【 2007/9 】

糖尿病、アルツハイマーやがんの発症リスクを高める

9月2日付けの朝日新聞によると、九州大(環境医学)の清原裕教授らの研究で、福岡県の65歳以上の住民約800人を対象に15年間追跡調査したところ、糖尿病罹患者や予備群の人々は、そうでない人々と比べ、合併症以外に、他の疾患の発症リスクが高いことが判ったという。ちなみに、アルツハイマーが4.6倍、がんが3.1倍、心筋梗塞が2.1倍、脳梗塞が1.9倍という。

まさに糖尿病は諸悪の根源ともいえそうなデータだ。糖尿病は自覚しにくく、やっかいな疾患である。高い血糖レベルは、網膜症、腎症、神経症、各種感染、狭心症、脳血管障害、皮膚や歯の病気、壊疽といった合併症を招く。

糖尿病は運動不足や低食物繊維食の摂食などが招く生活習慣病であるとされる。そこには高脂血症や高血圧、肥満といったリスクファクター(危険因子)がすでに内包され、延長線上にはメタボリック症候群がある。動脈硬化が生じ、心筋梗塞や脳梗塞の発症へと繋がる危険性が極めて高い。

運動による糖尿病改善の効果は報告されている。ハーバード大の研究チームが、40〜65才までの女性70,102人を対象とした心臓病と癌の調査データ(Nurses' Health Study )を1986年から8年間を分析したところ、1日1時間、少なくとも30分、足早に歩く運動をするとII型糖尿病のリスクが減少すると報告している(Journal of the American Medical Association誌)。

「食」による糖尿病防止策といえば、血糖レベルを低くし、インスリン分泌が少なくて済む未精製穀類の摂食が筆頭に挙げられる。日本では、主食である穀類の精白化により、血糖コントロールに関わる食物繊維、インスリンの原料となる微量元素の亜鉛やクロムなどが削がれ、糖尿病の蔓延に拍車をかけたとみられている。

ミネソタ大学の研究グループが、約36,000人の女性を6年間追跡調査したところ、調査期間中、1141人に糖尿病が発症したが、未精製穀物を多く摂取する女性は、少ない女性に比べ、糖尿病リスクが21%低かったという報告もある(American Journal of Clinical Nutrition誌)。


近年、作物の効率的大量生産を目指す栽培・採取から農薬散布が盛んに行われ、土壌から十分なミネラルが吸収できなくなった。加えて、食材を加工し、食物繊維やビタミン・ミネラルといった代謝調整に関わる貴重な成分を削ぎ取っていった。糖尿病はカロリー偏重による現代栄養学が招いた代謝異常疾患であるといっても過言ではない。

とはいえ、ミネラルの摂取には慎重を要する。微量元素のセレンは、亜鉛やクロムと同様、糖代謝の改善に関与し、糖尿病予防に役立つとみられてきたが、セレンサプリメントを長期摂取した場合、II型糖尿病の危険性を増大させるという研究報告が、Annals of Internal Medicine誌07/7月号に掲載されている。Warwick Medical School研究者グループが、600人にセレン(200マイクログラム/日)を、602人にプラセボを7.7年間与えたところ、セレングループから58人が糖尿病を発症したことが分かったという。プラセボグループは39人だった。

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