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2023.9.19キノコ発酵大豆を利用した機能性食品素材の開発ウエルネスフードジャパン2023

2023年8月2日(水)〜4日(金)、東京ビッグサイトにて「ウエルネスフードジャパン2023」が開催された。今回は各国から約750社が参加し、アフターコロナにおける業界の最新トレンドや機能性成分・食品開発の最前線について情報交換が行われた。ここでは開催されたセミナーから、北見工業大学 佐藤 利次の「キノコ発酵大豆を利用した機能性食品素材の開発」を取り上げる。

北見工業大学 教授 佐藤 利次

キノコ(食用担子菌)は、もともと健康食品要素が強く、医薬品の原料としても多様に利用されている。ここにやはり機能性が報告されている各種農産物を組み合わせることで新たな機能性成分ができないかを模索するところから「キノコ発酵大豆」に至ったと佐藤氏は話す。研究当初は各種農産物である玉ネギの皮、米糠、大麦、ふすま、ニンニクの皮などを、さまざまな種類のキノコと掛け合わせ発酵させることで検討を重ねたが「キノコと豆類」、特にキノコはヒラタケ類と大豆を組み合わせることで大豆のポリフェノール類や抗酸化活性が著しく増加したことから、現在は大豆に絞って研究を行なっているという。そもそもキノコには細胞壁にレンチナンという多糖類が豊富に含まれており、これが抗がん剤として利用されている。また大豆にもさまざまな機能性が報告されているが、キノコ発酵に伴って、ポリフェノール類が酸化分解・重合活性が高まるという。大豆に含まれる機能性成分として注目されているものにイソフラボンがあるが、イソフラボンは配糖体で存在すると吸収率が悪く、糖が切れた「アグリコン型」で摂取するのがのぞましい。特に機能性を発揮する上で必要となる「エストロゲン受容体への結合」はアグリコン型によって可能となり、この結合があってこそ更年期症状や骨粗鬆症予防への効果が期待できる。そこで、佐藤氏らはキノコ菌糸を使って大豆を発酵させることで「イソフラボン配糖体がアグリコン型に代謝されないか?」「新しいポリフェノールが産生されないか?」「大豆の抗酸化作用が亢進しないか?」について解析を行ったという。

キノコ菌糸で発酵させた大豆イソフラボンはだいたい10日前後で90%がアグリコン型に変わりはじめるという。さらに50日発酵させるとエクオール様の物質が産出されたという。腸内細菌によってしか作られないと考えられてきたエクオールがキノコ発酵によって産出できるのではないかと期待したが、その物質を分析したところ、残念ながらエクオールとは異なる未知物質であることが確認された。しかしこの未知の物質にも何らかの機能性が期待でき、これから研究解析を行う予定だと佐藤氏。また、キノコ菌糸で発酵させると大豆からポリフェノール量が徐々に上昇し、40〜50日でその量は4〜5倍まで増えピークに達するという。キノコの中でもタモギタケに多く含まれるエゴチオイネンという物質は、アミノ酸の一種で、高い抗酸化作用を持ち、近年はうつ病や認知症、抗老化に期待される成分として知られるが、キノコ発酵大豆は発酵させるとエルゴチオネインの量が増え、30日程度でピークに達することもわかったという。キノコ発酵させた大豆はイソフラボンがアグリコン型に変換され吸収率が上がることで機能性が高まるだけでなく、キノコ菌糸に由来する成分「エルゴチオネイン」も生成される。他にもキノコ発酵大豆を解析すると遊離アミノ酸や旨み成分であるグルタミン酸が20〜40倍程度は増加していることや、ビタミンDの前駆体であるエルゴステロールの増加などもみられたという。つまりキノコ発酵大豆は機能性(特に抗酸化性)、そして栄養価がそのままの大豆より高くなるということだ。

大豆をキノコ菌糸(タモギタケ)で発酵させることは、機能性食品素材として非常に有効な可能性があると佐藤氏。実際マウスの試験では緑茶成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)よりもアレルギー抑制効果において高い結果を示し、また骨粗鬆症モデルマウスに対しても良い効果を示していると話した。今後、さらなる成分分析や機能性の評価、またエクオール様の新規物質の生理機能解析などが必要だ。とはいえ未発酵の大豆以上に骨密度の上昇が見られるなど優位性が見られる発酵大豆は、中高齢者層により貢献できる食品素材として期待できるのではないかと話した。

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