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2024.2.29「将来の健康を見据えた栄養と食事」健康食育サミット2023

2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。

中村 丁次 先生

「健康で長生きしたい」というのは誰にも共通する願いであるが、日本は世界的に見ても長寿化が進んでおり、2007年生まれの子ども達の約50%が107歳まで生きるという研究調査を紹介。しかし日本人は昔から長寿だったわけではない。近代化が起こるまでの日本人の平均寿命は50〜60歳くらいで、多くの国民が栄養欠乏症や結核などさまざまな病に長く苦しめられてきた。つまり、日本人は国民一人一人の努力で後天的に健康長寿を勝ち取ったといえ、このことを誇って良いのではないか、と中村氏は話す。

腹八分目は長寿を約束するのか?

将来の健康を見据えた栄養・食事とは「一生健康で、長寿を保障してくれる栄養・食事」のことだ、と中村氏。それに見合う食事法として日本では以前から「腹八分目、医者いらず」という江戸時代の貝原益軒の言葉が知られ、控えめに食べることが健康の秘訣と考える人は少なくない。実際、2009年に米国より「カロリーを制限したアカゲザルは寿命の延伸が見られた」という報告があったが、2012年には「カロリー制限で健康改善効果は見られたが、生存率への影響はなかった」と異なる結論の発表がなされた。現時点では実験の前提となるアカゲザルの年齢の違いが結果の違いであるとされ、カロリー制限で健康や寿命延伸の効果があったのは20〜60代に相当するアカゲザルであったのに対し、胎児や成長期、および高齢者に該当するアカゲザルではカロリー制限が発育不全やフレイル、骨粗鬆症の原因となり健康を害する可能性が高いと結論づけられている、と紹介。

「最初の1000日の栄養」と給食による食育の充実

近年、世界では「最初の1000日の栄養」運動が注目され、胎児期〜2歳までの栄養の重要性が一生の健康を左右するのではないかと考えられるようになっている。特に受精時の母体の栄養状態も重要と考えられるが、現在日本の若い女性は他国の女性に比べて栄養状態が悪く、低体重児が生まれるリスクが高くなっている。受精卵は細胞分裂を繰り返し胎児は40数回の細胞分裂で約3兆の細胞をもつ新生児となる。この間の栄養は全て母体から供給され、この期間の栄養状態がその後の人生に大きな影響を与える。実際、出生時体重が2,270g以下、もしくは4,450g以上であると心臓病の死亡率が高くなることまでわかってきているという。誕生してからも乳児期、幼児期、小児期、若年期、さらに妊娠や出産を考えている・あるいは控えている女性など、それぞれのライフステージに応じた栄養指導が随時必要で、特に幼児期に食育を通じて生涯の栄養について考えることが望ましい、と中村氏。現在、日本には世界に誇れる「給食システム」がある。小学校では99%、中学校では91.5%で給食が実施されており、主食にご飯を提供する「米飯給食」の実施率は100%だと紹介。学校給食は、おいしさや栄養を補うだけではなく、農業・漁業・労働・調理・マナー・健康・精神・人間関係・食品衛生・環境・食文化など総合的に学ぶ場として、多くの学校が給食に力を入れているという。

これからの高齢者の在り方

WHO (世界保健機関)は「高齢化と健康」に関するワールド・レポートを2015年に発表。高齢者の未来を信じるべき、元気で自立できる高齢者を育むべき、と提言していると解説。これからは健康寿命を延伸するために、まずは「病気に至らないようにする」「病気の初期段階で自然治癒力により、健康状態に戻れるように」、そして「万一病気や障害に至っても、残された機能で健康的に生きる」ことが重要で、人生の全てのステージで、低栄養にも過栄養にもならないように心がけることこそ「将来の健康を見据えた栄養・食事」になるのではないかと話す。特に、健康問題が生じやすい中高年期にメタボ対策をはじめる人が多いが、メタボ対策はあくまで疾病予防で、そこで健康が保てたら、今度はフレイル対策に変えて介護予防や自立促進を意識的に行う必要がある。繰り返しになるが、ライフステージに応じた栄養や食事、運動習慣が大切だと強調した。 何よりこれからは一人一人の健康だけでなく、地球にやさしい食事を考えなければならない。環境負荷の高い食事をしている国としてオーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、カナダが上位に上がる一方で、日本は最下位から2番目と、人にも地球にも健康的な食事ができていると世界的に評価されているという。環境負荷が高い食事をしている国は肉の消費量が多いが、日本食は魚や植物タンパク質の消費量が多く、無理なく持続可能な日本型食事を維持できるのではないか、と中村氏。日本型食事を基本にし、すべてのライフステージに適切な過不足のない栄養・食事・ライフスタイルを考え実践することが「将来の自分」を意識した最新の栄養・食事法であるとまとめた。

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