【 2004/12 】

カロチノイド、合成か天然かで議論

今月、米国関連のNEWSでは野菜のカロチノイド色素に関するものが幾つか届いている。
Journal of Nutrition最新号によると、オハイオ州立大学の研究グループが、ほうれん草やケールなど緑葉野菜に多く含まれるカロチノイド色素のルテインとゼアキサンチンが紫外線からヒトのレンズ細胞を保護する働きがあり、ビタミンEの10倍近い効力があるという。

こうしたカロチノイド色素のもつ強い抗酸化力はがんや白内障、各種疾患の予防に有用であるといわれている。しかしながら、その有用性については天然物か合成品かで議論が分かれていた。
過去に米国でベータカロチンの合成品によるがんへの有効性を検証する大規模な栄養介入試験が行われたことがある。喫煙者あるいは過去にタバコを吸っていた被験者および職場環境にアスベストがある労働者18,000人以上を対象に、被験者グループの半数に偽薬を、残り半数に合成ベータカロチン30mgとビタミンA(25000IU)を与えた。その結果、ビタミン投与グループは偽薬グループに比べ、肺がん罹患率が28%、死亡率が17%も高くなったという結果が出た。そのため、喫煙とベータカロチン(合成錠剤)との組み合わせは、逆に肺がんを促進しかねないとの結論から、試験は満了前で中止となった。

この1996年に発表されたBeta-Carotene and Retinol Efficacy Trial(CARET)研究の経過報告は、"ベータカロチンは肺がんを促進する"と日本でもマスコミ各誌が大きく取り上げ話題になった。
ちなみにCARET研究については、その後も追跡調査が行われており、Journal of the National Cancer Institute最新号がその結果を報じている。それによると、サプリメント摂取中止後も肺がん罹患の危険性は依然継続したままであることが判ったという。

シアトルの研究グループによるもので、先のベータカロチン試験の中止後も、2001年まで被験者の追跡調査を行ったところ、肺がん危険増大率は試験中は28%だったが、 サプリメント摂取中止後も12%であったという。また、死亡率は試験中は17%であったが、中止後は8%であったという。それぞれはそれほど目立つ数字ではないものの、とくに女性に限っては、サプリメントグループの死亡危険増大率は35〜40%と高いものであったという。

こうした経緯から、合成ベータカロチンの作用に懐疑的な議論がなされたが、天然の食材から摂るベータカロチンについては、肺がんを促進する危険性はないということも明らかになっている。
Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention'04/1月号に掲載された記事によると、およそ399,765人を対象に、7〜16年間の調査で3,155件の肺がんが新たに診断されたが、 分析の結果、天然の食材からのベータカロチン摂取は肺がんの危険性となんら関連性がなく、またルテイン、ゼアキサンチン、リコペンなどのカロチノイドについても 食品からの摂取においては、危険性と関連がないことが判ったという。


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