【 2005/7 】

血栓溶解酵素のバチロペプチダーゼ F、血栓溶解と血栓形成阻害作用

日本で一頃、エコノミークラス症候群という症状がマスコミで取り上げられ、 飛行機での突然死が問題視された。狭い空間に押し込まれた状態で 長時間居ると血流が阻害され、血液粘度が高まり、血栓が生じやすくなるという。

対策としては、体をできるだけ動かし、血行を良くすることであるが、日頃からの 「食」管理で血栓形成を防止し、血流をコントロールすることも可能だ。

血栓予防の代表的な食材としては「納豆」が挙げられる。納豆には血栓溶解酵素である ナットウキナーゼが多く含まれ、薬剤の血栓溶解剤にも匹敵する効果と持続作用があることが 須見洋行教授(倉敷芸術科学大生命科学科)の研究で判明している。

さらに、最近では、ナットウキナーゼには数種類の酵素が存在するが、セリンプロテアーゼの ひとつ、バチロペプチダーゼ Fに血栓溶解だけでなく、血栓形成を阻害する作用がある ことも明らかになり、バチロペプチダーゼを多く含む「NKCP(精製ナットウ菌培養物)」 の血栓防止作用についても注目が集まっている。

2時間座ったままだと血液の粘性が上がり、エコノミークラス症候群の兆候

先頃、JAFRAで獨協医科大学法医学教室の一杉正仁助教授にエコノミークラス症候群に関する インタビューをいただいた。それによると、エコノミークラス症候群は飛行機の中だけのことではなく、 日常でも、同じ姿勢を保ったまま長時間いると発症しやすいという。

一杉氏によると、昔から、そうした症状は多くあったが、心不全による突然死といったことで片づけられていた 。しかし、近年、医学の進歩により、CTやMRによる血管造影でエコノミークラス症候群が 肺動脈血栓塞栓症であることがわかったという。

一杉氏らの実験で、室温が22℃前後、湿度が40-50%の一般のオフィスの環境に、若い人を2時間 座らせ、手足の先の血管から血液をとり、座る前後の血液の性状を調べたところ、足のほうからとった血液は粘性がすごく上がっているのがわ かったという。そのため、日頃から、血を固まりにくくする生活習慣、食生活や運動が大切であるという。

最近のエコノミークラス症候群に関連する研究報告については、
Clinical and Applied Thrombosis/Hemostasis'05/7月号に掲載されている。
ビタミンEの50倍、ビタミンCの20倍といわれるほど高い抗酸化力 をもつフランス海岸松の樹皮の抽出物のピクノジェノールがエコノミークラス症候群に有用であるという。

記事によると、被験者169人を2グループに分け、プラシーボかピクノジェノールのどちらかを与えたところ、飛行前の計測では、両グループとも 足首の太さが同じであったが、飛行後は、ピクノジェノールグループのほうがプラシーボグループよりはれが少ないことが分かったという。

ピクノジェノールについては、これまでの研究で、凝血を抑制し、血管系を健全に保つ作用があることが知られている。 アリゾナ大学の研究で、ピクノジェノールの摂取20分後に喫煙者の凝血が正常に戻ったとの報告もある。


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