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2023.1.2麹菌の特性と麹化による食品原料の高機能化第2回 国際発酵・醸造食品産業展

2022年11月29日(火)〜12月1日(木)、東京ビッグサイトにて発酵・醸造食品大国の日本の食文化拡大のため、世界中の発酵・醸造関連技術やサービスが一堂に集結する展示会が開催された。近年は発酵・醸造の健康効果やそのエビデンスが数多く発表され特にコロナ禍で自然免疫向上が求められる中で、腸内環境の改善による免疫力の向上やアンチエイジング効果などの研究が活発に進められている。ここでは出展社セミナーから発酵・醸造に関する最新セミナーを取り上げる。

株式会社ビオック 村井裕一郎

発酵食品が世界的にブームとなっているが、日本の発酵食品の「原点」とも言える「種麹」についてはあまり知られていないのではないか。日本の発酵食品には味噌・醤油・清酒・焼酎などがあり、これらは醸造食品と呼ばれるが、これらの食品の製造には必ず「麹」が使われる。日本の醸造メーカーのほとんどは種麹を購入し、独自の醸造食品を作っているという。

この麹を作る時に、文字通り「種」として蒸した原料に加えられるのが「種麹」である。種麹は通常米を原料に麹菌を培養し、胞子を十分に着生させた後、乾燥したものであることが多いという。種麹には実は豊富な種類があり、通常は用途別、つまり「清酒用」「味噌用」「醤油用」などと分類して作られる。麹製造の歴史は奈良時代にまで遡り、その時代の書物にも「カビを使って酒を作った」という記述が残されており、おそらくこれこそ麹のことと考えて良いという。さらに鎌倉時代から室町時代にかけては、麹がなければ酒が作れないことがわかり、室町時代の後期に麹は専売品になったという歴史がある。そして室町時代後期になり、麹に木灰を混ぜて培養すると麹作りに失敗が少ないことが発見され、麹の安定的な生産が可能になった、麹の歴史を解説。ちなみに木灰を使って麹を作る手法は、細菌や麹菌以外のカビの生育を抑制し、麹菌の胞子の耐久性を高める効果があることが近年の科学的研究によっても解明されているという。さらに現代になり微生物そのものを工業的に生産できる麹技術が誕生し、数少ない種麹製造業者は多くの醸造メーカーの仕入れ先となっているという。

ちなみに、日本以外の国にも発酵食品文化は多く存在している。しかし日本の麹はより「工業的」であることが大きな特徴だという。例えば、フランスのワインも発酵食品の一つであるが、ワインは「品質のブレがあるのが当たり前」という前提で作られ販売されている。ワインの製造年によって「美味しい」「イマイチ」などの評価がなされ、価格も変わってしまう。非常に農業的で、品質のブレがあって当たり前という発酵食品の方が世界に多くあるという。一方、日本の麹文化は「微生物工業」の発展によって微生物だけでなく原料なども固定管理されることで、品質のばらつきが起こりにくく、例えば味噌や清酒の味や風味の違いは醸造家や醸造メーカーの技術力によって個性となって生み出される。こでは、日本の発酵食品に大きな影響を与えている背景だ、と解説。

しかも、面白いことに種麹は現時点で、食品にも食品添加物にも分類されておらず、法律でのさまざまな規制も行われていないという特徴があるという。また衛生基準や賞味期限は各メーカーが独自に作っているケースがほとんどだという。安全性については「我が国においては数百年にわたり食品に用いられている」という一点で、安全な微生物として認められているが、近年になり麹菌はカビ毒のアフラトキシンをいかなる環境下でも生産しないことが証明され、麹菌の安全性が世界中で知られるようになったという。

これまでは、醸造食品の「種」としての役割を担ってきた麹だが、「塩麹」や「醤油麹」の登場とブームにより、風向きが変わってきたという。とはいえ「塩麹」や「醤油麹」は麹製造のメーカーにとっては「麹入り調味料」であり、本来の麹の定義「蒸した米や大豆、むぎなどに麹菌を付着させ培養したもの」からは外れていると指摘。とはいえ麹調味料の登場で、麹の調味料としての役割や、美味しさを追求した食材としての役割、機能性素材として注目が集まっていると解説。そもそも麹には酵素が豊富に含まれている。タンパク質分解酵素のプロテアーゼや、澱粉の分解酵素であるアミラーゼなどだ。これらはうまみや甘みのもとでもあり、この酵素の働きによって食材の美味しさがさらに引き出される。つまりあらゆる食材を「麹加工」をすることで、大量の酵素が生成され、素材の持つポテンシャルが最大限に引き出され、さまざまな付加価値や新たな特徴を与えることが可能になるのではないか、と話した。

直近の事例の一つとして「キヌア黒麹」を紹介。真っ黒で見た目はほぼキャビアだ。麹には甘みの印象が強いが、黒麹は酸味と旨味が強いため、キヌア黒麹は肉類に乗せるソースとしてぴったりだと解説。すでに健康食品として人気の高い雑穀の一種であるキヌアと黒麹の相乗効果が驚くほど高く、味わいと見た目で差別化につながると紹介した。もう一つ「コーヒー豆麹」も紹介。麹菌とコーヒー豆の組み合わせは、砂糖を加えなくても自然な甘みが楽しめるブラックコーヒーに仕上がり、麹との組み合わせで新たなるフレーバーコーヒーを提案することができるのではないか、とした。しかも麹と組み合わせることで今までは廃棄されたローグレードのコーヒー豆の利用などにも活かせそうだと新たな可能性も示唆。

いずれにせよ麹には機能性の付加による健康増進効果、新たな食文化の提案、腸活や菌活の啓蒙、カロリークライシスやタンパク質クライシスなどへの解決など、無限の可能性があり、すでに世界でも注目されているという。日本でも麹の新しい食文化の発信や麹ムーブメントが起こるよう、多くの関連企業と協力し合いたいと話した。

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