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2024.2.20ホルミシスの概念から見えてくるポリフェノールの新しい作用機構第28回チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム

2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。

村上 明(兵庫県立大学 環境人間学部教授)

ポリフェノールがなぜ人の健康に良い働きをするのか。ポリフェノールには多様な生理機能性があり作用機序に関する知見も蓄積されているが、まだまだ不明点も多く解明されていない部分も多いのが現状だ、と村上氏。特にポリフェノールの抗酸化(ラジカル消去)機能については異論がないと思うが、これですべてが説明できるわけではないのが現状だ。現在は、村上氏はもちろんさまざまな研究グループでポリフェノールの標的分子や間接的作用などの研究も進められている。特にポリフェノールについて最近よく知られるようになっているのが、抗酸化物質は活性酸素を発生する酸化促進物質にもなる一面があるということだ。つまりポリフェノールは抗酸化作用のほかに、活性酸素を発生させることで細胞の抗酸化防御系を活性させ、間接的に抗酸化作用を発揮している可能性が示唆されていて、ここで「ホルミシス(少しのストレスはメリットが獲得できる)」がキーワードになってくる、と村上氏は説明。

ポリフェノールはそもそも血中への吸収効率が極めて低い物質で科学的にも不安定だ。しかも体内ではほとんど吸収されず、吸収されても代謝経路を通ってすぐに体外に排出されてしまう。それなのになぜさまざまな臓器で機能性を示すのかについてわかっていない部分が多い。ポリフェノールはヒトにとっては異物であることに間違いない。移動のできない植物はその場でさまざまな環境ストレスに適応するために植物の中で忌避の目的で合成される物質(抗酸化物質/ポリフェノール)が、なぜ人間にとって有効に働くのか。ポリフェノールが作られるメカニズムもそもそもホルミシス、つまり適度な環境ストレスによって強化される生体防御系が関係している。このホルミシスの観点からポリフェノールの研究を進めると、例えばポリフェノールの脂肪燃焼効果(ケルセチンでの試験)については「ポリフェノールは動物には栄養素ではなく異物であるがゆえにストレス源となる。そして、このストレスに適応するためにエネルギーが消費されるが、減少したエネルギーを補うために脂肪分解が起こる」という知見が挙げられる、と解説。つまり、ポリフェノール=健康に良い物質・脂肪燃焼効果のある物質、ではなく、ポリフェノールは異物だからこそ機能性を示すという理解が可能になってくるのではないか、と解説。ポリフェノールの脂肪燃焼作用については、運動時の物理的なストレスによる脂肪分解機構に類似しているのではないか、と説明した。

また、村上氏らのグループは、化学的に非常に不安定なポリフェノールの吸収について、消化管内でextracellular vesicles (EV)に内包された後、血中を循環するという新しい吸収機構の可能性も見出したと説明。EVとは細胞から分泌される非常に小さい細胞で、他の細胞にシグナルを伝える役割を果たすものだという。放出細胞由来のmiRNAやタンパク質などもEVに含まれる。ヒトの大腸がん細胞の培養細胞にケルセチンを取り込み培養するとEVが分泌される。回収したEVを解析するとそのEVにはケルセチンが含まれていることが確認され、このEVに機能性があるのかを調べたところ、細胞内の取り込み効率が非常に高いことを示したと説明。しかもEVに内包されたケルセチンは通常のケルセチンよりも低濃度域で抗炎症活性を示した、と解説した。

さらに近年は母乳中のポリフェノールにも注目が集まっているという。ヒトの母乳にはポリフェノールも含まれていることがわかっているが、マウスも同様で、村上氏らの研究グループではマウスの母乳を飲んだ仔マウスにも母乳を介してポリフェノールが移行し、仔マウスの体内でもポリフェノールが見つかることを特定したと言う。仔マウスや人間の赤ちゃんにおいて移行したポリフェノールが体内でどのような働きをしているのか解明されていない部分が多いが、トレーニングの役割を果たしている可能性があるのではないか、と村上氏は話す。子供は野菜をあまり好まないが、これは子どもが野菜や果物に含まれる苦味や青味などポリフェノール成分を異物と敏感に察知して忌避するからではないかと指摘。しかし少しずつ食べ慣らし、トレーニングすることでだんだん食べられるようになってきたり、好きになったりする。ポリフェノールにだんだん慣れてきた結果、健康的な食習慣が獲得できるようになるのではないかと指摘。現在、村上氏は母乳にポリフェノールが含まれているのも、私たちが少しずつポリフェノールに慣れるため、つまりファイトケミカルトレーニングの一種なのではいか、という仮説を立てて論文で提唱していると説明。 私たちはお酒や運動や日光浴などもトレーニングによって少しずつ耐性を獲得していくが、ポリフェノール摂取についても知らない間にトレーニングをしていて、さまざまな食品を食べられるようになっているのではないか、と新たな知見を発表した。

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