腸管は「外部環境」
大学時代から腸内環境の研究を行なっている福田氏。基礎研究を社会に実装させ、「病気ゼロ社会」の実現に向けベンチャー企業の経営も手がけているという。
腸研究の最先端を理解する上で最も重要なことは、「腸は体の外側にある」つまり「外部環境」ということ、と福田氏は指摘する。
腸はちくわやストローのようなもので、私たちの体の外側にあり、「どんな菌でも悪いことさえしなければ住み着いてもOK」としている。
食事を摂ると、栄養成分は体の外側である腸管から吸収され、血中に入り全身に影響を与える。腸は体の外と内の境界にあり、「腸内細菌叢」の個人差も大きい。
腸内細菌、約40兆個存在
腸内環境や腸内細菌のことが分かると、自分の体に吸収されやすいもの、吸収されにくいもの、どんな薬が効くのか効きにくいのか、かも分かってくる。
これにより腸内デザインで病気ゼロを目指せる。現在、世界中で腸内細菌や腸内環境に関する研究が進められているが、腸の研究が盛んになったのはここ10年、まだまだ解明されていないことが多い、と福田氏。
近年、一人の体に腸内細菌が約40兆個存在していることが分かっている。摂取した食品の未消化物を餌として自ら増殖したり、分泌物を出すことで、全身の細胞とやりとりしている。これを「腸内エコシステム」と呼ぶ。
例えば「脳腸相関」という言葉が知られるようになっている。腸内環境は脳にも影響を与えていることが解明されてきている。
パーキンソン病、便秘と密接な関係
腸内細菌叢は過労、ストレス、薬(抗菌剤)、加齢、気候などによって容易に乱れる。
腸内細菌が乱れると肥満、糖尿病、動脈硬化、肝臓癌、認知症、うつ病、アレルギー疾患などさまざまな疾病の原因となることが解明されつつある。
例えば、これまで神経の病気と考えられてきたパーキンソン病は、便秘と密接な関係があることが分かり、パーキンソン病は腸の病気ではないかとまで考えられるようになっている。
私たちは細胞だけでは生きていくことができない。さまざまな菌や微生物と共存し、それらの力も必要とする超生命体(Superorganism)である、と福田氏。
腸内細菌叢の状態で反応が異なる
腸内環境を整えるには食物繊維、プレバイオティクス、プロバイオティクスの摂取が有効とされる。しかし最新の研究では、これらの食品は毎日食べないと効果が出ないことも分かってきている。
というのも、個々の腸内細菌叢は、自ら増殖することで生き残っており、新たに外から入り込んだ菌よりも強いため。
自分の腸内に生き残っている腸内細菌はある程度パターンや安定性がある。
同じ食品を摂っても、同じ薬を飲んでも、個々人で安定的に存在している腸内細菌叢が異なるため、それぞれ反応が異なる。
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