【 2006/2 】

穀類に魚に大豆、「心臓病大国」米国がコレステロール低下で推奨

穀類に魚、大豆に緑茶、日本人の長寿体質を作った素材として、それらの機能性が世界から注目されている。
とくに米国では、昨年1月発表の「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」(米国保健社会福祉局)で、初めて全穀物の推奨を明示した。 同ガイドラインは、米国民の健康維持のための食生活の基準を示したもので、5年ごとに改訂される。この中で、ビタミン・ミネラル、食物繊維を 豊富に含む全穀物は、心臓病や生活習慣病の予防に欠かせない素材として位置付けられた形となった。

こうした背景には、米国が抱える切実な問題がある。米国疾病対策予防センター(CDC)の調べによると、米国の心臓病患者は約6100万人、総人口の約25%を占める。 心臓発作や脳卒中などの年間の死亡者は93万人以上、全死因の40%で、死因の第1位が「心臓病」となる。加えて深刻なのが、高齢者だけではなく、若年層の間に心疾患が蔓延していることだ。

心臓病を引き起こす原因の一つに、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加がある。 こうしたコレステロールの低下に、食物繊維の豊富な全穀物が役立つ。そのため、米国では、若年層のコレステロール対策として、17,8年ほど前から 脂肪を控え、代わりに全穀物を摂食するよう薦めてきた。結果、スーパーで低脂肪牛乳が売られ、食卓では食物繊維を多く含むシリアル食品がアメリカ人の朝食の半分以上を占めるようになっていった。
実際に、食物繊維でコレステロールが低下し、心臓病のリスク軽減につながるのか---。
スウェーデンのKarolinska Instituteと米ハーバード大学研究者グループが1984年から94年までに、37歳から64歳までの健康体女性6万8千782人を対象にした研究(10年の研究期間の間に重症の心臓病発病が591件あり、うち162人が死亡)では、心臓病グループと健康体グループの食生活を比較したが、食物繊維を多く摂っていた被験者のほうが心臓病の危険性が47%低くなっていることが分かったという報告もある(Journal of the American Medical Association誌99.6月号)。


最近の報告でも、American Journal of Clinical Nutrition誌06/1月号に掲載された記事によると、University of Maryland研究者グループが、60歳から98歳の被験者535人の食習慣やライフスタイルを調査したところ、ぬかや玄米、オートミールなどの全粒粉穀類を多く摂っていたグループ(3杯分/日)は摂取の少ないグループ(1杯分未満)と比べて、高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病のリスクが半分以下になっていることが分かったという。

また、魚はω-3系脂肪酸を含み、アルツハイマーや鬱、心臓病などの予防に役立つとされているが、前述のガイドラインでも、1週間に8オンスの魚の摂食を薦めている。ちなみに、FDA(米食品医薬品局)も、ω-3系脂肪酸が心臓病予防に有用であることを認めている。

ハーバード大学が40歳から84歳までの男性医師2,0551人を対象に、ω-3系脂肪酸と心臓病との関連について研究を行ったところ、週に少なくとも1回魚を食べている者は 心臓発作などの突然死の危険性が52%低下したことが分かったという報告もある。

さらに、FDAが「心臓疾患のリスクを軽減する」という効能表示を許可しているのが、大豆。
FDAでは、1999年に、大豆プロテインの1日25g摂取はコレステロール低下をもたらし、心臓病のリスクを軽減するという健康強調表示を製品に認める判断を下している。心臓病大国である米国で、魚と大豆の摂食による心臓疾患のリスク軽減効果はもはやお墨付となっている。

ただ、最近のニュースでは、Circulation誌が、American Heart Association(米国心臓病協会)委員会が大豆プロテインに関する研究論文22件を分析したところ、19件に関して、大豆イソフラボンについてはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)値の低下に影響を及ぼさないことが分かったとも報じている。FDAは評価の見直しを求められるかも知れないとされ、今後のさらなる研究が待たれる。


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