n-3系脂肪酸含む魚の摂食、小児期からの
肥満や生活習慣病予防に貢献


平成17年10月19日(水)、アイビーホール青学会館で、第7回公開講演会『少子化・高齢化におけるこれからの健康管理の在り方--日本の過去・現状を踏まえ、今後、脂質に期待される役割--』(主催:DHA・EPA協議会)が開催された。当日、岡田知雄助教授(日本大学医学部)、川端輝江助教授(女子栄養大学)らが、脂質の役割について講演した。
児童の肥満、心血管病の罹患率高めるおそれ

近年、世界的に肥満児童が増加し、内臓脂肪の蓄積や血清脂質異常などから、将来的な心血管病の罹患に繋がることが懸念されている。

岡田知雄助教授は、「小児・学童の健康維持のための食生活--生活習慣病を予防するために」と題した講演で、「小児期の肥満を防止する食習慣や運動習慣の確立こそ、心血管病の罹病率を減らす最も確かな方策」であるとし、小児期からの肥満予防の食生活についての研究成果を報告。

児童の摂取する脂肪酸と脂肪蓄積の関係について検討した結果、魚類の摂食が多いと予想される肥満児童は、n−3系脂肪酸(DHA、EPAなど)の生理活性作用による脂肪蓄積性の減少効果などで、肥満が改善されやすいことを指摘した。

調査から、若い女性達の魚離れが浮き彫りに

川端助教授は、「女性の健康意識と食生活--次世代の健康な日本を担う」と題して講演。「魚介類に多く含まれるn−3系脂肪酸は乳幼児の脳や網膜の発達に必須である」とし、妊娠適齢期女性のn−3系脂肪酸の適切な摂取の必要性を説いた。

また、昨年、女子大生(18〜21歳)30名を対象に行った4週間の食生活の調査結果について報告。対象者全員に期間中の食事をデジタルカメラに撮り、食事内容を検討した。

その結果、1日あたりの平均摂取量は、エネルギー1678(±231)kcl、脂質61.4(±10.6)g、n−6系脂肪酸11.2(±2.4)g、n−3系脂肪酸2.4(±0.5)gで、 平成14年国民栄養調査報告の18〜29才女性の魚介類摂取量67.4g/日と比べると、魚類の摂取量が27.6g/日と低い値を示していることが分かったという。

さらに、n−3系脂肪酸のうち、魚介類由来の脂肪酸(EPAやDHAなど)の占める割合を調べてみたところ、18〜29才女性56%に 対し、女子大生は25%であることが分かったという。

調査の結果、1)女子大生の油脂類、菓子類の摂取量が高値である、2)一人暮らしという住環境のためか、問題のある食生活をし ている人が多く見受けられる。魚料理を作って食べることをほとんどしていない、などの現状が明らかになった。

また、川端氏は、これまで、DHAは植物油に含まれるα−リノレン酸からEPAを経由して体内で作られるとされてきたが、「最近の研究では、α−リノレン酸からEPA、特にDHAへの代謝がそれほど期待できるものではない」ことを指摘。DHAの供給源である魚を食生活に取り入れる必要性を説いた。

この他、食文化史研究家の永山久夫氏が、「日本人の食べる知恵」と題して講演。独立行政法人国立健康・栄養研究所の江崎氏が、「これからの日本人の食生活は如何にあるべきか−2005年食事摂取基準策定について」を講演した。


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