サルコペニア、嚥下障害の危険因子
「サルコペニア」とは1989年にローゼンバーグ氏によって作られた造語で、「加齢による筋肉量減少」を意味するが、サルコペニアの定義については確定されたものがない。
各学会が定義を改定し、現在は「筋力低下(身体能力の低下)」「筋肉量の減少」をサルコペニアとしている国が多い。
ちなみに欧米人とアジア人では筋骨格系が大きく異なる。そのため、アジアではアジアのサルコペニア診断基準があり、主に握力や歩行スピードによって診断されている。
近年、サルコペニアが嚥下障害の危険因子で、深い関係があると示唆され、なかには嚥下障害関連肺炎の死亡率を上昇させるという報告もある。
嚥下筋、加齢とともに筋肉量が減少
筋肉が産生し分泌するタンパク質にサイトカイン(マイオカイン)があり、敗血症などの炎症は筋肉を萎縮させるマイオカインを誘導することが報告されている。
しかし、嚥下障害による肺炎が、筋萎縮やマイオカイン産生を誘導するメカニズムはまだ明らかではない。
そこで、出江氏の所属する研究室では、嚥下障害による肺炎を起こしたヒトとマウスモデルを解析。すると肺炎が筋萎縮を誘導していることが確認できたという。
サルコペニアと嚥下障害、そこから生じる誤嚥性肺炎との関係について、そのメカニズムが完全に解明されたわけではないが、サルコペニアは嚥下をするための嚥下筋でもおきている。
一般的に、サルコペニア予防では負荷をかける部位として、太ももや腹筋など、体の中でも大きな筋肉ばかりに意識が行くが、嚥下筋は咀嚼に不可欠な筋肉であり、嚥下筋も加齢とともに筋肉量が減少することがわかってきた、という。
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