米国におけるサプリメントの強調表示の現状〜食品開発展2019セミナー

2019年10月2日(水)〜4日(金)、東京ビッグサイトにて「食品開発展2019」が開催された。同展示会セミナーより、インターテックヘルスサイエンシズインクの講演「米国における通常食品やサプリメントの強調表示について」を取り上げる。


1990年成立の「栄養表示教育法」から始まる

米国では健康食品やサプリメント、一般食品の容器や包装、広告に強調表示を行うことは、一定のルールの範囲内で認められている。

食品やサプリメントの強調表示は消費者教育につながり、健康に寄与する。製造者(事業者)は競合商品との差別化や付加価値の向上などのメリットが得られる。

米国における食品表示制度の基礎は1990年に成立した「栄養表示教育法(NLEA)」にある。これにより脂肪やコレステロールなど、成分表示を行うことが義務付けられた。

さらに1994年に、「エビデンスに基づく」という前提で、任意の強調表示が認められるようになった(DSHEA法)。

3つの強調表示が存在

現在、強調表示には、「栄養成分の含有に関する強調表示」「構造機能に関する強調表示」「疾病リスク低減に関する強調表示」の3つがある。

「栄養成分の含有に関する強調表示」は、具体的には「非常に良いタンパク源です」といった強調が該当。1日の摂取目安量が設定された栄養成分(36種類)のみ認められている。

規制の要件を満たしていれば該当する栄養成分については「〜源」「〜豊富」「〜より多く」「〜より少ない」など、法によって定められたいくつかの表現によって強調することが可能である。

当然ながら強調表示を実施する食品はその組成についても法によって定められた基準を満たしていなければならない。

「構造機能に関する強調表示」とは、具体的には「タンパク質は正常な免疫機能に必要です」といった表現による強調表示が該当。主にサプリメントに関する規制であると理解できる。

構造機能に関する強調表示はヒト介入試験で科学的にその機能が立証されていることが前提で、立証の責任は食品事業者が負う。

違反すると、FDAから強い警告レター

米国も、疾病の診断・軽減・治癒治療・予防に関する表現や明示・暗示的表現は不可で、栄養成分または食品成分が通常の身体機能や構造を維持するメカニズムを説明することのみ認められている。

また、特定の栄養の欠乏で生じる疾病リスクの低減の表示は認められている。

サプリメントに関する強調表示は、米国でも違反が起こりやすく、特定の疾病や疾病の軽減、治癒や治療を暗示させるような表示が誤ってなされた場合は、FDAから事業所に警告レターが届く。

警告レターの内容としては「この商品は安全で効果があるとは認められず、新規の医薬品であるなら、FDAの許可なしに販売してはならない」といった強い警告で、これが届くと事業所はすぐに対応しなければならない。

「治療・予防」といった表現は不可

また、米国では一般食品とサプリメントの強調表示に関するルールが異なり、サプリメントは販売後30日以内に表示内容をFDAに届け出ることが義務付けられている。

そして、どのサプリメントにも「この表示内容はFDAの許可を受けたものではありません、この商品はいかなる疾病の診断、治療、治癒、予防を目的とするものではありません」と明記しなければならない。

「疾病リスク低減に関する強調表示」とは、いわゆる「ヘルスクレーム」のことで、具体的には「低ナトリウムの食事は、様々な疾病と関係ある高血圧のリスクを低減するかもしれない」といった表現の表示が該当する。

この「疾病リスク低減に関する強調表示」においては、すべての製品においてFDAによる販売前の審査・許可の対象となる。「疾病リスク低減に関する強調表示」においても「治療」「予防」といった表現は使用できない。

「条件付きヘルスクレーム」も

しかしエビデンスの検証を経た上で、高血圧などのコンディションに関するリスクの低減については表示することができる。医薬品とは異なるが、食品や栄養素に関する効果や効能についてかなり具体的に表現することが可能だ。

その一方で、検証やエビデンスについては厳格なものが求められる。そのため、承認が得られないケースも多い。また、エビデンスのレベルも細かく分類されている。

さらに「有効性を支持する根拠があるが、決定的ではない」といった「条件付きヘルスクレーム」もある。

条件付きヘルスクレームは表示が長く消費者には読みにくいというデメリットがあるが、FDAが許可していることで、食品成分の新たな機能性やその可能性を消費者に伝えることには貢献しているという。


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