【 2006/1 】

ガン克服には栄養療法の併用などホリスティック(全体的)な療法が欠かせない

2005年11月13日、秋葉原コンベンションホールで、第1回日本腫瘍学会学術集会が開催された。 この中で、オーストリア腫瘍学会会長のヴォルフガング・ケストラー教授が、海外の統合医療の進捗状況について報告した。 教授によると、西洋医療と代替医療(西洋医療以外の医療)のコラボレーションによる統合医療はもはや世界的な潮流で、 医療従事者が、それぞれの得意分野で医療技術を駆使し、患者に最良の医療を提供するという体勢作りが進みつつあるといわれる。

西洋医療は、外科手術や薬剤による局所のピンポイント治療で病巣を除去し、患者を快方へと向かわせる。一方、代替医療は、病気治療をホリスティック(全体)な観点からとらえ、肉体や精神面の歪みを修正することで治癒をもたらそうとする。

主な代替医療としては、漢方、カイロプラクティック、鍼灸、気功、ヨガ、アロマテラピー、ハーブ療法、栄養療法、心理療法などさまざまな伝統伝承医療が ある。代替医療は、日頃からの養生を重視することから、予防医学の側面が強い。一方、外科手術や感染症といった緊急を要する治療においては、西洋医療がその力を発揮する。

では、ガン治療についてはどうか------。現在では、医療従事者の間で、西洋医療と代替医療を併用した治療が必要であるとの認識が高まりつつある。 ケストラー教授も、講演の中で「ガンを克服するには三大療法だけでなく、全人的な治療が必要」と述べ、従来の薬剤、放射線、切除手術によるガン治療では根治が難しいことを指摘している。


また、ケストラー教授は、日頃のガン予防の心がけについて、タバコや体に良くない食品を避けること、重金属の解毒、栄養療法や精神治療などを挙げている。栄養療法については、セレン(セレニウム)の重金属の解毒や抗酸化作用などの有用性について報告している。

セレンは、ブロッコリー、マッシュルーム、キャベツ、セロリ、キュウリ、 オニオン、ガーリックなどに多く含まれる微量元素で、土壌のセレン含有率が少ない 地域ではがんの罹患率が高いことが報告されている。

米国で20州以上調査したところ、セレン摂取の低い州では白血病、結腸がん、直腸 がん、すい臓がん、乳がん、前立腺がんなどの罹患率が高いことも報告されている。米国の「卒中地帯」と呼ばれるジョージアやカロライナ州の土壌はセレニウム濃度が低いといわれる。

また、心臓病や循環器系疾患に対する有効性を調べた研究では、セレン摂取が少なくなるほど心血管系疾患が増加することが報告されている。

セレンは世界各国で土壌の含有量がまちまちで、日本の場合は比較的作物への 含有量が多く、とくに摂取に留意する必要はないとされている。
Journal of the National Cancer Institute'04/5月号では、 セレンが前立腺がんの危険性低下に役立つという研究を掲載しているが、 それによると、ボストンの研究グループが、後に前立腺がんに罹患した患者586人 とがんの兆候が見られない577人のセレン値を比較したところ、セレン値が 最も高いグループは最も低いグループに比べ、進行性前立腺がんの危険性 が48%低いことが分かったという。

セレンは、摂り過ぎると、脱毛、吐き気、疲労感、皮膚の不快感、ニンニクに似た口臭などを引き起こすことが報告されている。


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