【 2008/2 】

アルツハイマー病で新たな発症原因、「食」管理で対策

2月27日付けの朝日新聞で、アルツハイマー病に新タイプの発症事例が見つかったことを報じている。アルツハイマー病はベータアミロイド蛋白が蓄積し、老人斑というシミができ、神経細胞が死滅することが原因であるという説が有力視されていた。これに対し、富山貴美准教授(大阪市立大)らの研究で、老人斑ができる前に、ベータアミロイドが神経細胞に関与し発症することが動物実験で判明。老人斑が出来なくても発病するケースがあるという。

超高齢化社会を迎え、アルツハイマー病対策は緊急課題となっている。2015年には団塊の世代が65歳以上になる。3人に1人が65歳以上になり、アルツハイマー、認知症は推定で250万人に達するとみられている。

アルツハイマーの発症については、酸化ストレスやフリーラジカルによる脳機能の損傷、アルミ蓄積なども原因として挙がっている。日頃の対策としては、喫煙を控え、野菜や果物、魚、海草を多く摂ることが薦められている。

フリーラジカルによる脳損傷の抑制に抗酸化成分を多く含む野菜・果物が有用で、アルツハイマー病予防に役立つことが報告されている。 The American Journal of Medicine誌06/9月号によると、Vanderbilt University Medical Center研究者グループが、認知症の徴候がないシアトル在住の日系アメリカ人1,836人(平均年齢72歳)を対象に、果物・野菜ジュースの摂取状況を調べ、認知力テストを2年毎、計10年行ったところ、ジュースを週に3回以上飲むグループは1回のグループに比べ、アルツハイマー病発症のリスクが76%低いことが分かったという。

また、魚に含まれるDHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸がアルツハイマー疾患の予防に有用であることが報告されている。最近の、Journal of Neuroscience誌に、DHAが誘導するタンパク質LR11合成がベータアミロイドの蓄積を阻止するという記事が掲載されている。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校研究者グループによると、マウス、ラット、ヒトの細胞を使って、DHAとタンパク質LR11、ベータアミロイド蓄積との関連性を調べたところ、DHAの少量投与でも、ラットのニューロンのタンパク質LR11値が増大したという。

アルミについてはどうか。地球上、特に地殻中に豊富にあるミネラルのケイ素が脳内のアルミ蓄積に関与していることが報告されている。ケイ素は人間の食生活に欠かせない栄養素で、とくにビールやコーヒー、水、穀類や野菜などに多く含まれる。摂取されたケイ素の50%は尿とともに排出される。


Alzheimer's Foundation of Californiaが支援して行われた研究では、人間の70歳に相当するラットにケイ素の欠乏したエサを毎日与えたところ、脳にアルミニウムの蓄積が起こったが、その後ケイ素を豊富に与えたところアルミニウムの濃度が目に見えて下がったという。

最近も、Food and Chemical Toxicology誌07/12月号が、ビールに含まれるケイ素がアルツハイマー病予防に役立つという研究を掲載している。 University of Alcala研究者グループがマウスを、1)飲み水に硝酸アルミニウム、2) 飲み水に硝酸アルミニウム+市販のビール(アルコール分5.5%)2.5ml/週、3) 飲み水に硝酸アルミニウム+ケイ酸溶液2.5ml/週、4) 飲み水にアルミニウムを含まない、4グループに分けた。
3ヵ月後、ビール、ケイ酸溶液のどちらからでもケイ素を摂取したグループは、血中のアルミニウム値が著しく低下し、体外へのアルミニウム排泄量が多くなったことが分かったという。


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