n-3脂肪酸の酸化的ストレス、
脳や網膜機能への作用など発表

2004年10月21日(木)、公開講演会「健康と脂質の働き-栄養・休養・運動」(主催:DHA・EPA協議会/財団法人日本水産油脂協会)が開催。魚油などに多く含まれるDHA・EPAの機能性について、菊川清美氏(東京薬科大学薬学部教授)、小林哲幸氏(お茶の水女子大学理学部生物学科助教授)らが最新研究を報告した。

n−3脂肪酸、酸化的ストレスで脂質過酸化亢進も、DNA傷害をくいとめる働き

菊川氏は、「酸化的ストレスをくいとめるn−3脂肪酸摂取」と題した講演で、n-6脂肪酸とn−3脂肪酸摂取の酸化的ストレス条件における、脂質過酸化度の違いやDNA傷害に及ぼす影響について研究成果を発表。「これまでの研究で、n−3系の多い魚油をヒトや動物に投与した場合、n-6系の多い植物油に比べ、脂質過酸化度が大きく亢進し、これにより生じた脂質過酸化物がDNAやタンパク質を傷害し、酸化的ストレスを増悪するかにみられていた」(同)が、研究の結果、下記のことが判明したと報告した。

1)生体内の通常の酸化的ストレスではn−3脂肪酸摂取がより脂質過酸化を亢進することはない。
2)強い酸化的ストレスの場合にはn−3脂肪酸摂取の方がより脂質過酸化を亢進したが、酸化的ストレスによるDNA傷害は逆に軽減された。
3)n−3脂肪酸摂取が酸化的ストレスにより脂質過酸化が亢進しても、DNA傷害をくいとめる働きがある。

n−3脂肪酸摂取時の脂質過酸化については、ラットに5%のサフラワー油(n-6系多く含有)または魚油(n-3系多く含有)を含む食餌(ビタミンEの含有量は同一)を6週間投与したが、両者の間に有意な差は認められなかったという。

n-3脂肪酸にはα-リノレン酸、EPA、DHAなどがあり、n-6脂肪酸にはリノール酸、アラキドン酸などがある。n-6脂肪酸であるアラキドン酸については血栓の生成を促進し、心筋梗塞、脳梗塞、大腸がん、アレルギーなどの亢進を招く作用があるとされ、近年、n-3とn-6の摂取比率の重要性が説かれるようになった。

小林氏は、「生活習慣病予防と食事、特に油脂の重要性について」と題した講演で、n-3脂肪酸の脳や網膜機能、心・血管系疾患へ与える作用について報告。「n-3脂肪酸を制限した食餌で長期間ラットを飼育した場合、脳内のDHA含量が低下し、学習能試験での成績が低下するが、魚油やDHAを添加した食餌で育てたラットでは迷路試験などの成績が向上する」ことなど報告。
また、ヒトの情動や気質への影響についても、ストレス下でのDHA投与は、他人への攻撃性や敵意性の上昇を抑制する、ことについても言及した。


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