【 2007/3 】

抗酸化ビタミン(合成)、死亡率アップに関与

3月1日付けの朝日新聞で、米医師会誌の抗酸化ビタミンを含むサプリメントに関するネガティブ報告を紹介している。それによると、デンマーク・コペンハーゲン大などのグループが、ビタミンA、C、E、ベータカロチン、セレンを含むサプリメントに関する68件、被験者23万2千600人による臨床試験を無作為に抽出し、分析したところ、A、E、ベータカロチンを摂取した人は、摂取しない人と比べ死亡率が5%高くなっていることが分ったという。試験では合成ビタミンを使用。

今回、ビタミンAを含めた抗酸化ビタミンの有用性に疑問符が投げかけられたが、ビタミンAについては1950年代頃から注目され、1970年代には米国ジョンズホプキンス大学のソマー博士らのグループが低開発国の乳幼児にビタミンAを与え、死亡率が3分の1に減少したと報告、関心が集った。

ビタミンAについての最新報告では、胃がん予防に関与するという研究報告が、American Journal of Clinical Nutrition07/2月号に掲載されている。Karolinska Institute研究者グループによるもので、スウェーデンで82,000人の成人を対象に、1997年から2005年6月まで行われた食物摂取頻度調査データを分析したところ、総ビタミンA、アルファカロチン、ベータカロチン、レチノールの摂取に関して、最も多く摂取したグループは最少グループに比べ、胃がんに罹る危険性が50%低かったことが分かったという。

ビタミンAの働きでよく知られるのが、視覚機能の改善。欠乏すると、光の変化に対応できなくなり、夜盲症や目の乾き、炎症などといった症状が出てくる。ビタミンA欠乏により視力障害に陥っている子供たちは世界で1千400万人といわれ、少なくとも35万人が失明状態にあるという。

また、免疫力の低下から、感染性疾患に罹りやすく、死亡率が高まることもいわれている。ビタミンA欠乏は70カ国以上で解決が急がれる健康問題となっており、特に発展途上国の子供たちの間で深刻化している。現在2億1千万人ほどの子供がビタミンA欠乏の危機に瀕し、毎年100万人以上が死亡しているといわれる。

ただ、ビタミンAの適正摂取量についてはこれまでに数多く論議が重ねられてきている。

1日3,000μgRE(10,000IU)以上の摂取で奇形児生誕の可能性が示唆、また肝細胞の壊死を促進するなどの有害作用があるとされ、妊婦は1日、7,500μgRE(25,000IU)以上の摂取は避けるよう専門家が勧告している。


また、ビタミンAの過剰摂取は腰部の骨折を招く危険性が高いことも報じられている。ボストンの研究グループが、34歳から77歳の閉経期後の女性7万人を調べたところ、1日2,000μg(マイクログラム)RE以上のビタミンAをサプリメントや食品から摂ったグループは、1日500μgRE摂取のグループに比べ腰部骨折の危険性が2倍になった。また、ビタミンAをサプリメントで摂っているグループは摂らないグループに比べ、腰部骨折の危険性が40%高かったと報告している。

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