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2023.1.30新世代の機能性食品素材開発への試み第2回 国際発酵・醸造食品産業展

2022年11月29日(火)〜12月1日(木)、東京ビッグサイトにて発酵・醸造食品大国の日本の食文化拡大のため、世界中の発酵・醸造関連技術やサービスが一堂に集結する展示会が開催された。近年は発酵・醸造の健康効果やそのエビデンスが数多く発表され特にコロナ禍で自然免疫向上が求められる中で、腸内環境の改善による免疫力の向上やアンチエイジング効果などの研究が活発に進められている。ここでは出展社セミナーから発酵・醸造に関する最新セミナーを取り上げる。

愛知学院大学 心身科学部特任教授 人間総合科学大学特任教授 大澤俊彦

株式会社アイメックRD 営業部マネージャー 加山博邦


先進国はどこも高齢化を迎えているが、高齢になってかかりやすい病気、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、白内障、皮膚硬化、糖尿病合併症、骨粗鬆症、動脈硬化、がんなどは老年病と考えられるようになっている、と大澤氏。年相応に老化することは誰もが避けられないが、体の健康を保ちながら年齢を重ねていくことが理想で、そのために食事や食品の介入は不可欠だ。そのような背景がある中でこれまで大澤氏らが牽引してきた「食の機能性研究」は日本が世界を先駆けており、機能性表示食品についても世界から注目を浴びているので、ますます自信を持ってこの分野の研究を次世代の関係者たちにも続けていって欲しいと話す。

そして今、国内でも再び注目が寄せられているのが「発酵」である、と大澤氏。発酵食品には大きく4つのメリットがある。「1、抗酸化性のアップ」「2、吸収率の改善」「3、嗜好性の改善(味覚、旨味、脱色など)」「4、香味・苦味の向上」だ。八丁味噌などは有名かつ代表的な発酵食品であり、一口口にするだけで発酵の4つのメリットを体感できるが、実はこれまで機能性成分として優れていると評価されてきた成分も「発酵技術」を使うことでさらに新たな機能性が生まれたり、有用性が高まることが示唆されているという。例えば、レモン果皮はレモン果肉より抗酸化成分が豊富に含まれていることがわかっているが、味の面からも、また輸入品などは安全面などからも口に運ばれることはほとんどない。ところがこのレモン果皮を30℃くらいの温度で発酵させ「発酵レモン果皮抽出物」を作ったところ、新規ポリフェノールが生成されるだけでなくより高い抗酸化作用示されるなど、新たなエビデンスが登場していると解説。現在はこの発酵レモン果皮ポリフェノールの摂取でメタボリックシンドロームなどの生活習慣病のリスク低減が期待されるところまで研究が進んでいるという。他にも発酵大豆イソフラボン、発酵ウコン、発酵アスタキサンチンなど、発酵技術によってあらたなこれまで以上に付加価値のある機能性成分が誕生していることを紹介。特に大澤氏が注目し25年以上に亘り研究を重ねてきたのが「カカオポリフェノール」だ。カカオポリフェノールはバナナの葉に包んで発酵する方法や、木箱に入れて発酵させる方法などによって作られるが、発酵によってカカオ豆はカカオポリフェノールになり、抗酸化・抗炎症・抗アレルギー・発がん抑制・胃粘膜障害抑制・LDL酸化抑制など、さまざまな機能があること報告されている。さらにカカオポリフェノールチョコレートを摂取すると精神的健康度がアップする(健康調査アンケートSF36による)ことも示唆され、これが脳由来神経栄養因子BDNFに影響を与えているのではないかと推測されていることを説明。BDNFとは海馬に高濃度に存在するニューロンの酸性を促進させる脳の重要な栄養分で、うつ病やアルツハイマー型認知症などでは脳内のBDNFが減少していることがわかっている。BDNFは運動によって上昇することがわかっているが、食品で増やせるかどうかについては不明点が多く、カカオポリフェノールの摂取でBDNFは有意に上昇するが、そのメカニズムなど、まだまだ研究すべき点が多いと説明した。カカオオリフェノールは苦味が強く健康効果が期待されていても原料として採用してくれるメーカーが少なかったが、今年はゴディバなど大手チョコレートメーカーやネスレ社などでもカカオポリフェノールを取り入れるようになっており、食べ物にはトレンドもあるので、こういった研究を根気よく続け商品開発に役立てることが大事だ、とした。ちなみにBDNFで言えば、近年発酵食品であるカマンベールチーズの白カビ部分にもBDNF濃度を上げる働きがあることが確認されていて、やはり発酵食品の持つ機能性研究はまだまだやりがいがある分野ではないかと話した。

発酵チョコレート、発酵カカオ、発酵レモンなどヒト臨床試験を行うと同時に、ストレスや免疫、睡眠、認知機能などに与える効果を測定するためのバイオマーカーなどを同時に開発し設定することも重要であるが、それらが障害となって研究が頓挫してしまうことは少なくないという。しかし小規模であればヒト臨床試験は可能であるし、機能性表示の取得も当然狙える。今は、臨床試験だけを請けおってくれる企業や、届出書類の作成サポートやSRの準備をサポートしてくれる企業などもある。株式会社アイメックRDももちろんそのサポートが可能だ。色々な力を集結させ、食品機能研究を続けることで新たな商品開発や健康産業の発展に生かして欲しいと、大澤氏、加山氏ともに話を締めくくった。

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