免疫時代における機能性表示食品の役割
〜夏のWeb公開シンポ


2020年8月21日(金)、「夏のWeb公開シンポジウム〜健康食品新時代の幕開け 免疫への可能性」(三生医薬且蜊テ)が開催された。この中から、森下竜一氏(社団法人日本高加齢医学会副理事長)による講演「免疫時代における機能性表示食品の役割」を取り上げる。


機能性表示食品、5年で2777件を突破

「人生100年時代」に突入し日本人の寿命が伸びていることは喜ばしい。しかし、その一方で「老後の期間」が長期化していることが問題視されている、と森下氏。

1920年には定年が60才であったが、当時の男性の平均寿命は61.1歳で、老後期間がわずか1年しかなかった。国民皆保険が実現した1961年では定年が60歳で男性の平均寿命は72.4歳。老後期間は伸びたがそれでも12年だった。

しかし2017年、定年は65歳と後ろにずれたが、男性の平均寿命は81.1歳、女性は87.3歳と急激に伸び、男性であれば老後期間が16年、女性は24年もある状況になっている。

しかし、高齢者の定義を変えれば状況は一変する。現在「前期高齢者」とされている65〜74歳を「pre-old准高齢者」、後期高齢者とされている75〜89歳を「old-old高齢者」としている。

要は75歳以上を高齢者と定義し、そこまでが現役世代となれば、高齢者1人を5人で支えればいい計算になる

そのためにもセルフメディケーションが重要になってくるが、その一役を担う機能性表示食品は制度スタートからわずか5年で2777件を突破し、非常に活況を呈している、と森下氏。

免疫機能の表示の実現を目指す

機能性表示食品制度によりこれまで認められなかった新たな機能性関与成分が認知されるようになり、表示内容にもトクホとは違う新しいヘルスクレームが増えている。

また生鮮食品の届出も認められており「食で健康になる」ことが多くの消費者に周知されるに至っている。制度そのものも改定が繰り返され、安全性と制度の透明性が非常に高いものとなっているのも評価できる、と森下氏。

政府が5年ごとに発表している「第二期健康医療戦略」では「機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善などを通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」ということが織り込まれている。

まさにコロナの時代に多くの国民が関心を寄せている「免疫」について、これまでは不可能とされてきたが、機能性表示食品でのヘルスレームが実現する可能性を帯びてきている、と森下氏。

景表法、増進方、薬機法の取締が厳しさを増す

とはいえ、これまでも「免疫」に関する課題は指摘されていた。もっとも難しい点が、何を持って「免疫力が上がった」、「免疫を調整する」といえるのか、その指標が極めて曖昧といえる。

一つの提案としては「本品にはXXが含まれます。XXはYY細胞に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが報告されています」くらいまでなら可能ではないか、と森下氏。

一方で、機能性表示制度の活況とともに、景表法、増進方、薬機法の取締が厳しさを増している。

特にここ数ヶ月は「新型コロナウイルスの感染予防」に関する広告表示の問題が厳しく指摘され、消費者庁は3月10日、3月27日に健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌剤、アロマオイルなど64事業者87商品に注意喚起した。

さらに6月5日には35事業者38商品に注意喚起を行った。また食品安全委員会や国立健康・栄養研究所なども同様に注意喚起に力を入れている。

今からエビデンスやSRの準備を

ただし、エビデンスがしっかりしていれば、機能性を表示することはそれほどハードルが高くなくなっている。

既に、免疫に対する試験データを持つ食品素材としては、各種ビタミン、各種ミネラル、乳酸菌、プロポリス、ヘルペリジン、ユーグレナ、コエンザイムQ 10、アスタキサンチンなどがある。

こうした素材を持つ関連企業は今からエビデンスやSR(システィマティック・レビュー)の準備を進めておくと、有利に働くかもしれない、と森下氏。

さらに、「第二期健康医療戦略」には2025年に開催される「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」も含まれる。

万博の開催前から世界中の課題やソリューションを共有できるオンラインプラットフォームを立ち上げ、人類共通の課題解決にむけて、先端技術の英知を集め、新たなアイディアやプロダクトを発信する場に、と森下氏は抱負を語った。


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