【 2015/9 】

クロミウム、血糖値管理に有用

JAFRAインタビューで、日本綜合医学会会長の渡邊昌氏に玄米の効用についてお話しを伺った。渡邊氏は、1992年に国立がんセンターで疫学部長の職にあった頃、糖尿病になったという。

がんは専門だが、糖尿病については門外漢で、どうしたものかと思った。そこで、玄米菜食中心の食事に切り替え、運動を行い、糖尿病に挑戦したという。

肉を魚に、野菜を多めに、小豆を混ぜて炊いた玄米を主食にし、納豆にワカメやきのこ類の具だくさんの味噌汁、いわゆる「一汁三菜」の和食にした。その結果、体重は78kgから60kgになり、検査値は全て正常になったということだ。

玄米食による糖尿病改善が功を奏したが、玄米は植物繊維が豊富で血糖値の上昇を緩慢にする。また、微量元素のクロミウム(クロム)も含まれ、血糖値をコントロールすることが知られている。糖尿病の治療食としては最適なものといえる。

クロミウムは鉄、亜鉛、セレニウム、銅などと同様、必須ミネラルの一つで、香辛料、海草、玄米などに微量に含まれる。

クロミウムの血糖値を調整する働きは、1950年代から動物を使った研究で確認されている。人への影響は1970年代に入ってから次第に明らかになる。口から栄養を摂れない入院患者に、炭水化物やタンパク質、脂肪、ビタミン・ミネラルを特別に配合した液を静脈から直接体内に注入する非経口栄養法(TPN)を施すが、これを数ヶ月間続けていると患者に糖尿病に似た高い血糖値が見られるようになった。

こうした患者に、インスリン治療を受けさせたが、さほど効果が上がらなかった。インスリン治療の効果が出ないのはクロミウム欠乏によるものと考えられたことから、50マイクログラム(50mcg)のクロミウムを患者に注入。その結果、患者の血糖値は正常に戻ったという。

1995年のAmerican College of Nutritionで発表された研究でも、妊娠糖尿病患者にクロミウムピコリネートを1mg以下を投与したところ、血糖値がかなり改善されたと報告している。

また、1996年American Diabetes Association会合で発表された研究ではタイプI糖尿病患者へのクロミウム補給を調べている。 USDAと中国北京の研究者グループが共同で行った研究で、糖尿病患者180人を、@偽薬投与Aクロミウムピコリネート100mcgを1日2回、Bクロミウムピコリネート500mcgを1日2回――の3グループに分け2ヶ月と4ヶ月に検査した。

この結果、1日1000mcgを摂取したグループでは血糖値がほぼ正常値に戻った(6.6%)。その他インスリン濃度、コレステロール値も低下したが、高い投与量ほど有効性が顕著に表れたという。

クロミウムの血糖値に関する最近の研究報告では、クロミウムピコリネートが血糖値管理に有用と、Journal of Trace Elements in Medicine and Biology誌2015.9月号が報じている。

Federal University of Rio Grande do Norte研究チームが、血糖管理が難しい2型糖尿病患者71人を、クロミウムピコリネート投与群(600マイクログラム/日)か、プラセボ投与群のどちらかに割りつけた。

4カ月後、クロミウムピコリネート群はプラセボ群に比べ、食後のグルコース濃度がクロミウムピコリネート群は有意に低下したことが分かったという。

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