世界的にも食物繊維が「大腸癌」だけでなく「全死亡リスク」「心疾患」「糖尿病」のリスクを低下させることはよく知られておりエビデンスもある。
それは日本人を対象にした調査でも同じ結果が得られているが、日本人の食物繊維摂取量は世界的に見ても極めて少ない。
例えば心筋梗塞のリスク低減には24g(日)の食物繊維摂取が必要とされるが、18歳以上の日本人の食物繊維の平均摂取量は13.7gであり、大きな隔たりがある。
特に日本人の場合、穀類と野菜からの食物繊維摂取量が大幅に減少していることがわかっている。この辺りをどうやって食事で改善していくかは、機能性表示食品やサプリメントの啓蒙以上に重要ではないか、と内藤氏。
基本的に和食は健康食とされているが、世界的にはエビデンスのある地中海食の方が高い評価を得ている。和食が良いというならエビデンスを整えていく必要もある。
食物繊維、インフルエンザ感染を抑制
食物繊維は腸内のマイクロバイオームを変化させることで健康に良い影響を与えることもわかってきている。
例えば、2018年にマウスの試験で、食物繊維はインフルエンザ感染を抑制するというエビデンスもでている。地中海食が良いのもおそらくマイクロバイオームに影響を与えるため。
内藤氏が特に注目しているのが、食物繊維の中でも「高発酵食物繊維」とされるもの。これは腸内細菌が好んで食べる食物繊維で、高発酵食物繊維によりさまざまな短鎖脂肪酸が生成されることがわかってきている、という。
具体的にはグァーガム、小麦胚芽、難消化性でんぷん、水溶性大豆食物繊維などが高発酵食物繊維に分類される。
水溶性食物繊維(高発酵性食物繊維)を腸内細菌が食べて発酵させることで短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、酢酸など)が産生される。
それが脳へシグナルを送ることで、抗ストレス、認知機能改善、食欲改善などの効果が得られるという経路も解明されてきている。
食物繊維、「パラミロン」に注目
また、内藤氏は「パラミロン」という食物繊維の一種にも注目しているという。この成分は生体内に取り込まれても一切吸収されることなく糞便中に排出されていくが、私たちの生体に様々な健康効果を発揮することが数々の論文で発表されており、今盛んに研究が進められている。
これはおそらく腸にも足裏のように「ツボ」とでもいえるセンサーが存在し、これをパラミロンが刺激しているのではないか。
つまり、消化管とは消化・吸収の機能だけでなく、さまざまな科学的・物理的刺激を感受するセンサーとしての役割を担っているのではないか、と内藤氏。
食物繊維にも腸機能にもまだまだ解明されてないことが多くある。機能性表示食品の開発とともに、この辺りの研究も進めていくこと、また機能性表示食品の効果を検証するのに役立つウエアラブルデバイスなどの開発も望まれる、とまとめた。
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