腸内細菌叢を整え、生活習慣病を防ぐ

10月27日、ヤクルトホール(東京都港区)で「第9回腸内フローラシンポジウム:腸内フローラと生活習慣病〜食生活とのかかわり」(主催:ヤクルト・バイオサイエンス研究財団)が開催された。この中で、光岡知足氏(東大名誉教授)らが健康管理に大きな影響を及ぼす腸内細菌の役割について述べた。

食餌成分が健康増進に不可欠であることは明らか(光岡氏)

光岡氏は「ヒトの健康における腸内フローラコントロールの意義」と題して講演。腸内細菌の働きについて、「腸内の有害菌は有害物質を発生させ、日和見感染を起こす」とし、有用菌による腸内細菌叢の整備の必要性を述べた。ビフィズス菌などに代表される有用菌は、「有害菌の増殖を防止し、免疫機能の促進を行い、がん、動脈硬化、高血圧、肝硬変などの発症リスクを抑えるため、腸内の有害菌を減らすことが重要性である」と説いた。

また、食餌と生活習慣病との密接な関係にもふれ、「日本人の死因は欧米人のパターンに類似してきた。高血圧症、高脂血症、脳卒中、心臓病、糖尿病、がん、などの生活習慣病に悩まされている」とし、これを「食習慣の変化によるものである」と指摘。 この点について、「最適の腸内フローラは栄養バランスのとれた食餌と機能性食品を上手に利用することによって達成される。食餌および食餌成分が健康増進に不可欠であることは明らか」とし、機能性食品の活用を提案した。

機能性食品の役割については生体調節、免疫増強や抗アレルギーなどの生体防御、下痢、便秘、がん、コレステロール血症、糖尿病などの疾病予防、免疫刺激、抗変異原作用、抗がん作用、抗酸化作用、あるいは腸内腐敗やコレステロール血症の抑制による老化抑制など挙げた。

この他、「免疫栄養と腸内菌」と題した講演で、S.ベングマルク氏は「米国で薬害で毎年6,000人が死亡する」とし、「乳酸菌をヒトの発がん抑制に利用することは興味深く、見込みのあることであり、さらに詳細に調べる価値がある」と述べた。

また、午後の部では「乳酸菌による大腸癌の予防」(Joseph J.Rafter)、「フリーラジカルと生活習慣病--癌予防食の立場から」、「血清脂質レベル低下における乳酸菌および腸内細菌の役割」(ヤクルト本社:綿貫雅章氏)、「生活習慣病とミネラル栄養」(明治製菓:太田篤胤氏)、「乳酸菌の経口投与によるT型糖尿病モデルマウスに対する効果」(ヤクルト本社:松崎健氏)、「ビフィズス菌発酵乳の潰瘍性大腸炎再発防止」(大阪府立成人病センター:石川秀樹)などの講演が行われた。


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