高まる感染対策の予防ニーズ
COVID-19の世界的流行により、機能性食品分野で最も話題となっているのが「免疫表示」についてであろう。
また「健康志向」の高まりや「環境への配慮」の潮流の中、世界で「植物性食品」の行方が注目されている。
持続可能な社会という観点から、元気な子供が生まれ続ける社会のために「若年世代の栄養状態の改善」について特に日本で課題意識が高まっている、と西沢氏。
2020年の冬はインフルエンザとCOVID-19の同時流行の恐れがあると現時点で予測され、感染対策に対する予防ニーズはますます高まると考えられている。
そうした中、今年8月7日にキリンより乳酸菌が機能性表示食品初の免疫表示が許可された。これまで免疫に関する機能性表示の取得は難しいとされてきた。
しかし、今回は「体調」に関する自覚症状への有効性を研究レビューのアウトカムと設定したことや、プラズマサイトイド樹状細胞示を免疫指標として用いた事が受理に大きく貢献した。
今後、他社が「免疫」評価を行うのであれば、キリンの事例と同様「体調」をデータとして取得しておくのが望ましいのではないか、と西沢氏。
全粒穀物の摂取、世界的に注目
感染症のリスクを減らすために、世界では食物繊維を多く含む全粒穀物の摂取に注目が集まっている。
全粒穀物や食物繊維を多く含む複合炭水化物の摂取は、腸内細菌を活性しフラボノイド代謝物を上昇させることで、インフルエンザのダメージを減らすという研究報告もある。
特にインフルエンザは、体の中でも上気道で起こる可能性が高く、上気道は腸に比較して免疫が弱い場所であるため、ウィルスが上気道の細胞に侵入するのを阻害する機能性素材に期待がかかっている。
中でも日本のクロモジという植物などに含まれているポリフェノールや、茶カテキンに注目が集まっている。
ビタミンD、COVID-19の重篤化リスクを低下
また、COVID-19については、ビタミンDの血中濃度が低いと感染リスクや重症化リスクが高くなるという報告が世界各国から上がっている。ビタミンDの摂取でCOVID-19の重篤化のリスクが下げられるという報告も出てきている。
そもそもビタミンDが不足すると高血圧、鬱、肥満、リスク因子が上がる事はよく知られている。日本人は世界と比較してもビタミン Dの摂取量が非常に低く、特に米国に比べるとかなり低い。
2020年版の食事摂取基準改定版では摂取目安量が大きく増加したが、それでも現在日本人のほとんどの世代で血中ビタミンDの濃度は低い。
ちなみに、先日COVID-19に罹患したトランプ大統領も、レムデシビルとビタミンDに亜鉛のカクテルを治療に用いたことが報告されている。米国で現在一番売れているサプリメントはビタミンDだ、と西沢氏。
タンパク質の摂取の仕方に注意
また、現在「健康志向の高まり」「環境への配慮」の潮流の中で「植物性食品」の人気が高まっている。特に「植物性由来のタンパク質」に注目が集まっている。
一方でタンパク質の摂取の仕方には注意必要という情報もあり、中高年期の高タンパク食は、がんの死亡リスクを4杯に、総死亡リスクが1.74倍になるという報告もある。
また中年期のタンパク質摂取量が多いほど心不全リスクが高まるというフィンランドの研究もある。
ただ、ここで示されているタンパク質というのは主に赤身肉と赤身加工肉で、植物性のたんぱく質や魚ではそのような有意差を示さない。
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