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2023.3.6緑茶飲用と健康 疫学研究からのエビデンスの現状第25回健康栄養シンポジウム基調講演

2023年2月18日(土)、オンラインにて「第25回健康栄養シンポジウム基調講演」が開催された。緑茶研究最前線というテーマで新たしい時代に備えた緑茶の活用方法について6人の専門家から緑茶の最前線が発表された。ここでは国立健康・栄養研究所で理事を務める津金昌一郎氏の基調講演を取り上げる。

国立健康・栄養研究所 理事 津金 昌一郎

緑茶の健康効果については一般的にもよく知られるようになっているが、それらが十分なエビデンスを伴っているかといえば、実はまだまだ研究の余地があるというのが現状だ、と津金氏。そもそも緑茶に限らず、食品や食材の機能性成分が人体に与える健康効果を検証することは極めて難しい。実際、最新のランダム化比較試験では、ビタミンAやビタミンCなどの抗酸化成分はがんを予防しないことや、食物繊維の補給は大腸腺腫を予防しないこと、脂質摂取量の減少はがんを予防しないことなどが報告されていて、私たちが日々触れている健康情報が覆されることはしばしばある。そもそも病気の原因は一つではなく、病気になる前の生活習慣や食生活、個人個人の個体差などを同じ条件に揃えることができない部分が多くある。例えば、大規模コホート研究で日本茶を摂取している人についての研究は複数行われているが、それが煎茶なのか、番茶や玄米茶なのか、ペットボトルなのか、まで追求された研究もほとんどないという。

緑茶飲用と胃がん罹患リスクについては1990年〜1994年にかけて行われた40〜69歳までの男女7万人を対象にした「緑茶飲用習慣調査」があり、これによれば、1日5杯以上の緑茶を飲んでいる人において胃がんリスクが優位に低いことが報告されている。また前立腺がんや循環器疾患罹患のリスクに関する調査も行われているが、これらについては明確な有意差は示されていない。他にも緑茶に関するコホート研究が多くあるが、現状をまとめると、緑茶の摂取については「あらゆるがん」については「データ不十分」、「胃がん」については「女性においてリスク低減の可能性があり」、「内臓脂肪の減少」についても「可能性あり」、「乳がん」については「データ不十分」、「前立腺がん」「子宮頸がん」「子宮内膜がん」「卵巣がん」についても「データ不十分」といった状態で、むしろ珈琲の「肝臓がん」に対するリスク低減作用やなど、緑茶よりエビデンスが高いとされる飲料もあることを解説。とはいえ、緑茶だけがエビデンスがあやふやといったわけではなく「野菜や果物」「大豆製品」「魚介類」など他にも健康に良いとされる多くの食材や機能性成分において「絶対的に疾病リスクを低下させる」と評価されているものはなく、ほとんどが「可能性あり」〜「データ不十分」の状態であることを説明した。

最新の研究では、過体重や肥満と関係あるとされていた「欧米型の食事摂取」や「ファーストフードの摂取」についても、これらより「砂糖を添加した飲料の摂取」が最もリスクを上げるものと考えられるようになっているという。一方、過体重や肥満のリスクを下げるものとして知られていた「地中海食」や「食物繊維を含む食品摂取」があるが、現時点で最も効果があるのは「ウォーキング」と考えられるようになっている、と最新の研究データを解説。特に過体重や肥満のリスクを上げるものとして、「砂糖を添加した飲料の摂取」だけでなく、「スクリーンを見る時間の長さ」の方が最新の研究では問題視されつつあると説明した。また緑茶についてはなぜ健康に良いのか、そのメカニズムについてもまだ研究の余地があり、現時点では緑茶ポリフェノール(カテキン)やカフェインといった成分が何らかの影響を及ぼし、体にプラスに働いていることは間違いないが、それ以上のこと、特に体内での代謝経路などについてはわかっていない部分も多いという。

緑茶を飲む頻度や緑茶に含まれる機能性成分以上に最近注目されているのが、「飲用習慣」であると津金氏。日本人は緑茶を「砂糖を加えずに」「温かい状態」で飲む人が多く、日本人に肥満者が少ないのは「加糖入り飲料」を飲む機会が少ないからではないか、と注目されていると紹介。特に食事中に砂糖が加えられた飲料を飲む習慣があると、さまざまな疾病リスクが上がるのではないか、という研究も始まっていると紹介。最近は海外だけでなく国内でも砂糖入り飲料が増え、お茶であっても加糖されているものが登場しているので、これまでの飲用習慣が変わることで、緑茶をよく飲む日本人であっても肥満者が増えるといったことが起こるかもしれない、と示唆。現在の国内の疫学研究では、お茶そのもの効果よりもお茶を飲んでいる人の多くが健康な高齢者・女性・果物や野菜の摂取や大豆製品の摂取が多い、という背景があり、緑茶を飲んでいる人の背景とそれらが健康に与える影響を補正することは難しい。そのため「緑茶=健康効果が高い」と因果関係を証明できるほどのエビデンスが存在していないというのが現状だ。しかし「緑茶を飲んでリスクが上がる病気がない」という見方もできるので、ここについてはさらに研究を進めていくと新しいデータが出てくるかもしれない、と話した。

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