つまり、自然免疫の受容体を導入しておくことは、生理機能の改善や疾病予防の可能性があることを示唆している。
辻氏らの研究によると、乳酸菌には特有の2本鎖RNAが含まれ、これが樹状細胞のTLR3を刺激してインターフェロンβを産生誘導することを示唆しているという。
これは乳酸菌特有の効果であり、乳酸菌はそもそも存在していることで炎症を予防しているが、さらにインターフェロンβを産生する。
このことで、抗ウイルス機能、抗炎症機能によって腸炎を予防し、IL- 12の産生増強を通じてインターフェロンγ産生性T細胞の分化を促進し、防御機能を高める。
これは過半の乳酸菌で見られる効果であり、また乳酸菌が生菌でも死菌でも得られる効果だという。
小腸における自然免疫のシステムへの影響
現時点ではわかっていないことが多いが、もともと常在している小腸の常在乳酸菌と食品由来乳酸菌の相乗効果や、菌株ごとの特徴についても今後研究されていくだろう、と辻氏。
また、マウス試験だが、乳酸菌の経口投与で免疫機能が回復するといったデータや小腸の免疫機能の老化事象の改善といったデータも得られており、乳酸菌が免疫に対してできることは極めて大きい。
乳酸菌は私たちが普段から口にする身近な食品、特に発酵食品に多く含まれており、日本人は発酵食品の食文化で生きているため多様な腸内細菌叢を持っているとされている。
「食」と「医」の融合を目指した研究領域の確立や保健機能食品のニーズが高まっている。
小腸の常在菌である乳酸菌については、伝統的な発酵食品に含まれる乳酸菌の特徴も明らかにし、小腸における自然免疫のシステムへの影響をさらに解明することで、健康維持や疾病予防、さらに治療や診断などにおいても、更なる可能性が広がることが期待される、とした。
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