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2023.12.4オイルサミット〜結局のところ機能性油脂はどう良いのか?摂るべき油と避けるべき油Wellness Tokyo 2023健康増進・未病対策に対する総合展

2024年2月9日(金)、オンラインとリアルのハイブリッド形式で、第28回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウムが開催された。ここではストレス応答の視点から食品成分の独自解析と研究を行っている兵庫県立大学 環境人間学部 教授村上明氏の講演を取り上げる。

麻布大学 生命・環境科学部教授/日本脂質栄養学会 理事長 守口徹

体のエネルギーになる3大栄養素とは「炭水化物」「タンパク質」「脂質」であるが、この中で脂質だけは他の2つとその「吸収」において大きな違いがある、と守口氏。炭水化物は摂取が体に対して過剰となった場合、それは脂質に変換され体内に蓄えられる。タンパク質は過剰なものは体外に排泄されるが、そもそも吸収の過程でアミノ酸やペプチドといった分子に変化し、摂取した栄養素がそれぞれ体内でどのように活用されるかは、必ずしも私たちが意図した通りにはならない。しかし「脂質」だけは「脂質」として体内に吸収され、脂質として蓄えられるか活用される。脂質は「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」と分類できるだけでなく、不飽和脂肪酸はさらに「多価不飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」に、さらに「多価不飽和脂肪酸」は「n-3系脂肪酸」「n-6系脂肪酸」と分類されるが、どの形態の脂質も、原則として脂質のまま体内に吸収される。これが他の2つの栄養素と大きな違いである、と説明。つまり、脂質は他の2つの栄養素とは異なり「食べる前に見て、選ぶ」ことができるし、最もコントロールしやすい栄養素だと言えると守口氏。脂質こそ食べる前に見て選び、戦略的に摂取すれば、脂質の持つ「機能」をそのまま有効利用できるはずだ。しかし、私たちが毎日摂取している食品の中に含まれる脂質は、そのうちの2割程度が「見える油」で、残りの8割は「見えない油」だと指摘。この2割とは実際調理に使っている油で、残りの8割は加工食品としてアイスクリームやパンなど「油」をほとんど感じさせないものにまで大量に含まれている。脂質はコントロールできる栄養素であるにもかかわらず、実際は2割の油に気をつけるしかない。しかしこの2割を「摂るべき油」にしていくことが、健康維持にはもちろん、次世代の健康にも繋がることを意識してほしいと守口氏はいう。

そもそも私たちの体で、脂質はエネルギー源として働くだけでなく、貯蔵、体温の放散防止、臓器の保護、ホルモンの構成、細胞膜、脂溶性ビタミンの吸収促進などの役割を果たし、脂質が体全体の15%ほどを占めている。脂質の中でも「飽和脂肪酸」は体内で合成できるだけでなく、肉や乳製品、卵黄、チョコレート、パーム油などに多く含まれるため一般的には過剰摂取になりがちだ。またLDLコレステロールを増加させてしまうのも飽和脂肪酸である。一方、不飽和脂肪酸は「多価不飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」に分類される。一価不飽和脂肪酸(オメガ9)の代表的なものはオリーブオイルやキャノーラ油(菜種油)、アーモンドオイルであるが、これらのオイルに多く含まれるオレイン酸も体内で合成が可能だ。一方、不飽和脂肪酸の中でも「多価不飽和脂肪酸」とされる「n-3系脂肪酸」「n-6系脂肪酸」は体内で合成することができないので「必須脂肪酸」と呼ばれ、食事から意識的に摂取すべき油となる。「n-6系脂肪酸」には米や小麦、肉類・大豆などに多く含まれるリノール酸やアラキドン酸、γリノレン酸などがある。摂りすぎは高血圧やアレルギーの原因になるため注意が必要であるが、特にリノール酸には血中コレステロールを減らす働きや、血圧や免疫の調整にも重要だ。「n-3系脂肪酸」にはαリノレン酸、EPA、DHAなどがあり、αリノレン酸を多く含む油として有名なものが「アマニ油」や「紫蘇油」「エゴマ油」である。また「EPA」「DHA」は魚介類に多く含まれることがよく知られている。これらの脂質には血圧低下作用や中性脂肪低下作用、脳の活性などさまざまな優れた機能性が報告されていて、まさに「摂るべき脂質」の代表といえよう。

この「摂るべき脂質」、つまり「必須脂肪酸」である「n-3系脂肪酸(オメガ3)」「n-6系脂肪酸(オメガ6)」については、2000年〜2010年頃まで日本人の食事摂取基準では「1:4」の比率で摂取すると良いとされていたが、近年はそれぞれ摂取目安量が定められ、不足しないように摂取することの重要性が訴えられるように変わった。オメガ3とオメガ6が「1:4」の比率になるようにすべきとされる理由は、この2つの脂質は競合する特徴を持っていて、片方が多すぎるともう一方の吸収が抑制されてしまうからだ。ただし「1:4」になるような食事にしたいのであれば、1日1食〜2食は魚食を取り入れる必要があり、食卓から魚の割合が激減している日本人にとってはなかなか難しい、と指摘。

マウスの試験では、オメガ3を欠乏させたマウスと必要量を摂取させたマウスでは明らかに健康状態に差が出ることが報告されている。例えば、オメガ3欠乏マウスにおいて幼少期では集中力の欠如、学習脳の低下傾向が見られ、青年期にはアレルギー症状が見られるようになる。さらに壮年期では不妊や、育児放棄、ドライアイやドライスキンが加速し、老年期ではサルコペニアや認知症傾向が見られるようになるという。つまりオメガ3の欠乏は全年代において何らかの健康損失に繋がり、しかもそれが生殖機能にままで関わってくる可能性が高いとなると、次世代の健康問題にも影響があることになる。

私たちが日頃摂取している脂質の8割は加工食品等に含まれる「見えない油」であるため、ここをコントロールするのは現実的には難しい。しかし調理に使う油、ドレッシングに使う油を意識的に「n-3系」や「n-6系」を選び、そして何より少なくとも1日に1食程度は魚介類を意識的に摂取することで最も摂るべき油の「n-3系脂肪酸(オメガ3)」の摂取量を増やすことは可能だ。まずは摂取する油がどんな油であるのか、表示を確認することからはじめてほしいとまとめた。

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