新型コロナ、免疫系サプリが需要増
〜夏のWeb公開シンポジウム


2020年8月21日(金)、「夏のWeb公開シンポジウム〜健康食品新時代の幕開け 免疫への可能性」(三生医薬且蜊テ)が開催された。この中から、飯塚智之氏(矢野経済研究所フードサイエンスユニットフードグループ)による講演「日本の免疫訴求市場〜海外の状況も踏まえて」を取り上げる。


乳酸菌や高麗人参が堅調な伸び

健康食品素材の市場規模の中でも堅調に伸びているのが「乳酸菌」と「高麗人参」、これらはおそらく「免疫」というキーワードとも関係しているのではないか、と飯塚氏。

これまで健康食品市場における「免疫」素材については、がん対策を中心に一部の切実な需要にのみニーズのあるものというイメージがあった。

訪問販売・通販やデパートなどの限られた場所での扱いがメインで、高額商品でもあったためクローズドマーケットの印象が強かった。

しかし、ここ数年で免疫=身体を守る、生活者全体の需要という認識が広がり、エビデンスによって健康食品だけでなく一般食品としての展開も見せている。

また腸と免疫機能の関係において、特にプロバイオティクスの役割についても一般的にもよく知られるようになっている。

そのため、乳酸菌はヨーグルトだけでなくサプリメント形態でも売り上げを伸ばしている。また、高麗人参は女性には「冷え対策」、男性には「滋養強壮」とニーズの幅も高い。

「健康維持増進の目的」が46.7%

矢野経済研究所が行っている「健康食品を摂取する目的」について行ったところ(2019年12月24日〜26日、30〜70代以上対象、性別・年代・性別均等に1000名に収集)によると、「健康維持増進の目的」が第一位で46.7%。「疲労回復・滋養強壮の目的」が32.9%となっている。

また、「整腸・便通改善の目的」が20.4%、「栄養バランスの偏り不足の対策」が18.8%、「免疫向上目的で健康食品を摂取」が16.4%となっている。

免疫目的で健康食品を摂取する人はそれまで高齢者の女性が圧倒的に多かったが、性別としてもやはり女性の方が若干多い。またここ数年、30〜40代の男性にもニーズが高まっている。

ちなみに若い世代の男性は健康だけでなく美容目的のサプリメント摂取も高まってきている。

調査によると、摂取している健康食品としてはマルチビタミン・ミネラルが最も多く、次いでDHA&EPA、ビタミンC、乳酸菌となっている。いずれもドラックストア等で低価格で手軽に購入できる。

免疫関連素材の需要拡大が予測

「免疫向上」が消費者にとって身近になったきっかけはやはり乳酸菌である。ここ数年メディアで「腸内環境=整腸」だけでなく「腸内環境=免疫」と取り上げるようになったことも一因であろう。

さらに今年の新型コロナの流行により、今後も免疫関連素材・商品の需要が拡大することが予測される。

企業ごとに乳酸菌や菌株が異なるが、例えば明治では「乳酸菌1037-R1株」を使用したヨーグルトにNK活性増強効果やインフルエンザの抑制効果の可能性があることを報告している。

森永乳業の「シールド乳酸菌」は、免疫という言葉が表示としてまだ使えない中で「シールド=守る」という良いイメージを利用し、売れ行きも好調だ。

また、森永乳業のラクトフェリンは中国等の海外でよく売れている。

ビフィズス菌BS536には免疫力向上作用があることも報告されている。アサヒカルピスウエルネスは「ラクトバチルス・アシドフィルスL-92株」が腸管の免疫細胞に入り込み免疫機能を調整しアレルギー症状を改善することを報告。

また、ハウスウエルネスフーズの「HKL-137」は外の乳酸菌と比べて免疫賦活作用が高く、原料として加工食品に配合することで人気が高まっている。

大塚製薬の「乳酸菌B240」は摂取によって唾液中のIgA分泌量が増えることを確認している。また乳酸菌以外ではユーグレナ、パラミロン、ポリアミン、つばめの巣、エキナケアエキス末、レジストエイドなども免疫関連素材として人気が高まってきているという。

海外で免疫系サプリが需要増

米国や中国では、新型コロナウイルスの影響で「免疫賦活」や「健康維持」への関心が高まり、特に米国のサプリメント市場の成長率は昨年の12.1%が予測されている。

中でもマルチビタミン、プロバイオティクス、エキナセア、スピルリナなどが売り上げを伸ばしている。

中国ではビタミン、アミノ酸の需要が増加しているが、特に中国の武漢大学で新型コロナウイルス重症肺炎患者の治験にビタミンC点滴両方の臨床試験を開始したニュースなども話題となっている。

日本では、ビタミンC・Dやプロポリスが好調だ。日本では、免疫に関する積極的な情報発信により、栄養バランス、適度な運動、良質な睡眠が免疫力の向上に不可欠とされ、「免疫系」素材のニーズが増加している。

方向性としては「免疫力向上に直接的に関与する素材」と「免疫力維持・向上に必要な食事・生活サポート」の2種類がある。

前者は腸を活性するヨーグルトや発酵食品、後者は健康習慣をサポートする運動や睡眠関連のサプリメントなどで、免疫といっても幅広い製品・成分が関連している。いずれにせよ、今後もますます「免疫関連市場」が伸長することは間違いなさそうだ、と飯塚氏はまとめた。


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