糖尿病、高脂血症、さらに大腸がんまで、
疾病予防の機能性に焦点


1月29日(土)、ヤマハホール(東京都中央区)で公開講演会「生活習慣病と食物繊維」(主催:日本食物繊維研究会)が開催された。戦後、「食」の欧米化とともに、食物繊維の摂取が減少傾向にあったが、近年糖尿病や高脂血症などの生活習慣病の予防に密接に関与するとして、あらためてその効用が注目されている。当日、五島雄一郎氏(東海大学名誉教授)、鈴木正成氏(筑波大学教授)、奥 恒行氏(県立長崎シーボルト大学教授)の3人の演者が、食物繊維の有用性が説いた。

食物繊維の摂取状況:1970以降日本人の大腸がんの発症が増加、低繊維食と関連か

食物繊維とは「ヒトの消化酵素では消化・分解できない物質」のことであり、長い間栄養学的には無用のものと思われてきた。しかしながら、近年、血糖反応を緩やかにしてインスリンの分泌を抑制し、糖尿病のリスクを減らすことや、腸内細菌叢の改善や便の滞留時間を短くすることで大腸がんの発症を防ぐことなどが明らかとなり、その有用性が脚光を浴びるようになった。

日本では戦後、「食」の欧米化に伴い、次第に摂取量が減り、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病の発症を招いたとの見方もされている。特に、現在若年層にもそうした疾病が蔓延しつつあり、深刻な状況が生じている。これに対し、米国では10年ほど前から食物繊維を多く含む未精製穀類を積極的に摂ることを奨励しており、特に児童においては朝食に食物繊維を多く含むシリアル食が食卓の半数近くを占めるほどの浸透を見せている。 現在日本人の1日の平均摂取量は15〜16gといわれる。日本で大腸がんの死亡率が1970年代から急速に上昇しているが、1950年代半ばより食物繊維の摂取量が減少していることが関連していると推測されている。

食物繊維の種類と機能:「水溶性」と「不溶性」に大別、有害物質の吸着と排泄など

食物繊維は一般に水に溶ける「水溶性」と水に溶けない「不溶性」に分けられる。「水溶性」にはガム質(大麦、豆、など)、ペクチン(りんご、柑橘類、キャベツ、じゃがいも、など)、へミセルロース(海藻類など)がある。また「不溶性」にはセルロース(小麦ふすま、大豆、ごぼう、シリアルなど)、ヘミセルロース(小麦ふすま、大豆、キャベツなど)、リグニン(小麦ふすま、にんじん、など)がある。

食物繊維の目標摂取量:1日20g〜25gが目標

食物繊維はどの程度摂取すればいいのか。「食物繊維の減少と脂質の増加が大腸がんの発生、死亡率を高めている」(奥氏)とし、目標摂取量を1日20〜25gと掲げた。

「食物繊維の摂りすぎについてはあまり考えなくてもいいのではないかと思う。日本人の平均摂取量は15〜16gですが、あと5gぐらい摂れば目標の20gくらいになる。5gに相当する繊維ですとりんごで2個、ご飯ですと8杯くらいになるため、かなり積極的に摂取を心がけていいと思う」(同)とした。

これに対し、「10〜20gが適当ではないかとの見解がある。実際にはっきりとしたデータはまだない」と五島氏。また「最近になって食物繊維を摂ることによってホモシステイン(※注1)が増え、動脈硬化を進行させるのではないかということが一部で言われている。はたしてそういった問題があるのかどうか、今後の研究が必要である」とした。

(※注1)ホモシステイン 30年前、初めて心臓病の要因として疑いのある物質としてホモシステインが確認された。ホモシステインは体内で重要な働きを行うアミノ酸。体内で正常な濃度の場合は問題はないが、いったん高くなると心臓や血管に障害を与えるということが、様々な研究で明らかになっている。ビタミンがホモシステイン濃度を下げる働きをし、中でもB6、B12、葉酸は大きな役割を果たす。


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