べることの大切さについても記されている。

風土にあった料理楽しむことが大切

つまり、作り手だけでなく、材料や自然の恵みに対する感謝の気持ちである。そして主食であるごはんをいかに美味しく炊くことに心をくだくかについても書かれている。ごはんの美味しさによってその献立全体の美味しさが左右されるからだ。調味料の重要性。醤油やみりん、味噌は今や世界で賞賛される調味料だが、この調味料があるからこそ複雑な調理をしなくても素材の美味しさを引き出す料理ができる。

出し汁も調理や素材に合った出し汁を選ぶことが重要だと記されている。そして季節感と温度。熱い物は熱く、冷たいものは冷たくいただき、旬のものをたっぷり使い季節感を演出しながら風土にあった料理楽しむことの重要性も説かれている。まさにこれが和食の心ともいえると江原氏。

和食と一言でいっても、時代とともに変化を遂げており、それは文化のあり方でもある。良い部分は継承し、問題点は改善しながらより良いものを次世代のために残していくことが大事。残したいものは『自然の尊重』という部分で、ここを大切にしながら和食をより魅力的なものに進化させていくにはどうしたらいいかを考えていくことが大切、と江原氏は話しを結んだ。

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